自分自身あるいはその家族が生活課題を抱えているが、その解決には外部の専門家の協力が必要であると認識しているタイプの利用者をボランタリー・クライエントと呼ぶ。このような利用者はワーカビリティが高く、ソーシャルワーカー(以下、ワーカー)に問題解決を期待しているので、ワーカーがその専門性を示し解決への提案を行うことでラポールを形成しやすい。ワーカーは、利用者とのラポールを深めるとともに、利用者の家族や近隣との関係を把握し、利用者が利用するサービス利用機関の関係者や各種関係機関とも連携してより多くの情報を集めて多面的にアセスメントとプランニングを行っていく。
一方、「『何を話すのかわからないが、行くように言われたので来た』という人」(注1)や「自ら援助を求めないクライエント」(注2)をインボランタリー・クライエントと呼ぶ。潜在的なニーズをもっているサービス対象者に対してワーカーはアウトリーチを行い、サービス利用を働きかけ、サービスを活用するように動機づけ、問題解決を促進していく。
インボランタリー・クライエントには相談援助の意味や目的を理解していないタイプと相談することに拒否や反発などの否定的な感情を持つタイプがある。利用者が相談援助の意味や目的を理解していない場合、ワーカーは、先ずわかりやすくソーシャルワークの意味や具体的なメリットを伝え、利用者の側に立って援助していることを示してラポールを形成していく。そして、利用者と生活課題を共有し協働で問題解決を進めていく。利用者が拒否や反発などの否定的な感情をもっている場合は、ワーカーは先ず利用者の誤解や不安を丁寧に払しょくして、ラポールを醸成していかなければならない。また、ケース発見のために利用者の自宅を訪問して生活空間を確認するとともに、家族や地域住民とも直接会って情報収集を行い、利用者の問題状況を包括的に把握してアセスメントを行っていく。但し、ワーカーが単独で対応し問題解決していくことには限界がある。ワーカーは、積極的に各種関係機関と連携しなければならない。
例えば、児童虐待を抱える家族の場合、親が児童相談所の介入を拒絶し虐待が顕在化しにくいケースがある。このような場合、児童虐待の兆候を地域住民や民生委員・児童委員、学校関係者が薄々感づいているが、親への遠慮や恐れから遠巻きに見てしまっていることがある。ワーカーは、このような兆候を素早く察知できるように予め地域でシステムを構築しておき、もし、このような兆候があれば、直ぐに児童相談所とともに警察とも連携して直接子どもの様子を確認し、虐待に対処しなければならない。そして、児童相談所が子供を保護するのと並行して、虐待してしまった親へのケアを行い事態の悪化を防ぎ、地域と協調して親子関係の改善を図っていく。
このようなケースでは、より丁寧でかつダイナミックなソーシャルワークが求められる。
〔引用文献〕
(注1) 新・社会福祉士養成講座7「相談援助の理論と方法Ⅰ」第3版第4刷 中央法規、2018年 p.103
(注2) 同上 p.157
〔参考文献〕
1. 新・社会福祉士養成講座7「相談援助の理論と方法Ⅰ」第3版第4刷 中央法規、2018年
2. 「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」 平成30年7月20日 児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000336226.pdf
3. 「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」 子家発0720第2号 平成30年7月20日
厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/236773.pdf
4. 「ブログ67 『児相は福祉機関、だから警察とは連携できない』なんて無茶苦茶言わないでください」
こどもの虐待・性犯罪をなくす会 - Think Kids(シンクキッズ) 投稿日:2015年10月7日
http://www.thinkkids.jp/archives/1150
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