uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣 ~時給1800円~ 第2話 第3話

2021-10-02 07:04:40 | 日記
         第2話



 私 竹藪平助は、首相官邸への通勤にママチャリを使う。
 官邸は本来首相の住居を兼ねる筈だが、
そんなところに住んでいては国民の声が届かず、
国民生活の実態が見えない。
 更に幽霊が出るとの噂があり、
ネット暴動政変以降、
歴代の首相で官邸や敷地内の
それに隣接する私邸に住んだ者はいない。

 私もその例にもれず、
自分の私邸から通っている。


 私邸?

 
 一階がラーメン屋『蓬莱軒』の店舗で、
その2階の6畳一間を私邸と呼ぶなら
確かにそうだが・・・。
 一応そこは『むつみ荘』という名がある。

 その住人の私は官邸までの道のりを
3年前近隣のホームセンターで買った
12800円の愛車(ママチャリ)
マッハ15の『流星号』で通う。

 本当は首相にはVIP送迎という特典は有るのだが、
就任初日から3日で利用を止めた。

 何故ならその送迎車が実に狭い。

 政変以前の首相送迎車と云ったら
センチェリーだのクラウンだのベンツだのといった
超高級車のはずだったが、
政変以降、軽自動車に変更されたのだ。

 ホン〇N-BOXやスズ〇スペーシア、
ダイハ〇タントのようなツーボックスミニバンなどに。

 しかもその後部座席に座るならまだしも、
前席をベンチシートに改造、
右から運転手、VIP、そして助手席にSPが押し込められる。

 いくら何でも軽の前席に大人3人も座ったら狭いでしょ?

 何で前席に?
実は後ろの席は要人警護対策で
モーターを特別にパワーアップした
ハイブリットエンジンに載せ替え、
しかも万が一の危険回避の逃走用に
1分間持続して急加速できる
ニトロジェットエンジンまでも搭載している。

 だから後部座席に人は乗れない。

 そんなクレージーカー、誰が造った?

どうやらこの国にはまだまだ改善点が多すぎるようだ。

 そんな訳で私の前に軽の警護車両が3台、
その後に私が「♪マッハ15のスピードだぁ♫」
と歌いながら『流星号』で走り、
後ろにまた3台の警護車両が続く。

※印 昔のアニメ『スーパージェッター』で検索してみてください。
『スーパージェッター』主題歌フルバージョン 1965~1966




 その風景は
昔のチンドン屋さんの練り歩きのような、
何処となくユーモラスな空気を漂わしていると思う。

 

 そんな訳で私が首相官邸に着いた頃には、
汗だくでヘロヘロになっている。


 今朝は官邸に出勤前、楓(以降、カエデと呼ぶ)
の奴にキャバクラの事でやり込められているので、
戦々恐々とした面持ちで官邸のドアを開けた。
 そこに待ち受けていたのは
首相専属教育係の板倉だった。

 (あぁ、やはりキャバクラの事、バレてる。)
そう思った私は観念する。


 でも板倉の反応は意外だった。
「キャバクラ?
行きましたか・・・。
 でもそれは貴方の問題です。
 貴方は確かにこの国の元首である内閣総理大臣であり、
公人として規範となるべき人です。

 もちろん政変以前の政治家と云ったら
職業としての政治屋稼業でしたので
人心と権力掌握のため、
せめて表向きは聖人君子を装う必要がありましたが、
今のあなた方公募世代は、
あくまでも一般人からの選出です。
 一般人がキャバクラに行った事が
ニュースになったり
スキャンダルになることはないでしょう?

 だから一年だけ首相になったくらいの人が、
世間の批判に晒される必要はないのです。


 でも・・・・・

内閣総理大臣はあくまで天下の内閣総理大臣。

 自分の推進する政策を貫徹したいと思うなら、
もっと襟を正した生活に徹すべきです。

 キャバクラ通いやパチンコ、
ギャンブル狂いの人がもし首相なら、
いったい誰がその人について行くでしょう?
 確かにその為政者の生活態度と政治は別物です。

 でも政治は一人ではできません。
政治とは力です。
その力とは共感の集合体です。
お金ではありません。
 そしてその共感の無い所に共力(協力)は生まれません。
 貴方が任期の間、任務を滞りなく遂行したいと思うなら
議会や省庁や国民の賛同が必要なのです。
 いくらあなたがその辺の一般人だったとしても、
今はこの国の責任者です。

 この一年間、
誰に対しても恥ずかしくない仕事がしたいと思うなら、
技術面では私たちサポート陣が全力で支えます。
 でも人格面は自己責任でお願いします。


 言葉が無かった。

 そうだな・・・。

 私は心から反省した。


 キャバクラは止めて
今夜からは大衆居酒屋とカラオケスナックにしよう。
その辺は止める気が全くない竹藪平助であった。






       第3話



 ほろ酔い気分でむつみ荘に戻ると、
部屋の窓に明かりが見える。

 古びた薄っぺらいドアを開けると
そこには案の定、カエデが居た。


「何でカエデが此処に居るんだよぉ?
お前に鍵を渡した覚えはないぞ。」

「今日の私邸の留守の当番は、
角刈りの杉本だったでしょ?
だから私の魅力をフルに使って部屋に入れて貰ったの。
彼には玄関の外で警護するように頼んでね。」
「魅力をフルにね・・・。
どんな魅力だか。
そんな事よりこんな夜遅く、何の用だ?」
「だって今日の昼にあなたの教育係の板倉さんから
電話があったの。
 私にあなたのお目付け役になって欲しいんだって。
 しかも時給は1500円。
チョットは良い小遣い稼ぎじゃない?
 だから面倒だけど、渋々引き受けた訳。
(本当はカエデ自ら板倉に売り込んだのだが、
それは内緒。)
今夜はその事を伝えておきたかったの。
分かった?
お休み。」
「え?
もう帰っちゃうの?
お休みのキスは?」
「何であなたにキスをしなくちゃならない訳?」
「だってお目付け役だろ?」
「お目付け役が何故キスをするの?

馬鹿!!」


 「だから馬鹿って言うな!」

「あ、それから、
そう云う事だから、
このボロアパートの部屋の鍵、明日の朝、置いてってね。」
「そういう事ってなんだよ?
ボロアパートで悪かったな!
でもお前にこの部屋の鍵を渡したら
もう悪い事できないじゃん。
勘のいいお前の事だから、
隠れて何をやっても、総てお見通しになっちゃうし。
 だから嫌だね!」
「この期に及んでまだ悪い事を企んでいるの?
いい加減観念しなさい。
内閣総理大臣なんでしょ?
この、『猿間竹男』が!!」

「『猿間竹男』?何じゃそりゃ?」
「押し入れの中に、
洗濯していないパンツが山になっていたじゃない?
その中からキノコが生えていたよ。
だから「さるまたけお」=『猿間竹男』よ。」
「パンツからキノコぉ?
嘘つけ!ボクのパンツからキノコが生えるか!」
「今日は洗濯機3回も回してやったんだからね。
有難いと思いなさい。この不潔なキノコ男!」

私は思わず押し入れを開けた。
山のように無造作に積まれていたパンツが
洗濯され、綺麗に畳まれている。

 「私、帰るから。
明日は今夜みたいに酔っぱらってないで
真っ直ぐ帰って来るんだぞ!
 明日の晩御飯はカレーだからね。」
そう言ってカエデは帰っていった。


 

 首相の一日は矢の如く早い。

 昔のような不毛な政争はないが、
実務でやらねばならない事は山ほどある。

 そもそも前回のプロローグで、
今はネットによる直接民主制と云ったが、
何故議会や内閣が存在する?

 公設ネットアンケートが国権の最高機関なら
議会での議論に何の意味がある?

 この公設ネットアンケート。
誰でもが参加できるが、誰でもが参加できるわけではない。


何言ってる?



ネットの世界はネット民の衆愚に満ちている。

※ 衆愚? 衆愚とは一般大衆に迎合するための愚かな行為。
  =衆愚政治。
  古代ギリシャが衰退したのも
  古代ローマが共和制から帝政に取って代わられたのも、
  衆愚政治が蔓延ったせい。



でもだからこの国の政治は衆愚に堕ちてはいけない。

 故に国民を堕とさないためにも
徹底した再教育が必要になるのだ。

 その方法。

 それは一定年齢に達した成人は、
月一回、10分間のネット「政治の仕組み講座」や
「法の精神講座」「社会の良識講座」を
受講する事が義務化された。


(ウヮ!堅苦しそうで、難しそうで、退屈しそう。)
(その内容は小5程度のレベルだが)

 だからと云ってそれを怠ると、テレビ、ラジオ、
講座以外の全てのネットチャンネルが遮断されてしまう。
 でも例え渋々でも受講すると
全てのメディアソースが復活。
 更にその講座を受講した者だけが
公設ネットアンケートに参加できるのだ。

 しかも受講の最後に小テストがあり、
5問中3問以上正解すると、
公設ネットアンケートのコメント欄に
自分の要求を主張する発言権が与えられる。

 一回の講座参加で
一回の公設ネットアンケートへの投票権。
更に正解者に発言権。
 それが国政を支えているのだ。

 その結果、この国から一般財政と特別財政の
二重予算構造が廃止された。
不透明で不正の温床の仕組みが
ネットアンケートによって解体されたのだ。

 あれだけ悪どかった財務省の官僚たちも
その多くがスーパーマーケットの
レジのおばちゃん達にとって変わられている。
 そのおばちゃん達も
徹底したモラル教育とマニュアルに管理され、
更に一年ごとの交代だから、
不正の温床が育ちにくい。

 そういった全ての仕組みを
公設ネットアンケートが構築したのだ。

 思わぬ副産物として、
一年政府の要職を経験した者たちは、
下野した後もその経験が体に沁みつき、
有力なブレーンとなった。
 そんな者たちのコメントが世論を支え
有意義な政策が提言された。

 但し、時々VIP送迎車のような間の抜けたポカもするが・・・。



 議会も省庁も素人任せ。
でもいざという時のために
百戦錬磨のサポート陣が組織され、
あらかじめ控えており、
致命的な失敗を未然に防ぐ仕組みも組み込まれている。



 そんな国政組織を中枢から目の当たりにし、
私はまだまだ手探り状態の国政に
真剣に取り組もうかとの自覚が次第に出て来た。

 だって内閣総理大臣なんて、
誰でもそう簡単になれるものでもない。

 私は割と簡単になってしまったが、
そんなのまぐれ。
 本当ならこんな運命って、
どうかしているじゃない?



 今日は財務省主計局の局長を官邸に呼び、
補正予算の詰めについての説明を聞いた。

 局長である彼女は、
私が住むアパートの近所にある
『スーパー≪激安≫』に勤めていた。

 だから顔見知りで
私が『日唐カップラーメン【バゴーン】』と
『大正の【超特大ミルクプリン】』を
いつも買っているのを知っている。

 彼女は私の顔を見るなり、
「あら、平ちゃん(私、竹藪平助は彼女にそう呼ばれている)
今日はカップラーメンとプリンは買って帰らないの?」
と聞いてくる。
「ああ、買って帰りたいけど
今は財布のひもをカエデに奪われているんだ。
とても残念に思うよ。」
「だから最近顔を見せないのね。
レジ仲間が「最近平ちゃんが来ない」と言ってたのは
それが理由なのね。
でもお酒を飲むくせに、甘党でもあるなんて、
将来成人病に苦しむことになるから
それで良いんじゃない?」

まるで他人事のように言った。

 確かに他人事だけど。

 「今は流星号に乗って毎日通勤で汗を流しているから、
成人病になんかならないさ。」
 「また、そんなこと言って・・・。
たまにはカエデさんに感謝しなきゃダメよ。
アンタの健康管理をちゃんとやってくれてるんだから。」

 おばちゃん口調で云う。

 おばちゃんだけど。




 こうしたやり取りの末、
大切な国家財政の補正予算は組まれてゆく。



    
    つづく


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