朝の5時半ごろに畑に着いた。
ちょうど日の出。
山の端の東雲(しののめ)の空が、ほがらほがらと明けてゆく。
猛暑続きだが、この時間帯は、さすがに涼しい。
「春はあけぼの」だが、夏のあけぼのも捨てたものではない。
どっかりと椅子に座って、しばしは夏の曙を楽しむ。
日の出は、その日のスタートだが、平安時代の女性にとっては、切ない時間帯でもあった。
しののめのほがらほがらと明けゆけばおのが後朝 (きぬぎぬ) なるぞ悲しき /古今集・恋三
平安時代の貴族は「通い婚」。
夫婦は同居せずに、男が女の実家に通う。
一夜を共にする前に、互いの下着(襦袢・じゅばん)を重ねてコトに入る。
コトが終わった明け方、男は出勤するために帰るのだが、昨夜に重ねていた下着(衣・きぬ)を交換して帰る。
女にとっては、男が次も 私の所へ来てくれるだろうかと、悩ましい「衣衣の別れ」だ。
楽しかった夜が「ほからほがら=ほのぼのと明るい」と明けてゆく一方で、男と別れなければならない女には、切なさがつのっていく。
果たして、あの君は、今度は何時に来て下さるのでしょうか……?
さて、なんとも悩ましい台風が近づいているので、今日は、ビニールトンネルのビニールを撤去を予定していた。
ところが、朝の台風情報を見ると、かなり西寄りにコースが変わっている。
おいおい、いつ来るねん!
そこで、予定を変えて、台風で倒れそうなトマトとスイカの撤去。
ほんでもって、ビニールの除去は夕方にしよう。
ところが、夕方、畑へ行こうとするが、台風の影響で20分後に雨の予報なので中止。
しかし、雨は降らずに、きれいに晴れている。
なんとも、不愉快で、悩ましく、切ない台風!おいおい、どないなってるねん!
古語の「朗ら=ほのぼのと夜が明ける」から派生したのが「朗らか」という語。
本来は、気象を表す語だったのが、明るいイメージから、物事の状態にも遣われ、人の性質を表す「朗らか」になった。
「ほがらか」という言葉は、自然と一心同体に生きて来た日本人の気持ちが込められた美しい言葉なのだ。
はるか南方から、艱難辛苦の末にたどりついた台風10号よ!
朗らかに過ぎ去れ!