河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

歴史28 幕末――テンチュウ①

2022年11月22日 | 歴史

昭和41年(1966)は台風の発生が多い年だった。
6月の下旬から8号が大きな被害をもたらした。9月には今でも最高風速(85.3m/s)の記録を残す18号が宮古島に大被害をもたらし、下旬には24号、26号が続けて上陸して日本列島を襲った。
その都度、学校は臨時休校になるので、小学生の私にとっては少しばかりうれしかった。
ところが、それが私に大被害をもたらす。

9月最後の学級会(ホームルーム)の時だった。
20歳代後半くらいの担任のコガキが教室に入ってくるや、10月にある学級発表会について話し出した。
普段なら、みんなで話し合って出し物を決めるのだが、休校続きで時間がなかったのだろう。
勝手に話を進めて、最後には15分ほどの寸劇を参観に来た保護者に見せようと言う。
普段なら「どんな劇にする?」とみんなで話し合うのだが、焦っていたコガキは強引に、
「時間がないので、先生が考えてきた。『大きなかぶ』という昔話や!」
勝手に話を進められて、同級生は皆「・・・!」になっている。
「ほんで、時間がないんで台本を作ってきた! これや!」
そう言って皆に台本を配った。たしかこんな話だった。
――昔むかし、おじいさんがカブの種を植えた。おじいさんは大きく育ったカブを抜こうとするが、まったく抜けない。
そこに、いろんな人や動物が手伝いにやってくる。みんなで力を合わせると、みごと! カブが抜けた――。
「そいでや、時間がないので今日に配役を決めたい。まずは主人公のおじいさんや! 誰か立候補するもんおらへんか?」
クラスのみんなは「・・・!」で沈黙。困ったコガキが教室を見渡し、なぜか私の方を向いて、
「Y(私)どないや? みんなを一つにまとめる重要な役や!」
クラスのみんなは「・・・!」
私は私で「なに言うとんねん?」と黙っていると、
「なあ・・・、ええやろ!」 
コガキがゆっくりと手をたたき、皆の拍手をうながす。
しばしの「・・・!」があって、あちらこちらからかしわ手のような拍手がする。
「よっしゃ! Yに決定や! あとの配役は『おじいさん、私もお手伝いします』のセリフだけやから」
そう言って、その他のサルやリスやらの配役を黒板に書いていった。
私は泣きそうになって「そんなんイヤや!」と言うと、
「ミンシュシュギでみなが決めたんや!」とコガキがにらむ。
なにからなにまでミンシュシュギで決定する時代だった。
「台風続きで授業中に練習時間がとられへんから、今日の4時から教室で練習する。ええか、みな来るように!」
それで、起立、礼。私は席を立たなかった。

下校する途中も帰ってからも悩んだ。
「行くべきか行かざるべきか」
子どもの悩みだから不安しかない悩みだった。そして決断した。
「行かへん!」
決断しても不安だった。その夜は眠れなかった。
次の日の学級朝礼でコガキにおもいっきり頬っぺたをたたかれた。

②に続く

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