蒼い空の下で

文系男子の何気ない1日を記します。

夏のあとがき③-ありがとうの涙-

2019-09-03 22:50:11 | 2019年学童野球
4回を終えたところで2対1。
とりあえず1点をリードして折り返した。
再びマウンドに上がった太良も調子を取り戻してきた。
流れはこっち側にある。
そんな事を思いながら、カメラをぶら下げ、あちこちと動き回った。

しかし、そんな考えは一蹴される。
フォアボールで優希を歩かせた直後だった。

三番に座るキャプテンの孝介。
唯一の6年生を迎えた場面で、痛手となる一撃を浴びてしまう。
振り抜かれた打球は、左中間を大きく割く。
湊志と葵斗が懸命に追いかけるが、勢いある打球に追いつけない。

沸き上がる1塁側。
再び1点のリードを許してしまった。

ここで一旦グラウンドから目を背けると、そこには青郷クラブの姿があった。
この試合の勝敗によっては、青郷にも準優勝の可能性が出てくる。
その為、この試合が終わるまでは待機してくれている。

私が、現チームをまざまざと語れる立場ではない。
しかし、終盤で逆転できる気持ちの強いチームではない事ぐらいは分かっている。
鉛色の雲の下、嫌な空気が漂ってきた。

6回の攻撃。
4回に続いて1番・湊志からの好打順となる。
この回で得点を奪わなければ、ほぼ負けも同然。
誰もがそう感じていたと思う。
こうした中、湊志と太良が連続ヒットで出塁する。
この場面で打席に立ったのが5年生の歩夢。

この大会を迎えるまで、ずっと言い続けてきた言葉。
「ろうきん杯では、6年生を助けたるんやで。」

歩夢の打球は、力強くはなかったがレフトを越してゆく。
2人が還って再逆転。
今度は、3塁側が大きく沸き上がる。
生還した太良と湊志が手を叩き合った。

この日、史枝さんが、その都度LINEで嫁に速報してくれていた。
どうりで私の元へ連絡が無かった訳である。

間髪入れず、四番の渉太が追加点となるタイムリーを放つ。
これで2点差とする。

最終回、ランナーを出したものの、得点圏までは進ませなかった。
最後は、セカンド・悠久の捕球で緊迫した試合を締めくくった。

試合を終えると、応援席前に整列する。
すると、暖かな拍手が贈られ続けた。

表彰式までの間、やや時間があった。
ここでグラウンド整備をしているのに気付き、遅れて私も入った。
もう十分に整備されていたが、サード周辺を重ねて整備した。
そして、マウンドにも行って少しだけ整備させてもらった。

今大会は、大飯スリーアローズの優勝で幕を閉じた。
マリナーズも価値のある準優勝を得る事が出来た。

表彰式が終了後、2年振りの記念写真を撮った。
6年生とその保護者。
いい顔をしていた。

表彰式を終えると、ホームグラウンドへと戻った。
最後に子供たちを集め、雄介から話があった。

2年の春、海翔と葵斗がやってきた。
少ない人数にも関わらず、辞めずに頑張ってきた。
団員不足に悩まされる中、4年の春に仲間が増えた。
4月に湊志と渉太。
そして、6月の終わりには太良が入ってくれた。
3人が入団してくれたおかげで、秋以降の活動が可能となった。
雄介は、話の中で6年生達に「ありがとう」と言った。

それが終わると、保護者が呼ばれてグラウンドの中に入り、子供達と向き合って並んだ。
正直、この1年間の苦楽は知り得ない。

子供側に立った雄介が保護者へ感謝の言葉を述べた。
それが終わると、今度は保護者を代表して聡が涙ながら言葉を述べた。

「また泣いたか・・・」
と思いつつも、心のこもった言葉を耳にする。

悔し涙ではなく子供達への感謝。
そう、最後に聡が見せた涙は、ありがとうを意味した涙であった。

                          おわり
コメント
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