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今日の筆洗

2021年11月05日 | Weblog
「ワンコイン・ベア」という言葉を見たのは、二十年ほど前の春闘であった。デフレ不況下で、「わずか五百円玉一枚分」に終わった賃上げの苦みを伝えた表現である▼今もよく聞く「ワンコイン」は和製英語という。硬貨一枚の価値は国や通貨で違っているから、英語圏にあったにせよ、輸出入が困難な種類の言葉であろう。日本の五百円玉は世界有数の高額硬貨らしい。ベアでは少額の例えだったが、昼食どきには一枚の重みはなかなかのものだ▼新たな五百円硬貨の発行が今月から始まった。偽造防止のため、複数の金属が組み合わされている。画像で見ると、二色の輝きは、ユーロなどの硬貨を思わせて新しく、高級な雰囲気もありそうだ。お釣りにはまだ入っていないが、手にするときが少々楽しみである▼岩倉具視の五百円札の後継として、銀色の初代五百円硬貨が登場したのが一九八二年だった。ハンバーガーや牛丼などが、この一枚でまかなえるのは当時も今も同じである。外食などの分野で「五百円玉一枚分」は大きくは変わっていないらしい▼変わらぬ重みはありがたいのかもしれないが、物価だけでなくベアも低空飛行だったわが国である。長く続く日本独特のデフレ傾向を物語り、経済が細っていることも一枚の重みは手のひらに伝えよう▼見た目だけでなく、新たな重みを持つときを待ちたいワンコインだ。