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今日の筆洗

2021年11月08日 | Weblog
江戸時代の看板にはシャレや謎かけめいたものが多かった。質屋さんならば、将棋の歩の駒を掲げたもの。店の中に入れば金となるということか。湯屋ならば弓矢の看板。「弓射る」で「湯入る」とはかなり苦しい▼今でもよく知られているのは焼きイモ屋さんの「十三里」と書いた看板だろう。「九里四里うまい十三里」。同じ秋の味覚のクリ(九里)より(四里)もうまいので足して十三里。江戸からサツマイモの名産地、埼玉県の川越まで、だいたい十三里(五十二キロ)だったのでそれにもひっかけているのだろう▼その味が恋しい季節だが、十三里好きには心配な話である。「サツマイモ基腐病」という病気が全国的に拡大しているそうだ。「モトグサレ」とは聞くだにおそろしい▼糸状菌というカビの一種が取りつき、イモそのものを腐敗させてしまうらしい。二〇一八年十一月に沖縄で初めて確認され、以降、国内最大産地の鹿児島などに拡大。今年は生産量二位の茨城や埼玉、岐阜、東京などでも見つかっている▼農家には大打撃で生産量の減少による価格上昇も心配である。焼きイモに限らずお菓子や焼酎にも使われるなど用途の多いサツマイモである▼やせた土地でも栽培でき、渡来以来、江戸期の飢饉(ききん)や戦争中の食糧難など日本の危機を幾度も救ってくれた。感染を阻止し、恩あるイモを今度はこちらが救わねば。