五歳の孫娘ーー
五歳あたりまでが
天使の翼がまだ取れていないー
老婆の私にそっと言うのです
「ばあちゃとずっと一緒にいたい」
この言葉
私には百万円の、一億円のダイアモンドより
うれしい。
心が温められていく最高の刹那。
ですが次の瞬間に
老婆の理性がつぶやきます
一緒にいられるといいって?
うれしいけれどそれは
この家族の悲劇の始まり
私自身の終わり。
息子の不幸の始まり。
「一緒にいる」って言葉は
お花見と同じで
桜の時期にひととき共に
桜の下で宴会をするのと
同義であるのですよ。
だから孫娘よ
お前のその言葉も
老婆の乏しい髪に飾る
桜の花びらといたしましょう。