※②のつづきです。初めての方は茶話148から読んでください。
もみじ寺から怖ろしく狭い山道を通る。
谷底に落ちれば、行方不明のまま朽ち果てるだろうという道であった。
ようやく見知った道に出てほっと息をつく。
見知ったスーパーに入って、家飲み用のアテを買う。
明るいうちに友人宅に着く。
無事にたどり着けたというので、まずはビールで乾杯。
そしてそのままオジン二人の質素な酒盛りとなる。
朝は何時もの防災無線の音楽で目が覚める。
友人が来て、雲海を見に行こうと言う。
そういえば、夕んべの酒宴の中で、見事な雲海の写真を見せてくれたのを思い出した。
外に出てみると、山々は霧に覆われている。
こんな日は、見事な雲海になるのだ、というので、是里(これさと)とい展望台に向かう。
深い霧の中を車は走る。
この霧を抜けると青空が広がり、人生観を変えるほどの見事な雲海が広がっているのだと言う。
その青空に向かって、霧の中を展望台に向かう。
そして、展望台にたどり着いた。
しかし、展望台は霧に覆われていた。
つまり、我々は雲海の中にいたのだ。
もう少し高い所に行けば雲海を見ることが出来るはずだというので、再び車は霧の中を走る。
もはや車は雲海の中をさまよう潜水艦と化していた。
結局、潜水艦は海上に出ることが出来なかった。
我が人生観は以前のまま、むなしく雲海の底に帰った。
七年間、大阪と岡山を行き来し、展望台には50回ほど来ていると友人は言う。
その50回の中で雲海を見ることが出来なかったのは、これで二回目だとも言う。
なんという巡り合わせ、運の悪さ、間の悪さよ。
晴れの国岡山は、やはり「はずの国」だった。
※④へつづく