Tennis - "Origins" (eTown webisode #362)
Cocco 「ジュゴンの見える丘」Music Video
坂本美雨 - Precious (Official Music Video)
Billy Joel - Innocent Man (from A Matter of Trust - The Bridge to Russia)
(ちんちくりんNo,43)
受話器を下ろした後僕は、「あ、そうだ」とまるで今思いついたかのように、再び受話器を手にした。姉に連絡しようと思ったからだ。勤務先である役所の電話番号はそらで覚えていたが、家族が職場に電話をかけるのは迷惑だろうとかけたことがなかった。それでもそうするのは、かほるのこと。僕は家に着いたらすぐにでも「自分の決意」を親に宣言しようと思っていたので、かほると一緒に実家に帰ったりなんかしたら大変だ。話がかほるのこと一辺倒になってしまう。そうなると僕は話す切っ掛けをなくし、下手すればそのままなにもせず終わってしまう可能性がある。だから、かほるを姉に託すことにした。一つ先の駅前にある喫茶店で待ち合わせをしてもらって、そこで話でもしててくれればいい。頃合いを見計らって店を出、二人して帰って来たときには僕と母との話は終わっているだろう。しかしもしかしたら最悪な状況になっているかもしれない。とてもかほるを紹介する状況でないとなれば、国道近くのファミレスにでも行って、一晩粘って夜を明かせばいいか、と僕はそこまで考えていた。
受話器の向こうにいる姉は、かほるのことは当然驚いたが、僕の計画については快く応じてくれた。僕らは後からきた各駅停車の列車に乗って、一つ先の駅で降りた。喫茶店の前で、僕は新宿の売店で買った漫画雑誌を姉との待ち合わせの目印にせよと、かほるに手渡したが、彼女はなんだか浮かない顔をしている。おお、心配してくれているのかと少なからず感動し、「大丈夫さ」と声をかけたら「違うの」と僕を見る。
「違うのよ。海人は小説家になりたいんでしょ?」
「ああ、まあ」
「だったら、海人とお母さんが対決する場面は今まさに(小説家神海人)が生まれる瞬間・・・」
「はあ?」
「小説家神海人の誕生の瞬間!・・・歴史の証言者になりたかったなあ」
本当にこの娘はおかしい。どこからどう考えていけばそういう風なことに辿りつくのだろうか。僕は拍子抜けしながらも、「姉貴すぐ来るそうだから」と言い置き、かほるを後にして実家に向かった。すぐ先の坂を下るとき、―あれ、俺はいつ小説家になるとかほるに?ふとそんなことに気づいたがどうでもいい。腕時計を見た。家まで十五分もかからない。
Cocco 「ジュゴンの見える丘」Music Video
坂本美雨 - Precious (Official Music Video)
Billy Joel - Innocent Man (from A Matter of Trust - The Bridge to Russia)
(ちんちくりんNo,43)
受話器を下ろした後僕は、「あ、そうだ」とまるで今思いついたかのように、再び受話器を手にした。姉に連絡しようと思ったからだ。勤務先である役所の電話番号はそらで覚えていたが、家族が職場に電話をかけるのは迷惑だろうとかけたことがなかった。それでもそうするのは、かほるのこと。僕は家に着いたらすぐにでも「自分の決意」を親に宣言しようと思っていたので、かほると一緒に実家に帰ったりなんかしたら大変だ。話がかほるのこと一辺倒になってしまう。そうなると僕は話す切っ掛けをなくし、下手すればそのままなにもせず終わってしまう可能性がある。だから、かほるを姉に託すことにした。一つ先の駅前にある喫茶店で待ち合わせをしてもらって、そこで話でもしててくれればいい。頃合いを見計らって店を出、二人して帰って来たときには僕と母との話は終わっているだろう。しかしもしかしたら最悪な状況になっているかもしれない。とてもかほるを紹介する状況でないとなれば、国道近くのファミレスにでも行って、一晩粘って夜を明かせばいいか、と僕はそこまで考えていた。
受話器の向こうにいる姉は、かほるのことは当然驚いたが、僕の計画については快く応じてくれた。僕らは後からきた各駅停車の列車に乗って、一つ先の駅で降りた。喫茶店の前で、僕は新宿の売店で買った漫画雑誌を姉との待ち合わせの目印にせよと、かほるに手渡したが、彼女はなんだか浮かない顔をしている。おお、心配してくれているのかと少なからず感動し、「大丈夫さ」と声をかけたら「違うの」と僕を見る。
「違うのよ。海人は小説家になりたいんでしょ?」
「ああ、まあ」
「だったら、海人とお母さんが対決する場面は今まさに(小説家神海人)が生まれる瞬間・・・」
「はあ?」
「小説家神海人の誕生の瞬間!・・・歴史の証言者になりたかったなあ」
本当にこの娘はおかしい。どこからどう考えていけばそういう風なことに辿りつくのだろうか。僕は拍子抜けしながらも、「姉貴すぐ来るそうだから」と言い置き、かほるを後にして実家に向かった。すぐ先の坂を下るとき、―あれ、俺はいつ小説家になるとかほるに?ふとそんなことに気づいたがどうでもいい。腕時計を見た。家まで十五分もかからない。
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