ヴァイオリン ~ 雑音ラプソディ ~

50代後半になって突然始めたヴァイオリン。
ヴァイオリンやピアノなど
音楽に関することを綴っていきます。

11/29 読響 - ネトピルとの初共演(No.2) - ジャン⁼ギアン・ケラスのリゲティ

2019-12-04 | クラシック音楽
11/29の読響定期演奏会の続きです。

1曲目のモーツァルトの演奏が終わり、指揮者とオケはみなステージから退出。
誰もいないステージに、チェリスト用の台と椅子が運ばれ、エンドピンストッパーと、台の前方の縁に譜面台が置かれました。
譜面台があんな下の方で遠くて見えるのか?とか、楽譜をめくれるのか?とか、余計なことを考えながら見ていました。
準備ができると間もなく、演奏者が現れます。
カナダ・モントリオール出身の世界的チェリスト、ジャン=ギアン・ケラス(Jean=Guihen Queyras)。スリムで若い青年、に見えますが、1967年生まれなので、52歳ですね。
何年か前に、彼の演奏を聴いた記憶はありますが、何の曲だったのか全然覚えていません。


1) リゲティの無伴奏チェロ・ソナタ(1948、1953)
アダージョで重音のピチカートで始まり、歌うような優しいメロディーの1楽章に続くが、一転してスピード感があり、情熱的で技巧的な2楽章。

リゲティですが、ジェルジ・リゲティ(Gyorgy Ligeti)とかリゲティ・ジェルジュ・シャーンドルともいうらしいですが、1923~2006年を生きた20世紀を代表する作曲家です。
映画好きの方なら、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」(1968年公開)や、スティーブン・キング原作のホラー映画「シャイニング」(1980年)で、リゲティの曲が使われているというのはご存知かもしれないですが、こわーい音楽の作曲家という印象が強いようです。😱 
怖く聴こえるのであって、怖い音楽をわざわざ作っているのではないと思いますが、独特な音楽表現が、結果、恐怖を煽ることになっているわけです。 
無伴奏チェロソナタは、全く怖くありませんでした。 

リゲティはユダヤ系ハンガリー人。想像がつくと思いますが、第二次世界大戦中、ハンガリー人強制労働部隊に送られるも生き延び、一方、家族はユダヤ人強制収容所に送られ殺害されました。戦後、音楽を学ぶも、社会主義体制下で外国の音楽を自由に聴いたり、創作をすることも許されなかったため、1956年にハンガリー動乱を機にオーストリアへ亡命した、ということです。
そのような激動の時代を生きてきたリゲティの音楽ですが、「2001年宇宙の旅」に使われた「レクイエム」を聴くとわかりますが、1960年代の音楽にしては、前衛的、宇宙的、電子工学的で、時代を超越しています。

シンセサイザーの原型が出現したのが1940~50年代で、1960年代後半にはシンセサイザー音楽がレコード化されており、富田勲氏がシンセサイザーに遭遇したのも同時期でしたから、オーケストラ音楽に対してもコンピュータ音楽の需要が高まった時代に、リゲティも影響を受けたのかもしれません。
因みに、リゲティは、「2001年宇宙の旅」のために、宇宙を連想する曲を作ったのではなく、リゲティが作ったその曲を、キューブリック監督が勝手に映画に使用した、という話です。リゲティはこれに憤慨しましたが、後に「シャイニング」のための作曲依頼を受けて、和解したという逸話があります。

2) リゲティのチェロ協奏曲(1966)
第一楽章: ケラスのチェロの独奏で、極めて小さい、蚊の音よりも小さい、みみずの鳴き声くらいか、PPPPPPP (ピアニッシシシシシシモ)のミ音での単調な連続音から始まり、オケの弦楽器が同じミ音を奏でながらボリュームを上げて行く。次第に音高の異なる音が重なり、徐々に徐々に音色を変化させながら拡がっていく。最後にケラスのチェロが高い音色を奏で、続いてコントラバスの長い響きが残る。
トーンクラスター(音群)といって、隣り合った音同士をいくつも重ねることで音の塊を作って独特の圧力を演出する演奏方法だそうで、リゲティはこの奏法の先駆者と言われているようです。

第二楽章:フルートとクラリネットの重音に始まり、木管・金管が音高を変え補強していく間、ケラスのチェロが大きく響く。続いて他の弦楽器や管楽器が音を変化させながらボリュームを上げて行きます。 時々、オーストラリアの原住民アボリジニの音楽のように思えたりもしました。音が複雑になっていくので、次第に何が何だか分からなくなります。
最後は、ケラスの独奏で、左手の指を複雑に動かしながら指板を上下させ、徐々に徐々に弓の動きを弱くし、最終的に左の指の運び音だけとなり、音が掻き消えていきます。
不思議な曲です。曲というより、管弦楽による「音の芸術」、という印象です。ケラスの技術力と表現力もさることながら、オケも高度な技術が要求されるものですが、さすが読響の演奏は見事でした!
生演奏ならではの醍醐味ですね。 動画では、曲を聴くことはできますが、音の強弱が調整できてしまうので、実際の音量はわかりません。

この曲の後ですが、ケラスによるアンコールがありました。
バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番より「サラバンド」。

次回は、コンサートの最後の曲、スークのアスラエル交響曲についてブログします。



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