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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

寺小路の庚申塔

2020-12-08 23:18:34 | 地域から学ぶ

 

 辰野町下辰野区寺小路の三峯様の祭りを訪れたところだが、「寺小路」というようにお寺の小路に祀られた三峯様である。その寺とは法雲寺であって、三峯様はお寺への坂道、いわゆる参道に祀られている。隣に延宝8年の庚申が祀られていることについて触れたが、実はもっと古い庚申さんが法雲寺の境内に祀られている。現在は2基並べられているが、もともとは別のところにあったものだろう。1基は三面六臂の像が彫られたもので、猿や鶏はないが、足の下に鬼らしきものを踏みつけている。頭上光背に「奉造立庚申」の文字が見え、「延宝三卯天十月吉日」とある。三峯様の隣に祀られているものより5年古い。石質のせいもあるのだろう、像が彫られたものであるが、風化は著しくなく、顔の表情もよくわかる。

 さらに、その隣に祭られているものは文字碑であり、「明暦二丙申年十月吉日」と銘文がある。明暦2年は1656年であり、前例よりさらに19年古いもの。ただしこの碑には「武州豊嶋」という文字が見え、『辰野町の石造文化財』(辰野町教育委員会 平成29年)によると、「当地のものではなく東京で空襲で焼け残ったものと伝えられる」と記されている。三峯様の祭りで話をうかがった長老のお一人も、よそから持ってこられたものと言われていたので、伝承はよく知られたもののようだ。

 ちなみに長野県 上伊那誌 民俗篇上』(上伊那誌刊行会 昭和55年)には、庚申供養塔について、「もっとも古い庚申供養塔は笠原(伊那市美篶)に寛文十二年(1672)のものがあり、御堂垣外(高遠町藤沢)には延宝八年(1680)のものがある」と延べており、寺小路にある庚申塔は郡内でも最古の部類であることがわかる。


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