月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

兄之愛車

2012年09月22日 19時18分28秒 | 仏々相念(住職日記)

ポンコツなんでね・・・

 

ご縁をいただいた間の休み。

故人であるお兄さんの車の話になりました。

現在、高松におられる妹さんが乗っておられるとか・・・

とは言っても、車検がまだあるのでそれまで工場内で乗っている程度だそうだ。

 

この度、帰省されるのに自分の車が車検になってしまった為にお兄さんの車で帰ってきたとか・・・

「もう怖くてね~。ヒュ~ヒュ~音がするし只管左車線で帰って来たんです。皆気持ち良さそうに追い抜いて行きました。」

「それは慣れない車でしんどかったですね。」

「そうなんです。もうポンコツだから・・・」

 

以前にもお父さんの車を娘さんが乗っておられることを書かせていただきましたが、そのことに重ね合わせながら聞かせていただいたことです。

ただ、一方は新車で一方は古い車。

お兄さんは病院に乗って行く程度で遠乗りされてないそうです。

がしかし、身体がしんどい時に乗るのです・・・

だから、車庫に入れるにもかなり手こずっておられたとか・・・

「どこかで擦ったんでしょうね、左側に酷い擦り傷があるんです。それを丁寧に色を塗ればいいのに違う色をバ~って塗ってしまって・・・」

そんな車・・・

 

「でも、これに乗ると兄が守ってくれているようで・・・」

やっぱりそれなりに思うところがあるのですね。

しんどい時、辛い時、楽しい時・・・

その時その時に兄さんが握りしめていたハンドルからはやっぱり感じるものがあるのでしょう。

同じハンドルを握り何かを思うのでしょう。

しんどかった・・・?

辛かった・・・?

楽しかった・・・?

その時その時の自分の感情を重ねつつ・・・

「お兄さん・・・」そう呟く時、また、生き抜ける力をいただける。

「お兄さん、あなたもガンバったんですね・・・」そう出会うから・・・

「よし!私も・・・」って立ち上がれる。

 

傍目から見るとポンコツで何の価値もない車かもしれません。

でも、その家族においてはお金ではない価値があるのです。

鑑定士には分からない温かい価値が・・・

 

ウチにもカタカタコトコトの古い車があります。

ハンドルも右斜め上はツルツルになっています。

コイツと坊守が握りしめてきた証。

嬉しい時も、悲しい時も、辛い時も、腹が立つ時も・・・

時にはギュ~・・・

時にはフワ~って握ってきたハンドル。

 

先日、関西に帰った娘が休みの間乗ってくれていました。

アッチコッチに行くのにも「ニコニコ貸してね~」って気持ち良く(?)乗ってくれていました。

子どもたちにとってもどの車よりも思い入れがある車です。

いろんな思い出が詰まっているニコニコに今自らが運転している。

ツルツルになったハンドルを握りしめながら思うところもあるのでしょうか・・・

 

傍目に見ればポンコツなんでしょうが、何ものにも替えられない想いが詰まっている車。

決して「受け継いでくれ!」っていうレベルではありません。

いつどうなるか分からないような車なんですが、ちょっとの間でも何か思ってくれたら嬉しいよな~・・・

後一年もすれば息子も乗ってくれるかもしれません。

それまで何とか維持しなければって思ったりもするのですが・・・

家族で語ることができれば最高ですよね・・・

「親父、この車に乗りながらどんなこと思ってたんだろう・・・」

なんて思ってくれたら嬉しいよな~・・・

 

今日もカタカタコトコト願生って走ってくれました!

198500・・・

まだまだコイツを支えて走ってくれます。

カタカタコトコトの音が「願生れ!願生れ!」の声になって!

一緒に走ってくれる。

 

今日の法要のご講師のお話の中に、戦国の武将の性格を表した「ホトトギス」のうた、

そう「鳴かぬなら・・・」のうたです。

その間に皆さんならどんな言葉を入れますか?って問われました。

なるほど~ってコイツなりに考えました。

 「鳴かぬなら 一緒に鳴こう ホトトギス」って思い浮かんだコイツでした。

皆さんならどんな言葉が浮びますか・・・

 

「一緒に」が好きなコイツです。


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