レアル・マドリーのCLリーグフェーズ・マッチデイ3の相手は、昨年の決勝の再現カード「ドルトムント」だった。試合はドルトムントに前半で2点を先取され「ちょっとこりゃヤバいかな?」という微妙な状況である。
新加入のエムベパはセンターに入って、ヴィニシウスが左・ロドリゴが右という配置のフォワード陣。そして右モドリッチ・中フェデ・バルベルデ・左ベリンガムという百戦錬磨のMFが中盤を固めていた。右サイドバックには前十字靭帯断裂で欠場のカルバハルに代わりルカス・バスケスが任されて、左サイドバックにメンディを配置。ミリトンとリュディガーのCBにクルトワのGKという鉄壁の守りである。GKは控えのルニンでも充分やれるレベルにあるが、やはりクルトワは外せないということか。カルバハルとアラバの怪我の欠場は痛い。
前半が始まって何かレアルのボール回しに「ミスが多いな?」と思っていたら案の定、29分に何とペナルティエリア内でギラシがポストプレーでディフェンスとのせめぎ合いをしている間にマーレンがスルスルっと一瞬で右に抜け出して「完全フリー」となり、そこにギラシから絶妙なパスが出て絵に描いたようなシュートを決められた。
そして「やられたぁ」と思う間もなく、32分に今度は右の奥深くまでボールを運んだマーレンから低いクロスをGKとCBの間に通されて、そこに何故だか「うっかりしてたバスケス」の背後を割って走り込んできたギッテンスがキッチリ合わせてゴールを入れられる。「早くも2ー0」と大金星の態勢だ。
レアルはマッチデイ2でも安全牌のリールに「ウソだろ?」というまさかの敗戦を喫しているから、ここは何が何でも勝たなくていけないシチュエーションなのだ。追い込まれたレアルは選手全員が「鬼のような形相」で相手ゴールに殺到し、「これでもか!」とばかりに続けざまにシュートを打ち始める。ところが相手のドルトムントも去年のCLで決勝を戦った実力のあるチームである。簡単に点を取られるようなヤワな相手では決して無い。お互いにシュートを打ち合って、あっという間にハーフタイムになった。
この短い間に戦術を変更して、どれだけレアル本来の攻撃力を発揮できるか、ここは名将アンチェロッティの「頭脳の見せ所」である。後半は一転してレアルの「華麗なるゴールショー」の火を噴く猛攻が幕を開けた!
レアルはドルトムントのペナルティエリア近くでボールを保持したまま5本10本、右から左からセンターからと「怒りの鉄拳」よろしくディフェンスの隙間を掻い潜ってドルトムントを攻め立てる。そこで今日は後半の怒濤の反撃シーンを実況中継風に振り返ってみよう。
1、リュディガーのヘッド(58分)
モドリッチのクロスがディフェンスにはじかれて得た左のコーナーキックをヴィニシウスはあげるのでなくパスを選択。ペナルティエリア内でのダンゴ状態からロドリゴ、ベリンガムと立て続けに強烈なシュートを放つ。しかし何れもディフェンスに当たって跳ね返ってしまい惜しくもゴールはならず。こぼれ球をエムバペが右奥に持ち出して今度は意表を突くクロスをセンターに上げると、リュディガーが後ろからディフェンスの頭越しに「強烈なヘッド」でゴールを奪った。目を真っ赤にして吠えるリュディガー。ディフェンスの上から叩き込むヘッドはリュディガーの得意技である!。
2、ヴィニシウスの左足(60分)
右からのスローイングをモドリッチが中に運び、ディフェンスラインギリギリでエムバペに右足アウトの絶妙なパスを出す。エムバペが反転してシュートしようとするのをディフェンスが足を出してからくも阻止した。が、弾かれてボールが逆サイドに詰めていたヴィニシウスの前に飛んできて、これがお誂え向きに「ごっつぁんゴール」となる。これで2−2の同点だ。
3、バスケスの渾身の一撃(83分)
この間もレアルの攻撃陣は休む間もなくシュートを打ち続けていた。そんな中で久し振りにドルトムントがレアル陣内に攻め込んで行き、左からブラントがパスを出すとそれをバイヤーが受けて右の至近距離から満を持してシュートを放つ。だが守護神クルトワが驚くべき反応の速さで足元の難しいボールを見事にセーブ。そこからレアルは何とか攻撃の二の矢を防ぎ、密集を抜け出して右ウィングのロドリゴにロングパスを出した。ロドリゴは肉離れかなんかで脚を痛めながらも「ぎりぎり」ゴールライン手前でボールをキープ。走ってきたルーカス・バスケスに「頼むぞ!」とパスを出すと、何と彼はそのままスピードを落とすことなく独りで持ち込んで周りのディフェンスが「あれよあれよ」と棒立ちになっている間に、右ゴールライン際の至近距離からキーパーの指先をかすめるような「目の覚めるビューティフルゴール」でゴールネットを揺らした。キャプテンマークを巻いたベテランが「全身全霊の意地を見せ」つけて、ドルトムントの必死の守りを粉々に粉砕した魂の一撃である。これにはレアルのベンチも混然一体となって歓喜の踊りに沸き立った。私はアンチェロッティの「うそだろ?」といった驚きの表情が忘れられない(まさかバスケスが入れるなんて!?、って顔だった)。これで3−2である。
4、ヴィニシウス80m独走ゴール(85分)
逆転の殊勲者ロドリゴは奮闘したためにハムストリングを痛めてチュアミニとチェンジ。その後すぐに自陣ゴール前でドルトムントからボールを奪ったヴィニシウスが、圧倒的な脚力を活かして左サイドを駆け上がる。進路を遮るディフェンスを華麗にワンスッテップでかわし、中央に切り込んだと思ったら豪快に右足を一閃した。ボールは糸を引き僅かにカーブして「絵に描いたようなゴールショー」の完成である。完璧に打ち抜かれたキーパーと、ディフェンスは5人いたが「なすすべもなく茫然と」立ち尽くしているのみ。レアルの聖地ベルナベウは「まさに芸術的ゴールシーンに酔いしれて」いて、満員の観客はもう完全な興奮の坩堝である。これだから私は「レアルのファン」をやめられないのだ!
5、ヴィニシウスの独壇場(90分+)
これはオマケの「ヴィニシウス劇場」である。2点差を付けて勝負は決まっていたが、レアルのファンはまだまだゲームを楽しみたい。アディショナルタイムに前陣でボールを受けたヴィニシウスは次々とディフェンスをかわしペナルティエリアに侵入すると、今度は中央に行くと見せかけて左に切れ込みキーパーの上を抜く「技あり」のゴールを決めて見せた。圧巻のハットトリックである(ヴィニシウス最高!)。もうこうなったら彼を止めることは誰にも出来ないだろう。スピードがありテクニックもあって尚且つディフェンスとの駆け引きも抜け目ない上に「シュートが群を抜いて上手い」ヴィニシウスは、今や「最も危険なアタッカー」と言っても過言では無いだろう。
以上だ。
試合結果は5ー2と実力通りの圧勝だ。私は「奇跡の大逆転劇」を演出した裏のヒーローには「エムベパ」を挙げて置きたい。右からの意表を突いた美しいアシストは、彼が無類のサイドアタッカーでありながら味方にパスを出して華麗なゴールを演出することも出来る「マルチな才能」を見せつけた試合でもあった。もっと試合をこなしてチームに馴染んでくれば、本来の爆発的なスピードを発揮して相手ディフェンダーを「置き去り」にするシーンも見られると思う。だが、そうなるとヴィニシウスとポジションが重なるのだ、頭が痛いねぇ。はてさてアンチェロッティはエムベパを何処で使うのか?
なお、レアルにはシュートを決められる選手がそれこそ星の数ほどいるが、1人挙げるとするなら今回はベテランの「ルーカス・バスケス」を挙げたい。いつもはカルバハルの控えとしてベンチを温めているが、数少ないチャンスを活かして見事にゴールを決めた今回は、彼にとっても「格別な試合」になった事だろうと思う。我々レアルファンにしてみたら「バスケス、良い仕事をしたな〜!」と最大限のエールを送りたい(ゴールパフォーマンスで見せた彼のとびっきりの笑顔は、最高に晴れ晴れとしていた!)
さて来週はバルサとのクラシコである。残念ながらテレビで見ることは出来ないが、バルサも今週のCLで宿敵バイエルンを破って意気上がっているようなので果たしてどうなるか。勿論私はレアルの勝利を信じているけど・・・
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