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今日の筆洗

2022年03月11日 | Weblog

岩手が生んだ宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」はよく知られる。いじめられっ子の少年ジョバンニが親友と、銀河を列車で旅する物語▼船の沈没事故に遭って救命ボートにも乗れず「神さまのとこへ行く」という青年らも列車に乗り、途中で降りる。他人を押しのけてボートに乗るより天に召される方が幸せという青年ら。死が暗示される銀河で、ジョバンニは幸せとは何かと悩む▼岩手などで多くの命を奪った東日本大震災から十一年。児童ら八十四人が亡くなった宮城県石巻市の旧大川小学校では、校庭の隅のコンクリート壁に銀河鉄道の夜など賢治の世界が描かれている。先の報道で知った▼震災の約九年前に、在校生が銀河を走る列車などをかいた。壁画の一部の損傷が学校を襲った津波の力を示す。これから災害に遭う人が命を失わないよう、悲しみと教訓を伝える校舎は壁画とともに残された。娘を亡くした父親は「子どもたちが星になって見守ってくれている。ここは命を考える場所」と語る▼物語では、ジョバンニの親友も銀河で姿を消す。一人きりで現実の町に戻される前、ジョバンニは天の川の孔(あな)を見て誓う。「僕もうあんな大きな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く」▼幸せとは勇気を持って人のために生きること、だろうか。それはきっと、星になった人のためでもいい。