浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

グローバリゼーションが世界を征する日

2013-09-20 19:11:04 | 資料

アセア・ブラウン・ボベリ‎社、電力関連、重電、重工業を主たる業とするスイスに本社を置くABBグループは、100カ国以上に約13万人の従業員を擁し、世界をリードする電力・オートメーション企業である。

◆ABBはなぜ中国で存在感を高められたのか

 ABB(China)社Chairman and Presidentを兼務するClaudio Facchin氏
スマートシティ戦略をアジア地域責任者に聞く

日本経済新聞 2012/1/16

 重電メーカーとして中国で存在感を示すスイスABB社。同社は日本では知名度がいまひとつのところがあるものの、グローバルでは13万人の大企業だ。本拠地はスイスだが、本社には300人しかおらず、経営陣は「飛行機がオフィス」と言うほど世界を飛び回る。
 そのABBが2011年11月23日から、プライベート・イベント「2011 ABB Power World」を開催した。場所は北京。ABBの経営陣はもちろん、中国の国家電力監管委員会、国家能源局、国家核電、国家電網といったそうそうたる公的機関の代表者が今後のエネルギー動向や政策を語り、ABBが中国に深く浸透している様子を来場者に見せつけた。エネルギー分野で、中国でここまで存在感を示す日本企業は少ない。
 ABBはなぜ中国での存在感を高めることができたのか。日本企業が学ぶべきところはどこなのか。ABBにおけるアジア地域の責任者である、同社North Asia RegionのPresident兼ABB(China)社のChairman and PresidentのClaudio Facchin氏に聞いた。
(聞き手は、日経BPクリーンテック研究所 望月洋介)

――今回の「ABB Power World」で、中国でのABBのポジションの高さが垣間見えた。

 ABBの中国における活動は、1992年に販売の合弁会社を立ち上げたのが始まりだ。それから20年間、経験を積んできた。

――中国における企業規模拡大のピッチが早い。

 中国でいまや従業員は1万8000人である。2年足らずで3000人も増えた。今後も中国の国内総生産(GDP)の伸びを上回る勢いで成長を遂げる。そのために人材は製造面でも研究開発面でも必要だ。

――よく言われる懸念だが、中国進出の際に「中国側に技術を持っていかれる」という恐れはなかったか。

 それが中国に投資しない理由にはならない。中国市場にはそれをはるかにしのぐ魅力がある。加えて、中国もさまざまな技術の国際標準の採用に前向きに取り組んでいるということもある。

――中国におけるスマートシティ関連の取り組みを聞きたい。

 中国政府が、第12次五カ年計画で「エネルギーの利用効率を向上させ、環境に配慮する」と明言したことは大きい。当社としては、送配電だけではなくデマンド・レスポンスなど多岐にわたってエネルギー利用の効率化に貢献していく。再生可能エネルギーなど不安定なエネルギーを取り込むときには蓄電ソリューションを持っていることが重要で、デマンド・レスポンスに適合したものを利用している。

 風車は造っていないが、風力発電でカギとなる部品はすべて持っている。コンバーターや発電機、さらに送電網に接続する技術である。電気自動車も造っていないが、電気自動車向けに充電器を提供している。15~20分で充電できる直流版と、家庭で一晩で充電できる交流版である。

 直流に関しては、データセンターの直流給電にも取り組んでいる。将来は家庭の直流給電化も考えたい。太陽光発電もLEDも情報機器もすべて直流なのだから、交流が入ることによる変換ロスを削減できる。

――同じ欧州企業であるドイツSiemens社などは、街全体をとらえたスマートシティ化を推進しているが、ABBのアプローチは異なるのか。

 Siemensのアプローチとは違うと思う。Siemensは発電所、鉄道、照明など、街のインフラを考えた場合のいわゆる「ティア1」の立場にある。街のマスタープランありきの立場である。これに対してABBは「ティア2」の立場だ。カギとなる部品やユニット(キーコンポーネント)によってソリューションを提供していく。

――アジアにおける活動について聞きたい。欧州・北アフリカで「デザーテック計画」(北アフリカの砂漠で太陽熱や太陽光による発電を行い、それを欧州など消費地に送電する計画)が進んでいて、ABBはそこに参加しているが、それと同様のアプローチをアジアで実施するといった考えを持っているのか。

 あくまでもキーコンポーネントでソリューションを提供するスタンスだ。高圧直流送電に関しては世界の半分の既存の設備に部品を提供している。アジア版デザーテックは各国・各地域の政府が考えるべきことで、ABBとしてはいつでも対応できる。そのための技術は保有している。

――管轄するアジア・中国に関して、2011年の3大成果を挙げるとどうなるか。

 第1は、なんと言っても“3.11”への対応だ。ABBの日本社員は、規律を持って顧客のためによく頑張った。震災、津波でダメージを被った火力発電所の復旧など、社長が陣頭指揮をとって日本の組織が主体となって乗り越えた。

 第2は、高圧直流送電だ。China Southern Power Grid社(中国南方電網有限責任公司)から、超高圧の案件を初めて受注できた。広東と雲南省の糯扎渡を結ぶ直流送電システムのコンバーターステーションに、800kVの超高圧(UHVDC)変圧器を納入するプロジェクトである。また、State Grid Corporation of China(国家電網公司)とは、上海と三峡ダム間で4億4400万ドルのプロジェクトを完成させた。

 第3は、スマートグリッドの合弁会社である南京SAC自動化公司を2011年内に発足したこと。相手は国電南京自動化股份公司で、決まったばかりだ。

――2012年に向けた課題は何か。

 世界経済が不安定になっている。欧米発の金融不安だが、日本や中国が乗り越えられるかどうか、大きな挑戦である。このような時期なので、成長とコストのバランスをとりながら舵(かじ)取りしていく。市場が成長しないと判断した場合はコストを削減する。コスト負担を軽くしておくことが、市場が再成長を遂げる際にすぐに動けることにつながる。

――最後に、日本企業に対する期待を聞きたい。

 ABBのロボットや制御システム、過給機などは日本市場に浸透しつつあるが、まだ存在感が小さい。今後、日本企業はグローバル化を図るが、そのグローバル化のサポートができると考えている。

 日本企業の継続的成長のパートナーになることを目指す。5~10年をかけて、戦略的な動きを起こしていきたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1302H_T10C12A1000000/

◆世界を「売り物」にする多国籍企業-企業という名の精神病質者-

 ヨーロッパのナンバーワン実業家と讃えられた元ABB社(電力とオートメーション技術に関するスイスとスウェーデン合併の多国籍企業。世界100ヶ国に進出している)社長のパーシー・バーネヴィック氏がグローバリゼーションについて正直で率直な定義をしている。

「私はグローバリゼーションを次のように定義する。つまり、私のグループ企業が望むときに望むところに自由に投資できる自由、そして、私のグループ企業が生産したいものを生産し、買いたいと思うところから買い、売りたいと思うところで売り、しかも労働法規や社会慣行による制御を可能な限り、撤廃する。そういった自由を享受することである。」

 なんとも身勝手な考え方であると個人的には思うが、そもそも企業とは利己的な存在のようである。

 ブリティッシュ・コロンビア大学の法学教授ベイカン・ジョエル氏は『ザ・コーポレーション-わたしたちの社会は「企業」に支配されている-』(早川書房)の中で、企業の持つ精神病質 的な性質について以下のように言及している。
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 企業とは機関であり、一連の強い原則の集まりであって、その原則が企業人の行動を規定します。その原則とは「営利の追求」です。また、株式会社において会社の所有者は「株主」です。法人 として企業に定められた使命は「株主」に利益をもたらすこと。法的には、経営者および従業員は「株主」に最大限の利益をもたらすための"手段"でしかありません。したがって、株主に利益をもたらさなければ、経営者や従業員は解雇されて当然な存在なのです。

 法律で企業とその所有者が別扱いとなったことで、企業は地域社会に対する責任から解放されました。企業は「法人」として個人に与えられる法的な権利を享受していながら、個人が負ういかなる道徳的義務も負わなくてよいのです。

株主の責任も「有限責任」であり、出資した額以上の損失がないように保護されていますから、必然的に企業は無責任になりがちです。

最近、企業の社会的責任について盛んに言われていますが、ジョエル氏は、新古典派経済学の第一人者といわれるミルトン・フリードマン氏の「経営者の唯一の社会的責任は、株主のために多額の金を儲ける事、これが道徳的な義務だ。社会や環境上の目標を利益に優先する(道徳的に振舞おうとする)経営者は、非道徳的だ。
企業の社会的責任が容認されるのは、それが利益追求の方便である時のみで、偽善が収益に寄与すれば良く、道徳的善意も収益に繋がらなければ非道徳だ。」という発言を紹介し、その限界を指摘しています。

そして、燃料タンクが炎上する危険を知りながらも訴訟された際の費用と安全策をとった場合の費用対効果では訴訟された場合の費用のほうが安くつくという理由でそれを放置したGMの例や、予算削減、リストラ等で安全性、環境汚染を犠牲にし、その結果、爆発事故を起こしたBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)等の実際に起きた事例を数多く提示しています。

 社会的責任と株主の利益が一致していればよいのですが、社会的責任を果たすと、その結果、株主の利益を損なうようなことがあれば、経営者は株主の利益をとらざるを得ません。他者への思いやりは「株主への背任」とみなされてしまうのです。また、利益を上げ続けなければならないという宿命は、経営者から人間的・道徳的な判断を奪っていきます。
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 このような企業の「機関」としての性格を、心理学者であり、精神異常の専門家であるロバート・ヘア博士に診断してもらったところ「精神病質に極めて近い」という結果になったそうだ。ヘア博士の診断結果をみてみる。
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 人々が企業経営者として取る態度や行動の多くは精神病質であるといえます。その理由は「競争相手を叩き潰そうとし、あれこれ策を弄して出し抜こうとし、商品を買ってくれる限り、大衆のことなどたいして気にはしていない」からです。

 また、企業は無責任であるとし、その理由は「自らの目標を追求する上で、他のいかなることも危険にさらしてしまう」こと。
 企業は「すべてを操ろうとし、世論でさえ、その例外ではなく」常にもったいぶっていて、絶え間なく「われわれが一番だ。われわれがもっとも優れている」と言い立てている。

 ヘア博士は、共感を欠き、非社会的である傾向も企業の特徴だといいます。
「企業の行動は、犠牲者のことを心から気にかけていないことを示しています」

 そして、企業はしばしば自らの行動の責任を取ることを拒み、良心の咎めも持っていない。
「企業は違法行為が発覚したら高い罰金を支払い…また性懲りもなく同じことを繰り返すのです。そして実際、たいていの場合、彼らが支払う罰則や罰金は、かき集める利益に比べると微々たるものです。」

 最後にヘア博士は、企業は他者とうわべだけの交流を持つといいます。
「企業の最終的な目的は、大衆に好かれる姿を演じることです。しかし、その真の姿は、およそかけ離れています」

実際、本物の精神病質者は、偏執的な自意識過剰と言う危険な性格を魅力で覆い隠す点で悪名高い。これを企業に当てはめれば、社会的責任が同じ役割を果たしていることがある。企業は偽りの思いやりや気遣いを示せるが、実際、自分のこと以外は何ひとつ考えられない。
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 企業経営者が、人格的に問題があるというわけではない。むしろ経営者と言われる人は学歴も教養も常識もあり、人望もあって、家庭に戻れば良き父であり母である場合が多いだろう。しかし、ビジネスの世界での人格は別なのである。世界的な規模でシェアを奪い合う熾烈な競争を繰り広げなければならない企業経営者は、倒産したライバル会社の社員が自殺しようが、下請けの労働者が過労死しようが、地球環境がとめどなく悪化しようが、気にしていられない。そんなことを考えていたら自分の会社が負け組となって、大切な社員や家族を路頭に迷わせることになってしまう。企業の持つ宿命的な性質の下では、その構成員が個人としてどれほど善良であろうと関係ないのだ。

 このような性質を持つ企業が巨大化し、世界中をまたにかけて活動しているのが多国籍企業である。トップから200位までの多国籍的企業だけで世界の経済活動の約4分の1を占めている。まさに『道徳なき商業』が地球上を席巻し、世界を混乱に陥れていると言えるのではないだろうか。

 かつて日本の経営者たちは「株式会社」という西欧起源の制度を日本的な文脈に翻訳して導入した。日本の会社は、形式上は株式会社でも、実態は社員に生業を提供し、社会に良品を提供することを主な目的とする「公共に奉仕する存在」であろうとした。このような「会社」に慣れ親しんだ日本人は、本来の「利潤追求を唯一の目的」とする企業の姿を知らなかったと言えるだろう。

華やかにみえる"外資系"と呼ばれる企業も、実体は、利益をあげられない者は容赦なく切り捨てられていく厳しい世界である。たとえ日本を襲う"第一の波"である財政破綻を乗り越えても、"第ニの波"であるグローバリゼーションは避けられないであろう。なぜなら日本政府も経営者たちもエコノミストたちも、それが何をもたらしてきたのかという現実は見ようとせず、市場原理・新自由主義を信望している からだ。

自由競争社会では、決して本当に公平な競争がおこなわれているわけではない。「勝ち組」に残っている間は良いのだが、いったん「負け組み」に転落したらどういう目にあうか…。途上国の歴史がそれを証明しているのではないだろうか?

◆国際金融資本に支配される世界

 金融資本とは、銀行資本が産業資本と結合して、経済を独占的に支配する資本形態のことをいう。銀行資本は、いわばバーチャルな口座の中の数字だ。それ自体が何か実質的な富を生み出すわけではない。銀行資本は産業資本と結合することにより、始めて実質的な富を手に入れることができる。

 ところで、どんな事業をおこなうにしても、まずは資本=お金が必要となる。自己資本を持っているお金持ち以外は、銀行から融資を受けるか、株券を発行するか、債権を発行するか、いずれにしても金融機関を通さなければならない。銀行から融資を受ければ、銀行は企業の債権者となる。その経営状態を把握することもできるし、その状態がよくなければ経営について口をはさむ権利がある。つまり、力関係から言えば、銀行>企業となる。

 また、私たちのお金は、銀行に預けると"金融資産"となる。銀行は、預かったその金融資産の"運用権"を持つ。その金融資産を運用するため、銀行は"株券"を購入する。株券は企業の所有権であるから、銀行は企業の経営支配権を持つことになる。つまり、ここでも銀行>企業という関係になる。

 続いて国家と企業の関係についてみてみる。国家の収入は"税金"から得ることになっている。税金がなければ国家経営が成り立たない。その税金は、所得税にしても消費税にしても物品税にしても、企業が営利活動をおこなうからこそ得ることができるものである。また、政治家レベルで考えみても、政治活動および選挙活動には"お金"が必要だ。これもよほどのお金持ちでもない限り"献金"がなければ成り立たない。この献金も企業が営利活動をおこなうからこそ得ることができるものである。

要するに、国家は企業が利益を出さなければ運営ができない"経済的に依存している存在"だから、国家は企業が利益を出しやすい環境を整えなければならなくなる。つまり、力関係から言えば、企業>国家となる。

 こう考えてみると三者の力関係は銀行>企業>国家となる。法律的な見地からみれば、本当は国家が銀行や企業の存在を認め、その営利活動を許しているからこそ銀行も企業も成り立っているのだが、国家が経済の分野を民間に委ねてしまっているので、建前としては国家が最高位にいても、実質的には銀行や企業の方が上位に位置してしまう。つまり、貨幣経済社会においては、お金を持ち、それを操作できる力(=金融力)を持つ者が最も強大な権力を持つことになるのである。

 世界の金融、石油、情報機関、原子力、軍事、政治、食品、メディアを支配するといわれるロスチャイルド一族。次々と有力な実業家、政治家、貴族、他の銀行家や財閥たちと閨閥(妻の親類を中心に結ばれている勢力)をつくりながら、世界の産業界に君臨していくその壮大な物語は、広瀬隆氏の著書『赤い楯-ロスチャイルドの謎』(集英社)に詳細に描かれている。

 経済が政治を動かす現代にあって、有力なマスコミを傘下におさめ、多くの多国籍企業を抱える同家の力は計り知れないものがあり、国際政治を左右する重要な要素である。

以下広瀬隆氏の著書『赤い楯-ロスチャイルドの謎』(集英社)より引用

○ロスチャイルドの歴史

 ロスチャイルド家発祥の地は、ドイツのフランクフルト。ゲットーと呼ばれるユダヤ人の居住地区からこの一族の歴史は始まりました。当時、市民権すらもあたえられていなかったこの一族は、細々と両替商をしながら生活していました。しかし、一族の初代マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドは、古銭集めという共通の趣味から、ドイツの名門貴族ヘッセン家のヴィルヘルム9世と知り合い、やがて一緒にビジネスを始めるようになります。

 時は18世紀後半の戦乱の時代。この時、高利貸しと呼ばれる金融業に身を投じたマイヤーは、戦乱のヨーロッパ大陸を死の商人として駆け回り、莫大な自己資金を得ることに成功します。その後、マイヤーの5人の息子たちがヨーロッパ諸国へと散っていきます。

1764年・・・初代マイヤー・アムシェルがドイツ・ロスチャイルド商会創設
1804年・・・三男ネイサンがイギリス・ロスチャイルド商会創設
1817年・・・五男ジェームズがフランス・ロスチャイルド商会創設
1820年・・・次男サロモンがオーストリア・ロスチャイルド商会創設
1821年・・・四男カールがイタリア・ロスチャイルド商会創設

 パリのジェームズとウィーンのサロモンが協力してヨーロッパ全体をカバーする通信と馬車輸送のネットワークを作り上げ、そこから誰よりも早く得られる情報を利用してロンドンのネイサンが金や通貨の投機をして大儲けするという兄弟ならではの連携プレーをし、今日の国際金融ビジネスの原型を作り上げました。

 この頃は、ちょうどナポレオンの全盛期の頃にあたり、全ての国の国王や実力者が、いつなんどき引っくり返るかわからない時代において、5人兄弟の5カ国連合商会はリスクヘッジとしての性格も帯びていました。

○三男ネイサンの大活躍

 イギリスへと渡ったネイサン・ロスチャイルドは、1810年にロンドン証券取引所の支配者フランシス・ベアリングが亡くなると、新しい支配者となり、世界一の金融王としてイギリスがヨーロッパ同盟諸国に提供した4200万ポンドの資金の半分を調達するまでになりました。

 そして1815年、ネイサンは世紀の大もうけに成功します。皇帝ナポレオン率いるフランス軍と、イギリス=オランダ=プロイセン連合軍が戦ったワーテルローの戦いが起こりました。この戦争は、仮にイギリスがフランスに負ければ、大陸のパワーバランスが崩れ、イギリスの大陸における利権が一気に失われかねないということで、非常に大きな意味を持っていました。

 この時、イギリスは国債を発行することによって対ナポレオン戦争の軍資金を調達していました。イギリスが負けることになれば、当然、イギリスの国債は大暴落してしまいます。投資家たちは、皆、戦争の行方を固唾を呑んで見守っていました。

 そして、戦争終結から数日後、イギリスの国債は大暴落しました。その理由となったのは、ネイサン・ロスチャイルドでした。その日の朝、ロンドン取引所の持ち場にいたネイサンは、青ざめ、疲れきった顔をして、急に国債を売り始めたといわれています。ネイサンは、イギリスに対して莫大な投資を行っており、また独自の情報ネットワークと情報を素早く手に入れるための手段(個人の快速船など)を有していることが知られていました。そのため、ロンドンの市場関係者たちは、「ロスチャイルドが債権を売っているということはイギリスが負けたのだ」と考え、われ先にと債権を売り始め、最終的に国債は大暴落したのです。

 しかしながら、実際はナポレオンがイギリスに敗北。当然、戦勝国であるイギリスの国債は、大暴落した次の日には、イギリス勝利の情報とともに暴騰しました。しかし、その時はネイサンがイギリス国債を大量に買い漁った後だったのです。誰よりも早く、そして密かにイギリス勝利の確かな情報を手に入れていたネイサンは、イギリス国債を売りまくり、イギリス敗北を偽装するかたわら、秘密の代理店を使って、紙屑同然の値段の国債を買いまくっていたのでした。

 この出来事により、多くの投資家と、ほぼ全ての名門の家系が破産し、対してネイサンは約100万ポンドの利益を得たといわれています。これは、当時のお金の価値では天文学的な数字で、この日の儲けで彼の財産は2500倍まで膨れ上がったともいわれています。このことはのちに「連合国はワーテルローの戦いに勝ったが、実際に勝ったのはロスチャイルドだった」という諺となって残っているそうです。

○ヘッジ・ファンドの元祖

 敗戦国フランスがイギリス同盟国に支払う賠償金の総額は7億フランに達しました。この支払いを公債として引き受けたのがフランス・ロスチャイルド商会のジェームズ・ロスチャイルドです。彼は、この公債を売却して得たお金をヘッジ・ファンドと同様に投機家の貸付けに流用しながら、年間50%の利息を稼いだといわれています。

 1820年代に入ると、ほとんどの大国の大蔵大臣がロスチャイルド5人兄弟に買収され、公債を発行して国の借金をつくっては、その2倍近い金額をロスチャイルド商会に支払うという取引がおこなわれました。相争うイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリアの5カ国の対立構造の隙間を巧みに泳ぎ回り、プラスとマイナスの両者に投資して、必ずトータルでプラスにするという今日のヘッジ・ファンドの手法で、利益を一手に独占したのです。

○巨大化する資本

 1822年、兄弟5人が揃ってハプスブルグ家のオーストリア皇帝から男爵位を授与されました。当時、迫害されていたユダヤ人としては異例の出来事です。当時のヨーロッパ諸国のすべてがロスチャイルド商会をあてにするようになり、ヨーロッパ全土の王室がロスチャイルド家にお金を借りにきました。

 そうした結果、1815年当時、5つのロスチャイルド商会の資産総額は333万フランでしたが、3年後には4200万フランとなり、10年後には1億1840万フランにも膨れあがりました。この額は自己資本だけの控えめな計算で、実際は1億6500万フランを超えていたといいます。このうちパリ・ロスチャイルド商会の推定資産は3700万フラン。パリ第2位のラフィット銀行が700万フラン。ナポレオンが設立した発券銀行であるフランス銀行でさえ6000万フランの時代ですから、ロスチャイルド商会の総資産1億6500万フランがいかに大きかったかがわかります。

○世界に広がるロスチャイルド一族

 その後、ロスチャイルド家は世界経済、ひいては世界史に対して、密かに大きな影響を与えていくことになります。

 1836年、ネイサン・ロスチャイルドは58歳で死亡しましたが、翌年、フランクフルト・ロスチャイルド商会は米国に代表者としてオーガスト・ベルモントを派遣しました。オーガストは黒船で浦賀に来航したペリー提督*1の娘と結婚。ペリー家はモルガン家と結びつきボストン財閥を形成します。また、オーガスト・ベルモントの息子オリヴァー・ベルモントが大富豪ヴァンダービルト家の元夫人と結婚。着実に米国社会に入り込んでいきます。*2

 ちなみに、太平洋戦争勃発まで駐日米国大使を務めたジョセフ・グルーも、ペリー一族でした。
また、ロスチャイルドは、もう一人の代理人ジェイコブ・シフのクーン・ローブ商会を通じて、ロックフェラー、ハリマン、カーネギーらに資金を提供して、これらを巨大財閥に育成しました。
ユダヤ人嫌いで有名なJ・P・モルガンもロスチャイルドから資金提供を受けて育てられた財閥だったのです。

 ネイサンの息子ライオネルの時代に、ロンドン・ロスチャイルド商会は18ヶ国の債券16億ポンドを取り扱っていますが、これは現在価値でいうと、ほぼ10兆円にも達する金額です。彼らはロシアに君臨した女帝エカテリーナ二世の後継者であるアレクサンドルと皇帝二コライの財政にも入り込みます。

 パリの末弟ジェームズはフランスの8大鉄道で12の重役ポストを占めて鉄道王となりました。彼が1868年に死去した時の遺産は6億フラン以上。6億フランは、フランス国内の他のすべての金融業者の資産総額より1億5000万フランも多いと推定されています。

○史上最大の大富豪

 ロスチャイルド商会は、オーガスト・ベルモントの活躍でアメリカに広大な利権を広げ、ロンドン一族も国際的な事業に乗り出しました。1875年エジプトがスエズ運河の株を売りに出そうとしているのを知ったイギリスは、フランスに先手を打って急いで購入しようとしましたが、イングランド銀行からお金を引き出すには国会の承認が必要でした。一刻を争う事態に当時の首相ディズレリはニューコートのライオネル・ロスチャイルドのもとに急使を飛ばし「明日までに400万ポンドを貸してください」と頼みました。ライオネルが「担保は」と尋ねると「イギリス政府です」と使いが答えたので「結構です」と言って、たちまちポンと400万ポンドを揃えて17万6000株を購入し、イギリスがスエズ運河の最大株主となったといいます。

 ちなみにイギリスの三枚舌政策*3として悪名高い、パレスチナでのユダヤ人国家建設を約束した「バルフォア宣言」*4をイギリス政府に行わせたのは、このライオネルでした。

 19世紀の100年間でロスチャイルド一族が得た富は、4億ポンド超えると推定されています。大英帝国の歴史上、最大の富豪はヴィクトリア女王でしたが、女王の資産は最大でも500万ポンドと推定されています。ロスチャイルド家は、全員がヴィクトリア女王の何倍かを所有していたのです。4億ポンドは現在価値でいうと800億円になります。それから100年間の利回りで、時価の変化をまったく無視しても、自動的に現在では200兆円に増大していることになります。

○日露戦争とロスチャイルド

 ロスチャイルド家は日本の歴史にも影響を与えています。20世紀初頭、朝鮮半島の利権の対立から、日本は大国ロシアと戦うことになります。もし、負けることになれば、朝鮮半島はロシアの手に渡り、日本が列強の仲間入りを果たすことを阻まれるどころか、他のアジアの国々のように、日本も列強の植民地の一つになりかねません。負けることは許されませんでした。しかし相手は大国のロシア。戦争当初からの日本の目的は「ロシアと引き分ける」ことだったそうです。

 新興国であった日本に、ロシアのような強大国と争うだけの資金力があるはずもなく、当時の日銀副総裁、高橋是清は、戦争の資金集めにアメリカやヨーロッパを奔走しました。この時、日露戦争において、日本が勝つと考えていた人はほとんどおらず、アメリカでの資金集めに失敗した高橋はヨーロッパへ行き、ロスチャイルド家に援助を要請しました。ロスチャイルド家はロシアの南下政策をよしとせず、また、ユダヤ人を迫害する傾向のあるロシアを嫌ってはいたものの、ロシア国内にバクー油田の利権などを抱えており、表向き全面的な協力をすることはありませんでしたが、それでも高橋の目標額の半分である500万ポンドを負担してくれました。

 高橋に大きな援助をしたのはヤコブ・シフというユダヤ人でした。クーン・レーブ商会を率いる彼は、高橋に500万ポンドという多額の融資を行い、他のユダヤ人にも日本国債を買うことを勧めました。最終的に高橋は、日露戦争中8200万ポンドもの戦費を調達します。

 ところで、このシフですが、実はロスチャイルド家につながりを持つ人間でした。高橋にシフを紹介したのも、他ならぬロスチャイルド家でした。ロスチャイルド家は日露戦争中、シフを通して裏で日本国債を買い漁り、最も利益を上げたのです。

○現在のロスチャイルド

 第一次世界大戦後の時期は、ユダヤ人にとって悪夢のような時期であったといえますが、ロスチャイルド家にとってもそうでした。実際、大東亜戦争後、ロスチャイルド家の五人兄弟の家系の内、本家が残っているのはイギリスとフランスだけでした。そのため、第二次世界大戦後、一族は没落したといわれています。しかし、実際の所はどうなのでしょうか。

【通信】
 タイムズ(新聞)
 ザ・サン(新聞)
 ロイター通信(通信社)、AP(通信社)※世界の情報はこの2社から発信。
 ABC・NBC・CBS放送(アメリカ三大ネットワーク)

【石油】
 ブリテッシュ・ベトロリアム(石油会社)
 ロイヤル・ダッチ・シェル(石油会社)

【金属・重工業】
 ビッカース (兵器)
 ダッソー(兵器)
 アームストロング(兵器)
 シュットーデル(兵器)
 ミノルコ(金属)
 モンド・ニッケル
 モンド社(アルカリ)

【その他】
 フィリップ・モリス(米最大のタバコメーカー)
 ローマ・ブーラン(仏最大の総合科学・製薬メーカー)
 デビアス(鉱物会社=ダイヤモンドを独占)
 リオ・チント・ジンク(鉱物会社=金・ウランをほぼ独占)

【食品】
 ネッスル(コーヒー)
 ユニリーバ(食品)
 ブルックボ ンド(紅茶)

【銀行・保険】
 フランス銀行
 イングランド銀行
 パリ国立銀行
 スエズ金融
 香港上海銀行
 ウェストミンスター銀行
 ルイ・ドレフェス商会
 ソロモン・ブラザーズ
 リーマン・ブラザーズ
 カナダロイヤル銀行
 アラブ投資銀行
 モントリオール銀行
 ジェネラル銀行
 ブリュッセル・ランベール
 ウェストバンク
 etc.

これらの会社は有名な多国籍企業ですが、全てロスチャイルド系の企業です。

 他にも、世界最高級ワインとして名高いシャトー・ムトン・ロチルドはロスチャイルド家のワインであること(ロチルドはロスチャイルドの仏名、ちなみにロスチャイルドは英名で、ロートシルトが独名で"赤い楯"を意味します)は、非常に有名です。また、ロンドンで世界の金の価格を毎日決めているのもロスチャイルド一族の人々です。

○伝説は続く

 1949年6月30日にパリ証券取引所で一つの事件が起こりました。その日、何の理由もなく、リオ・チント・ジンク、ロイヤル・ダッチ・シェル、ル・ニッケル、デビアスという4大銘柄が、一斉に大暴落したのです。
原因はギイ・ロスチャイルドの父エドゥアールが81歳で死去したことにありました。パリ・ロスチャイルド銀行の主だったエドゥアールとはいえ、この高齢で実業に関与しているはずもなく、無関係なはずだったのですが、彼の死去と株価は遺産相続人にとって重大な関係を持っていました。遺産にかかる相続税のうち、エドゥアールが保有していた株への課税は、死亡時の証券の時価によって算定されるからです。

4大銘柄はロスチャイルド株であり、一族が持ち株の価値を暴落させることによって、遺産相続にかかる税金が大幅に抑えられたのです。翌日には、一族が買い戻し、株価はたちまち回復しました。

 以後、ロスチャイルド一族は現在の世代に継承され、さらに新しい屋敷と別荘を次々と建設してきました。1901年に閉鎖されたフランクフルト・ロスチャイルド銀行は、1989年、ほぼ90年ぶりにオープンし、かつてのロスチャイルド邸の敷地に隣接して、ヨーロッパ中央銀行が建ち、99年1月1日にヨーロッパ統一通貨ユーロが誕生しました。

このロスチャイルド一族の歴史だけをみても、いかに国家が金融資本に頼り、国政を左右されてきたのかがご理解いただけると思います。ロスチャイルド家だけでなく、ロックフェラー家(石油王)、モルガン家(金融王)、カーネギー家(鉄鋼王)、デュポン家(死の商人)、ヴァンダービルト家(鉄道王)、アスター家(不動産王)、等々、世界の大富豪の多くは1800年代に生まれ、国家をも超えるその莫大な資金が、今も世の中に多大な影響を与え続けているのです。      

*1:ペリー提督の弟ナサニエル・ペリーの孫娘ジョセフィーンの夫は、2代目ジュニアス・スペンサー・モルガンといい、全米一の金融王J・P・モルガンの甥でした。彼らが形成したボストン財閥ペリー家の子孫ウィリアム・ペリー氏が、1994年からクリントン政権の国防長官となりました。

*2:ロスチャイルド商会アメリカ代表となった銀行家オーガスト・ベルモントは、のちにベルモント商会を設立。大富豪となり、1856年には民主党の党首にまで上りつめ、約20年間、その地位にとどまりました。ベルモント商会は、代々同名の長子であるベルモント一族によって経営され、オリヴァーの兄にあたる2代目は30を超える企業と銀行で社長と重役を務めました。1904年にニューヨーク市に開通した最初の地下鉄は、このロスチャイルド商会の資金で建設され、大リーグでニューヨーク・ジャイアンツの前身となったメトロポリタンも、この2代目ベルモントの資金で創設された野球チームです。4代目オーガスト・ベルモントは投資銀行ディロン・リードの社長と会長を1973年まで10年以上に渡り務めました。そして、この4代目がディロン・リード社で長いあいだ育て、後継会長に据えた人物がニコラス・ブレイディー氏で、ブレイディー氏は88年からレーガン政権、89年からブッシュ政権の財務長官となりました。

*3:英国は大戦を有利に進めるために、アラブ人の民族独立運動を利用し、オスマン=トルコ戦にアラブ人を使おうとした。戦争協力を条件に英国の高等弁務官マクマホンが、アラブ社会で最も権威ある人物だったメッカの知事フセイン(ヨルダン国王の祖先)に対し、地中海岸の地域を除くオスマン=トルコ領内のアラブ人居住地に、アラブ独立国家を建設することを許可。この協定により、戦後、ヨルダンとイラクにフセインの息子兄弟を王とする国を建国。一方で、英国外交官のマーク・サイクスと、フランス外交官のジョルジュ・ピコは、オスマン=トルコ帝国の領土のうち、アラブ人の領域を南北に分割し、北をフランス、南を英国が支配する秘密合意を結んでいた。この協定により、戦後、北の仏領にはシリアとレバノンが作られ、南の英領にはイラク、ヨルダンとイスラエルが作られた。さらに、英国はユダヤの大財閥、ロスチャイルド家に対しても戦争のための資金提供を求めて「シオニズム運動」の支持を約束した。

*4:第一次大戦中、イギリスが、外相バルフォアの名前で、シオニスト連盟会長ロスチャイルド卿に送った書簡の中で「パレスチナにユダヤ人の民族的郷土を建設する」ことに同意を示したもの。ただ、同時にアラブ人に主権の存在を認め、かつイギリスの植民地としたことで、その後の混乱の元となり、パレスチナをめぐる今日の混乱の直接的な要因となりました。ちなみに、この混乱の原因をつくったマクマホン、マーク・サイクス、ジョルジュ・ピコ、バルフォアの四人は、なんと全員がロスチャイルド一族だったのです。
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◆国際金融資本に支配される世界

 日本語で紙幣と手形は違うことばで表現されるが、英語では紙幣も手形「notes」「bill」「draft」である。つまり、ドルというお金の正体は、米国政府が発行する国債を担保に、ニューヨーク連邦準備銀行(FRB)が政府に貸し付けた手形=債権証書なのだ。

 たとえば、米国政府が1億ドル必要だとする。そうすると連邦準備銀行は、米国財務省から国債を購入し、政府の口座に1億ドルを振り込む。この1億ドルは誰かの口座から借りてきて振り込んだお金ではない。連邦準備銀行が何か実物的な資産を提供しているわけでもない。ただ、米国政府の口座に1億ドルと記入するだけである。連邦準備銀行は口座に数字を記入するという行為だけで"無"から1億ドルを創造するのだ。そして、政府は1億ドルを受け取り、公共事業等の出費として米国社会に1億ドルが流れていく。

 さて、政府は時が来たら返済時に利子をつけて返さなければならない。仮に利子をつけて1億500万ドルを返済するとする。米国政府は国民から税金を集め、1億500万ドルを返済しなければならない。しかし、世の中に出回っているお金は1億ドル。500万ドル足りない。政府が1億500万ドル返済するには、新しく国債を発行し、世の中に流し、回収するしか方法はない。一度、財政規律を踏み外した政府の借金が規則的なリズムで大きくなっていく理由がここにある。

 銀行は"無"からお金を生み出し、国民はそれに対して利息を支払う義務を負う。また、政府は財政赤字を積み上げていく。そして、このマジックのようなお金を使って世界中から米国に実質的な富が流れ込んでいく。その利益が最終的には国際的な金融資本に流れ、銀行家は『労働なき富』を築き上げていく。これって何だかヘンじゃありませんか?

 さて、ここで再度「国家」というものについて考察してみたいと思う。社会学者マックス・ウェーバーは、著書『職業としての政治』の中で「正当な暴力を独占し得る唯一の組織、それが国家である」と定義した。 正当な暴力には「警察力」「処罰権」「交戦権」の3種類があるが、この権限に基づいて国家は法を遵守させることができ、また国民を守る*1ことができるのである。

 ただ、「警察力」「処罰権」「交戦権」を行使するには、警察所、裁判所、軍隊等に人を雇わなければならない。その費用は原則的には"税収"によってまかなわれる。現代では企業が営利活動をしなければ、税収を得ることはできない。また、戦争のような非常時には税収だけでは足りず、金融機関に借金をしなければならない。人を雇う費用がなければ、「警察力」「処罰権」「交戦権」を行使することはできないのだから、法的には国家の方が上位に位置していても、経済の分野を切り離し民間に委ねている現代国家にとって、企業や金融機関が利益を出せるようにせざるを得ないわけである。しかし、よく考えてみるとおかしな話ではないか。

先に触れたように、国家はお金をつくる権利を持っているのである。なぜ自分たちでお金をつくらず、企業の利益や金融機関からの借り入れに頼るのであろう?それは、一言でいえば「国家の運営者が、お金のことを知らなかったから」としか考えられない。お金は常に謎につつまれた神秘的な存在であった。それがどうやってつくられているか、どうやって消えていくか、一般的にはほとんど知られていない。多くの人は、お金は政府がつくっているものと誤解しているし、紙や硬貨でつくられたものがお金だと考えている。そして、働ければ貰えて、それでいろいろなモノを買うことができるくらいの近視眼的な認識しか持っていない。

お金が神秘的なものであるかのような誤解は、銀行家・経済学者・エコノミスト等によってつくられてきたものである。実際には、非常にシンプルで、かつ、それを知らない者を利用するような詐欺的な方法がまかり通ってきたのである。

*1:統計の専門家ハワイ大学のR.J.ランメル教授の著書『政府による死』によれば、国家が20世紀の100年間に殺した人は、2億人を越えている。殺されたのは外国人よりも自国民の方が多く、外国人は約7000万人、自国民は約1億3千万人。このうち、兵士は約3400万人、一般市民は約1億7000万人となっている。この数字をみると、国家は必ずしも国民を守っているわけではないようだ。
その中でも飛び抜けて多くの自国民を殺したのは「毛沢東」である。

◆外国資本が所有する米国中央銀行FRB

 連邦準備制度理事会(FEB)の理事は合衆国大統領によって任命されるが、理事会の実際の業務の管理は、理事と協議しつつ連邦諮問評議会が行う。

 連邦諮問評議会は、1914年1月7日に開かれた連邦準備制の組織委員会で選定された12の特権的都市*1の「金融地区」連邦準備銀行の役員によって選出されるが、『連邦準備法』に基づき一般には公表されていない。

 全米12の地区連邦準備銀行は「金利を設定し、公開市場操作を指揮することによって米国通貨の日々の供給と価格をコントロール」することができる。

 12ある地区連邦準備銀行の中で最大の銀行が『ニューヨーク連邦準備銀行』である。米国の金融政策である金利や通貨の数量と価値、および債権の販売は、実質的には『ニューヨーク連邦準備銀行』が決定している。

 1914年、当初『ニューヨーク連邦準備銀行』は、20万3053株を発行し、『ナショナル・シティ・バンク』が最大の株数3万株を取得。『ファースト・ナショナル・バンク』が1万5000株を取得。(この2つの銀行は1955年に合併し、単独で連銀をコントロールすることが可能になった)『チェース・ナショナル・バンク』が6000株、『マリーン・ナショナル・バンク・オブ・バッファロー』(後の『マリーン・ミッドランド・バンク』)が6000株、『ナショナル・バンク・オブ・コマース』(現在の『モルガン・ギャランティ・トラスト』)
が2万1000株をそれぞれ取得している

*1:ニューヨーク、リッチモンド、ボストン、フィラデルフィア、クリーブランド、シカゴ、セントルイス、アトランタ、ダラス、ミネアポリス、カンザスシティ、サンフランシスコ

FRBのホームページ

http://www.newyorkfed.org/index.html

残念ながら現在のFRBの株主は非公開で、色々な資料から下記の銀行が株主と推測されている。

ロスチャイルド銀行・ロンドン
ロスチャイルド銀行・ベルリン
ラザール・フレール・パリ
イスラエル・モーゼス・シフ銀行・イタリア
ウォーバーグ銀行・アムステルダム
ウォーバーグ銀行・ハンブルク
クーン・ローブ銀行・ニューヨーク
ゴールドマン・サックス・ニューヨーク
シティーバンク・ニューヨーク
チェース・マンハッタン銀行・ニューヨーク。

 つまり、『ニューヨーク連邦準備銀行』は欧米の銀行が株の100%を保有していて、米国政府は1株も保有していない。上記の中でチェース・マンハッタン銀行が米国のロックフェラー系だが、他はすべてがユダヤ系(ロスチャイルド系)と言われる金融機関である。つまり、外国の金融資本が米国の中央銀行を支配しているということになる。