「人流」「路上飲み」「変異株」「黙食」。今年話題となった言葉を選ぶ新語・流行語大賞の候補が発表された。早いもので、今年もそんな時期になったか。肌寒いはずである▼候補となった三十の言葉をながめるとやはり新型コロナ関連のワードが目立っている。最近の新規感染者数は一時に比べて激減しており、胸をなでおろす一方で「変異株」などの言葉を見れば、感染拡大が続いていたころの緊張と不安がよみがえってくる▼大賞のトップテンは十二月一日に発表されるそうだが、一足早く、発表された英国のオックスフォード英語辞典が選んだ今年の言葉もまた、コロナ関連だった。「VAX」。わずか三文字だが、日本人には見慣れぬ言葉だろう▼VACCINE(ワクチン)のことだそうだ。「ワクチンを打つ」という意味の動詞としても使える。英語圏の新聞の見出しでも、最近はVACCINEよりVAXの方がよく使われる印象がある▼今年になってメディアやSNSなどによく登場するようになり、使用頻度は昨年の約七十倍だそうだ。ワクチンの是非や効果が口の端にのぼりやすい一年にあって、短く、言いやすい言葉が受けたのだろう▼英国をはじめ世界には新規感染者が再び増加している国がある。VAXの効果が薄れてきているという見方もある。くやしいことにその言葉の流行はなお続きそうである。