最悪の一日。奥歯にかぶせてあった金属が、チョコレートとともに外れた。
歯医者に予約。午前中に行く。かぶせ直してもらった。不吉な予感。
それでも行くカラオケ喫茶。常連が顔を連ねる。いつものカラオケ喫茶に
なるはずだった。思わぬ事態。なんとお嬢が顔を出した。しかもよそよそしい。
顔見知りから、他人に転落。つらい歌を聞く。その場所に一緒にいるだけで
息が詰まる。いやむしろ他人がイイかも。それ以上の忌み嫌われ方。なんで?
自問自答の翁。なるほど。男ができたのか。悔しい気持ちに満たされる。
コレから、お嬢が来るたびにこの気持ちを味わうのか。くわえてママから
注意される。帰り道は混んでいて、泣きっ面に蜂。このダメージはなかなか
癒えないだろう。生まれて初めて。こんなに人を好きになったことがない。
何もなかったが、恋は残った。暫らく泣いて過ごさねば。どうしたらいい。
かといって、代わりの婆に恋するわけにいかない。忘れる。つぎの女を探す。
代替。カバー。どうしておぼろ月、こおり健太。はカバーしかないのか。
やっぱり本物の歌がいい。お嬢のカバーは誰もできない。お嬢のばかー。
地面を掘って叫んでも、響く木霊は、おぼろ月。鏡にお嬢はうつらない。
あーあ俺はなんなんだ。いい暇つぶしになったろ。また始めればいい。
何処まで行っても、詰めの悪い翁。お前のカバーはできない。神に見放された
翁。かみさんの機嫌を取る。