偉人とは大事をなす人であると思うは大なるまちがいである。偉人とは小事に忠実なる人である。小事に忠実なるがゆえに、その小事が積もりて、彼をして大ならしむるのである。
小人他なし、虚偽の人である。万事をごまかす人である。何事をも完全になさんと欲してその事を努めざる人である。ゆえに彼は生涯を費やして一事も成就し得ないのである。
偉人たらんと欲するか? はなはだ容易である。すべてなんじの手に来る事は、力を尽くしてこれをなすべしである。
誠実その事が偉大である。誠実をもって万事に当りて、何びとも偉大たらざらんと欲するも得ない。世にはいまだかつて誠実ならずして偉大なりし人のあったことはない。 (内村鑑三)