なぜ、今藁の家を・・・08

その後、転職した設計事務所は僕の人生を大きく変える場所となった。決して金銭的には裕福ではなかったが、仕事で十分に満たされていた。
担当するプロジェクトで使用する材料は片っ端から調べたおした（成分・長所・短所・価格・スペック）その中でベストのものを選択しお施主さんに説明をする・・・なぜコレを選んだのか？を。
今までの一軒の住宅にかける時間とは比べ物にならないほど時間をかけて、線を引き、何度も模型を作り、検討し変更し、完成させていく。
こんなにじっくり家を作る方法もあるんだ！と気づかされた。
早ければいいのか？なるべく手間を省略することがいいことなのか？こんなことを立ち止まって考えることが出来る仕事環境だったのだ。

使う材料を一個一個検討するとき、常にこの家に住む家族の顔を想像しながら決定していきます。
現場には毎日足を運び、一日の大半を現場で過ごす。
自分の家を作っているような錯覚になることも多い。
現場に身をおくことで学ぶことも多かった。
こんな仕事場だから（？）
給料は正直・・・少なかった。でも嫌にはならなかった。
このときに参加型建設の手法や。ワークショップという言葉と出会い、参加し、
感動する。

人とつながる心地よさもこのときに知る。


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なぜ、今藁の家を・・・07

約２年間、失敗だらけで迷惑かけっぱなしでしたが、僕も僕なりに「家作り」というもをもっと深く知りたいという気持ちにさせてくれたこの職場だった。もっといろいろな家作りがあるのでは？と思い立ったらじっとしていられなかった。
12月になり、若僧で世間知らずの僕は図々しくも社長に話をする・・・「アトリエ系の建築設計事務所で勉強をしたいです！」と。
社長は「もっとよく考えてみて、それでもやってみたいならそうしろ」と言ってくれる。
年が開け、２月になっても僕の気持ちは変わっていなかったことを伝える。
そして第一回目の転職をすることになる。


～思い出～
この職場の最終日、夕方から社長に連れられていろんな飲み屋さんに連れて行ってくれた。
深夜、社長に解放されてから再度、誰もいない事務所へ戻り、先輩たちの机に「お世話になりました」と
手紙を置いて回り、一礼をして事務所を後にした。

「社長、お世話になりました。」
と言い、気がつくと涙が出ていた。（酔っていたのか？）





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なぜ、今藁の家を・・・06

そこの事務所のいわゆる「資料室」には膨大な各メーカーの建築材料カタログやサンプルが並べられていた。屋根材のミニチュアサンプル灰皿（燃えませんよーという事を説明したいのか？）、便器のミニチュア色サンプル。ミルフィーユのように切り取られた断熱・仕上材一体型壁材料のカットサンプル。営業さんが商品説明のときに実際に燃やそうとしたのか・・・片隅が溶けた燃えない内装材サンプル。
破れない和紙のサンプル。分厚いカーテンのサンプル集。シックハウスの原因となる有害物質を吸着するハイテク材料。ウレタンで表面処理された傷がつかないフローリング。ほとんどのメーカーが同じようなものを製造している。各建材メーカーの営業さんは扱っているご自慢商品の最新・一式のカタログやサンプルをドサッ！と置いていくのだ・・・そんなものでイッパイになった部屋の管理人は新人の僕。

先輩やボスに○○○のカタログを持っこい！と言われたら、迷わず各メーカーの同等品を集めてくる・・・
用が済んだら片付ける・・・そういったことを繰り返す事で家作りに必要な材料を体で覚えろというのだ。
嫌でも覚えました・・・
覚えた頃には新製品が出てくる。
また覚える・・・。

コレが家作りなの？
ホントにコレでいいの？

カタログにある物を組み合わせて家を作るという作業に違和感を感じずにいることは出来なかった。
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なぜ、今藁の家を・・・05

僕の世代（団塊ジュニア）の受験はいつも「狭き門」と言われてきた。就職も同じ、さらに「不景気」ということで就職活動は苦労した。
といいつつも、僕は中学～高校の同級生の母親のお兄さん（ややこしい・・・）の設計事務所で雇ってくれることになった。
ここではずいぶんと勉強になった。
社会人とはなんたるか？
プロとはなんたるか？
建築とはなんたるか？
義理と建前とはなんたるか？
男とはなんたるか？
新入社員とはなんたるか？
・
・


いつまでも学生気分の僕にとっては非常に厳しい現実ではあったが、本当に勉強になった。
がむしゃらになって先輩たちとの人間関係のバランス、上司にかわいく使われるコツをしっかりとここで叩き込まれたのだ！

そんながむしゃらな日々も１年が過ぎ・・・２年目が過ぎようとするころには自分がしている仕事とは？
と考える余裕が出てきた。
そして、僕が建築を目指すきっかけとなったアノ楽しげな建築現場で味わったトキメキをすっかりなくしてしまっていた・・・忘れてしまいそうになっていたのだ。
業務として行ってきた建築に、なんだかよくわからない疑問を感じ始めた・・・
一体、何だ？これでいいのか？


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なぜ今、藁の家を・・・04

大学は迷わず建築学科がある大学を選んで受験した。まじめに勉強をしなかったので・・・浪人生活をして1年後に地元の大学に入学。

いろんな意味で楽しかった！建築の勉強は難しかったが、面白かった。それ以上に！？友人達との時間が楽しくなってしまった・・・（両親に謝罪・・・）
単位は3年生の時点で卒業に必要な単位はすべてとってしまい・・・遊んだ。（お馬鹿！）
仲間と建築見学ツアーと題してレンタカーに乗合い遠方まで足を運んだ。
学生の間ではヒーロー的存在の安藤忠雄の講演会にも足を運び、哲学を聞きに行った。
レンゾピアノの講演会にも行った。フンデルトワッサーの展示会へも行った。アアルトの展示会にも行った。コルビジェ、ライト、象設計集団・・・とにかくいろんな建築家の哲学を吸収しに行った。
どれも学生の目にはスタイリッシュな建築として映り、説得力があり、憧れた。

建築三昧の自由気ままな大学生活も終わり、卒業を迎える。

さて、困った・・・どこに就職しよう・・・？

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