ザック・カーター
zach.carter@huffingtonpost.com
2012年6月16日
"Huffington Post" ワシントン
水曜朝早く、オンラインで漏洩された、太平洋諸国8ヶ国とのバラク・オバマ大統領の自由貿易交渉の重要文書は、以前の約束とは矛盾して、政権が、多国籍企業に、過激な新たな政治力を与えるつもりであることを暴露している。
漏洩した文書は、政権の通商方針を以前から批判してきたシチズンズ・トレード・キャンペーンのウェブ・サイトに投稿された。新たな漏洩文書は、交渉の秘密主義を巡ってかなりの論議を引き起こしており、議員の中には、大企業幹部達が享受しているのと同じような、貿易交渉文書を見る機会が与えられていないと不満を漏らす人々もいる。
"この漏洩文書中の言語道断な代物では、アメリカの貿易担当当局者が、過去二年間の[貿易]交渉に関し、あれほど極端に隠し立てするのも当然です"とパブリック・シチズンの世界貿易担当ディレクター、ロリー・ワラックは声明書で述べている。
ロン・ワイデン上院議員(民主党-オレゴン)は、法案を提出するのに、情報入手が全くできなきいことにいきり立って、更なる公表を要求した。下院監視・政府改革委員会委員長ダレル・アイサ(共和党-カリフォルニア)は、自身のウェブサイトで交渉の別文書を漏洩さえしている。他の上院議員も、オバマの首席通商交渉担当者ロン・カーク宛に、更なる公表を要求する手紙を書くことを検討している。
新たに漏洩した文書は、TPP太平洋横断戦略的経済連携協定の中でも、最も論議を呼ぶものの一つだ。文書は、国際投資を管理する規制の大規模一掃に取り組むものであり、現在国内法にある主要な保護をむしばむとして、環境保護運動活動家や、金融改革を主張する人々や、労働組合が長らく拒否してきた政策を、オバマ政権が擁護しているこを暴露している。
現在オバマ政権が主張している条約の下では、アメリカ企業は、国内法や環境、金融やその他の規制に従い続けることになる。しかし、アメリカ国内で活動している外国企業は、重要なアメリカの法や規制を、国際法廷に訴え出ることが認められるのだ。この国際法廷はアメリカの法律を覆す権力を与えられ、裁定を順守しそこねたかどで、アメリカ合州国に通商経済制裁を課することができるようになる。
条項は、2008年の大統領選挙キャンペーンに際し、オバマと民主党が発表した選挙キャンペーン時の約束と正反対だ。
"我々は、政府が、環境、食品安全や国民の健康を保護するのを押しとどめるような、アメリカの投資家に対するよりも、外国人投資家により大きな権利を与えるような、アメリカの極めて重要な公益事業の民営化を要求するような、あるいは、開発途上国の政府が、命を救う医薬品を入手しやすくするための人道的な使用許諾方針を採用するのを妨げるような、二国間通商協定は交渉しない"と選挙キャンペーン文書には書いてある。
ところが、こうした誓約のほとんどすべてが、漏洩したTPP文書によって、破られている。現在の文書で破られていない一つ、「命を救う医薬品の入手に関して」は知的所有権標準に関して以前に漏洩した文書と矛盾する。
医薬品規制に触れて、"この点については、ブッシュのほうがオバマよりましでした"と国境なき医師団の医薬品入手容易化キャンペーンのアメリカ担当者ジュディト・リウスは語っている。
ハフィントン・ポストに提供された声明の中で、アメリカ通商代表部はこうした懸念を実際より軽く扱っている。
"この政権は、強い環境保護、公衆衛生や安全法規の確保に尽力している"とアメリカ通商代表部広報担当Nkenge Harmonは語った。"我々のTPP投資提案の中には、公衆衛生、公衆の安全と環境を保護する対策を含め、合法的で、差別のない公益規制を推進する我が政府の能力を損なうようなものは、何もない。"
これまでの貿易協定によれば、イルカに危害を与えない方法で漁獲されたマグロにつけることができるアメリカのラベルと、対十代禁煙策は、通商に対する不公正な障壁だと最近裁定した国際法廷では、"合法的"やら"差別のない"といった言葉は柔軟な解釈をされる余地がある。新たな投資規則は、例えば、政府契約交渉にまで及び、いわゆる"米国品優先購入"、アメリカの製造業の為の優先策を廃絶してしまうのだ。
以前、アメリカ通商代表部は、漏洩したとされる文書の条項についてコメントすることはしないと述べている。
アメリカ通商代表部は、広範な標準は、多くの医薬品特許と知的所有権標準規則を必要とし、薬剤価格を上昇させかねないが、アメリカは、協定が命を救う医薬品へのアクセスを決して制限しないよう、太平洋横断協定交渉に参加している諸国と協力するつもりであると主張している。
他の国際交渉で、命を救う医薬品に対する長期間の独占を大企業に認めるという、論議の的の医薬品特許を成立させようとする最近のアメリカの活動によって、この声明は、いささか偽りであることが示されている。こうした独占は薬品価格を上昇させ、それにより、とりわけ発展途上国において、医薬品の入手を妨げることになる。世界保健機関や多くの非営利の公衆衛生団体は、オバマ政権が狙っている標準に反対している。国連の二つの組織は、最近そのような規則が公衆衛生を損ないかねないという理由から、現在オバマ政権が主張している通商条件に同意せぬよう、各国政府に強く要請した。
そのような外国投資標準も、民主的に選出された指導者達が導入したアメリカ国内の優先度を妨げる可能性について、アメリカ国内で保守派の主権純粋主義者達と、進歩的な活動家達の双方による非難の的になっている。1993年、議会で可決した北米自由貿易協定や、それに続く一連の貿易協定は、それまでは主権国家だけのものであった新たな権力を大企業に与え、様々な問題を巡って、企業が国家を直接訴えることを可能にした。
現在の貿易協定文書は、アメリカの主権に挑戦を突きつける可能性があるが、アメリカに本社を持つ大企業も、まさにその同じ外国政府の法律に反対する条項を用いることで恩恵を受ける可能性もある。交渉に参加している太平洋諸国8ヶ国のうちの一国が、アメリカ企業が反対する新たな法律を可決した場合、そのアメリカ企業が、その国を直接国際法廷に訴えることが可能になる。
パブリック・シチズンは、協定の文章によれば"法廷には、'裁判官'役と、政府を訴える投資家の弁護士役"を、交替して演じる民間部門の弁護士達が配属されることになるだろうとして、こうした国際法廷の独立性に疑問を投げかけている。
6月始め、カトリック教会や環境保護活動家達による反対を理由に、エルサルバドルが、シアン化物を用いる金鉱採掘を禁止したという、同様な外国投資標準にまつわる訴訟事件を審理することに世界銀行の法廷が同意した。もし世界銀行がエルサルバドルに不利な判決を下せば、外国企業の要請を受けて、エルサルバドルの国内法を撤廃するということになりかねない。
漏洩した文書によってひき起こされた環境問題にまつわる懸念については、自然保護団体シエラクラブの労働・貿易担当ディレクター、マルグレーテ・ストランド・ラングネスは"投資条項を巡る、私達の最悪の恐れが、この漏洩文書によって確認されました... この投資条項は環境保護法や政策を強化しようという努力をひどく台無しにしてしまう。"
基本的な公衆衛生や土地利用法規は、銀行取り付け騒動や、金融危機を阻止するために使われる可能性がある資本レベルでの銀行規制と同様に、国際法廷という難題に直面させられることとなる。IMFでさえ、そのような資本規制の利用を推奨しているのに、漏洩した現行版貿易協定の下では、それが禁じられてしまう。パブリック・シチズンによれば、幾つかの国が投機的な金融バクチを国が規制するのを可能にするような例外を提案しているが、アメリカは、こうした提案に反対している。
TPP交渉は、オバマが大統領職について以来、継続している。最大のアメリカ企業ロビー活動団体、アメリカ商工会議所がこの協定を強力に支持している。2012年大統領選挙におけるオバマの競争相手、共和党のミット・ロムニーはアメリカが出来るだけ早く協定をまとめるよう促している。
www.huffingtonpost.com/2012/06/13/obama-trade-document-leak_n_1592593.html
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流石日本の民主党や自民党を操る宗主国の大統領、選挙の公約など無視するのは当然なのでしょうね。
大阪の橋下を動かしていたのも大阪市庁の川向こうの米国総領事館ということがネタバレした通り、オバマがブレればみんなブレまくるのは当然なのでしょう。
今やアメリカをはじめどの国よりも権力を持つスポンサーのグローバル企業には、誰も逆らえないということなのでしょうか。大統領が国民より大企業を擁護する米国、それに差配される日本。
そのグローバル企業とて、消費者である一般市民が購入してこそ存在する、ということを忘れてしまっているのでしょう。
米国大統領さえ自分の国の人たちに隠す「TPP」、日本の政府・官僚などの言うことが全くの出鱈目だということが、これでハッキリしたのではないでしょうか。