混迷のウクライナ、その歴史的経緯
January 31, 2014 ナショナルジオグラフィック ニュース
広がりを見せるウクライナの反政府運動が、「ウクライナが支持すべきはウラジーミル・プーチン大統領率いるロシア政府か、それとも欧州連合(EU)か」という現在の葛藤と結びついているのは明らかだ。だが、この国の歴史と地理を概観すれば、この問題がなぜ根深いものなのか、東欧と西欧のはざまというウクライナの不安定な位置をめぐる数世紀にわたる争いから、現在の国民感情と混乱がどのように生まれたのかを理解する助けとなるだろう。
国内を分断する線には歴史的背景がある。ウクライナ東部は17世紀後半、西部よりもずっと早く帝政ロシアの支配下に入った。東部ではロシア語を話し、ウクライナ正教を信仰する傾向が強いが、西部一帯ではウクライナ語が使われ、カトリックの影響が濃い。
しかし、異なるのは地理や宗教だけではない。「あらゆる要素を考慮した上で最も大きな分裂といえるのは、帝政ロシアとソビエト連邦の支配を好意的にとらえる人々と、それを悲劇と考える人々との間にある溝です」と、米国のシンクタンク・大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)でウクライナを専門に研究するエイドリアン・カラトニツキー(Adrian Karatnycky)氏は語る。
17世紀、帝政ロシアとポーランド・リトアニア共和国との間の戦争により、国内の亀裂が深まった。ウクライナのうちドニエプル川の東側の土地が、西側の土地よりもずっと早く帝政ロシアの支配下に入ったのだ。その後、東側は産業と石炭産出の中心地「左岸」として知られるようになった。一方、ドニエプル川よりも西側の土地「右岸」はポーランドに支配されることになる。
ロシアの女帝エカテリーナ2世の統治下で、ウクライナ東部のステップ地帯は、石炭と鉄の産出により経済の主要な中心地に成長。田舎で話されていたウクライナ語は皇帝からの布告で2度禁止されたと、カラトニツキー氏は話す(現在ではウクライナ語・ロシア語の両方がウクライナ国内で使われている)。しかし平和は長く続かなかった。1917年の共産主義革命の後、ウクライナは多くの国の例にもれず悲惨な内戦を経験し、1920年にソビエト連邦を構成する共和国となった。
1930年代前半、ソビエトの指導者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)は農民を強制的に集団農場に組み入れるため飢饉を発生させ、その結果、飢餓で数百万のウクライナ人が死亡した。その後、スターリンは東部地域の人口回復のため、大勢のロシア人や他のソビエト連邦の住民をウクライナに移住させた。その多くはウクライナ語を話せず、ウクライナにほとんど縁のない人たちだった。
米国の元ウクライナ大使スティーブン・パイファー(Steven Pifer)氏によれば、このことが「ウクライナ人の愛国感情が、東部では西部に比べて弱い」ことを説明する歴史的な理由の1つだという。
「環境特性地図にもウクライナの地域差を見ることができる。南部と東部がステップとして知られる肥沃な農地を有し、北部と西部は比較的森林に覆われているのが分かる」と語るのは、ハーバード大学歴史学教授で同大学ウクライナ研究所ディレクターを務めるセリー・プロキー(Serhii Plokhii)氏だ。同氏の研究所にはステップ地帯と森林地帯の境界を示す地図があるが、ウクライナを東西に分ける斜めの線が走り、2004年と2010年の大統領選での投票行動を表した地図と「非常に似通って」いるという。
反政府運動が東部にまで広がっていることについて、パイファー氏は「運動が大きく変質している。当初の争点はヨーロッパについてだったが、民主主義と腐敗の一掃をめぐる抗議行動に発展している」とみている。
Photograph by Sergei Supinsky, AFP, Getty Images
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140131005
◆ウクライナ騒乱の黒幕はオバマ政権だった!?ヌーランド国務長官補の通話記録が暴露される!ウクライナの政府上層部を事前に米国が選出!
ソチオリンピックのどさくさを狙い、クーデターで大統領を追放。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-1925.html
◆クリミア住民投票を「完全拒否」 オバマ氏、対ロ制裁強化も
2014年(平成26年)3月13日 47ニュース
【ワシントン共同】オバマ米大統領は12日、ウクライナ新政権のヤツェニュク首相とホワイトハウスで会談した。オバマ氏は会談後、記者団にウクライナ南部クリミア自治共和国がロシア編入を問う16日の住民投票は正当性がなく「完全に拒否する」と強調した。
またロシアがクリミア編入の動きを続ければ、対ロシア制裁の強化は避けられないとの考えを表明。ウクライナ新政権を支持する姿勢を鮮明にし、クリミア住民投票を実施させないようロシア側に圧力を強めた。
ヤツェニュク氏は「ウクライナは現在も将来も西側世界の一部だということを非常に明確にしておきたい」と表明した。
(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014031301001030.html
東チモールの独立で欧米は「住民投票の結果を重視する」と言い、セルビアからのコソボ独立も、スーダンからの南スーダン独立も同じ論法で住民投票の結果を支持した。
それでいながら、クリミアのウクライナからの分離独立には反対するというのは論理的矛盾である。住民の意思を尊重するという原則は、結局、列強のご都合主義に振り回されるのだ。
住民の意思を尊重するのならば、新彊ウィグル自治区もチベット自治区も中国から分離独立しなければなるまい。
by宮崎正弘氏
◆米国のウクライナ新政権支援は「違法だ」 ロシア外務省が声明
2014.3.12 産経ニュース
ロシア外務省は11日、ウクライナ新政権に対する米国の支援は米国内法に照らして違法だと批判する声明を発表した。声明は、ウクライナ新政権は「軍事クーデターや不法な手段」を用いて合法的な旧政権を倒したと指摘、新政権に対する援助は許されないと強調した。米国は新政権を支持する姿勢を鮮明にしており、米ロ間の綱引きは打開の糸口が見えない状況だ。
米国はウクライナ新政権に対する10億ドル(約1千億円)の緊急経済援助を表明済み。12日にはウクライナのヤツェニュク首相をワシントンに迎え、オバマ大統領が会談する。カーニー米大統領報道官は11日の記者会見で「新体制の正統性」を強く支持するメッセージを出すことになるとした。
ロシアのラブロフ外相とケリー米国務長官は11日、ウクライナ南部クリミア自治共和国の情勢をめぐり電話協議した。米国務省のサキ報道官によると、ケリー氏は事態収拾につながるような回答がロシア側から得られていないとの不満を表明した。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140312/erp14031212340008-n1.htm
◆【クリミア発】 ロシア海軍「自沈作戦」 ウクライナ海軍を湾内に閉じ込め
BLOGOS 田中龍作 2014年03月08日
船の右はドヌーズラフスキー湾、左が黒海。水深が浅いため、船体は海上に姿を見せている。漁船のような小型船舶以外は航行不可能になっている。=7日、ドヌーズラフスキー湾出入口 写真:筆者
船は座礁、転覆しているのではない。湾の出入り口を封鎖するため爆破されたのである。ウクライナ海軍が基地を置くドヌーズラフスキー湾。黒海に向かって油壷を逆さにしたように広がる。壺の出入り口は200メートル足らずだ。
ロシア海軍は6日、大型の老朽船(1973年就役=8,565トン、全長173メートル)を爆破してここに沈めた。水深が浅いため船は船腹をみじめにさらしている。湾内のウクライナ海軍艦船は「袋のネズミ」状態だ。海上戦術のひとつである閉塞作戦である。
ロシア海軍が大胆かつ手荒な作戦に打って出たのは理由がある。6日、クリミア州議会で「ロシアへの編入」などを問う住民投票を実施することが決まった。
事態を憂慮したウクライナ新政権は、湾内の海軍艦船をオデッサ港(クリミアの外)に回し、自らの勢力下に置こうとした。ロシア海軍は新政権の動きをキャッチ、機先を制したのである。即日、強硬策を取る。ロシアの本気度がうかがえる。
日露戦争(1904年)での「旅順港閉塞作戦」を思い出す。東郷平八郎元帥率いる連合艦隊はロシア艦隊を旅順港に閉じ込めるため、そして援軍を旅順港内に入れさせないようにするため自らの老朽船を沈めたのである。
閉塞作戦は失敗に終わったが、当時のロシア海軍は胆を冷やしたはずだ。今回、ロシアが連合艦隊にならったのかどうか、知る由もない。
ロシアは一発の弾を撃つこともなくウクライナ軍を無力化している。一人の死者を出すこともなく戦争は終結する方がよい。
沖ではロシア海軍とみられる艦船が偵察にあたっていた。=7日、ドヌーズラフスキー湾岸より 写真:筆者=
http://blogos.com/article/81910/
◆習主席、米に対露制裁への反対表明…電話会談
読売新聞 2014年3月10日(月)
【北京=五十嵐文】中国外務省によると、習近平(シージンピン)国家主席とオバマ米大統領が10日、電話で会談し、ウクライナ情勢について意見交換した。
習氏は、「当面の急務は各国が冷静さと抑制を保ち、情勢をさらにエスカレートさせないことだ」と述べ、ウクライナ問題の「政治的解決」を求め、米国が発令したロシアへの制裁措置に反対する立場を示した。さらに「中国は情勢の緊張緩和につながる提案や計画には開放的な立場だ」とも述べ、ウクライナに対する経済支援などで協力する方針を伝えた。
一方、オバマ氏は、8日に消息を絶ったクアラルンプール発北京行きのマレーシア航空機の捜索・救助で協力を約束。また、1日に中国雲南省・昆明市で起きた無差別殺傷事件の被害者に哀悼の意を伝えた。習氏は「テロは人類共通の敵であり、中国は米国を含む国際社会との協力を強化し、あらゆる形式のテロと戦う」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140310-00000592-yom-int
◆「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年3月7日(金曜日)
通巻第4174号 <前日発行>
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中国のウクライナ投資は200億ドル、捨て金になるか
ロシアとの友好演出のためにはウクライナを見捨てざるを得ない
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昨師走にウクライナを訪問した習近平はヤヌコビッチ大統領(当時)と投資協定に署名し、80億ドルの援助ならびに投資を取り決めた。
ワシントンのシンクタンク「CATO研究所」のドラグ・バンドウ研究員よれば「無駄になる懼れが高まった。そればかりか、中国はウクライナへ過去の投資を見捨てざるを得なくなるだろう」と予測する(FOX ニュース、3月6日)。
過去二年間に中国はウクライナへ200億ドルもの大金を注ぎ込んだといわれる
主目的は農地買収で、開拓した農地へ中国から農民を移民として送り込むのである。ところが、農地買収を契約したとされるウクライナのKSGアグロ社は「中国とは『目論見書』(LETTER OF INTENT)にサインしただけで契約はしていないと言う。
契約が暗礁に乗り上げた理由は「中国の農地買収の究極目的は移民であり、ウクライナは農民の移民を受け入れない。しかも300万ヘクタールの大地を外国へ売却するはずがない。報道されているのは3000ヘクタールの別件である」。
ただでさえウクライナは中国の密航ルートとして活用されてきた。ウクライナからポーランドやチェコへもぐりこむマフィアが斡旋するルートが存在し、いちどEUへ入れば域内の移動が自由になるため、およそ100万人から200万人が、この密航ルートでEU域内へ潜り込んだとされる。
他方、ウクライナ用地の買収はフランスのロスチャイルド系列ドレフェス社が行っているが、これはウクライナ農民を雇用して農作物を生産している。
http://melma.com/backnumber_45206_5990765/
◆ウクライナ混乱に中国は高みの見物
軍事技術は吸収し尽くし、兵器開発への影響は限定的
2014年03月11日 弓野正宏 (早稲田大学現代中国研究所招聘研究員)
ライナで発生した政変の背景にはロシア寄りかEU寄りかという路線の対立があったが、中国の存在も見逃すわけにはいかない。昨年12月にヤヌコビッチ大統領(当時)はデモのさなか中国を訪問して80億ドル分の投資を取り付け、中国側は核兵器を放棄したウクライナ側に安全保障も提供すると確約した矢先である。当時既に騒乱状態になりつつあったとはいえ、3カ月も経ずに政権が崩壊すると誰が想像できただろうか。
ウクライナなしではありえなかった
国防技術の発展
ウクライナの政変について中国国内ではそれほど大きな関心がもたれているようには見えない。もちろん日本でも同様だが、日本と異なる面を探せば、それはウクライナとの関係では軍需産業面についての報道がやはり突出して多いことである。それは中国とウクライナ間で兵器開発において密接な関係が続いてきたからに他ならない。
ウクライナは旧ソ連時代から航空宇宙産業の面で世界に冠たるハイテク技術を持っている。中国との軍需産業分野の協力については昨年盛んに試験航海を行った空母「遼寧」がウクライナから購入した「ワリヤーグ」を改造したものであったことは記憶に新しいだろう。
中国ではここのところ軍備拡張が急速に進み、中でも兵器装備が拡充されている。こうした陰にはロシアやウクライナとの兵器売買や技術協力があったのだ。中国の国防技術の発展にはウクライナなしではありえなかったという論評もある。
とはいえ今回の騒乱に対して中国は現在、高みの見物を決めこんでいる。そうした様子を窺わせる記事を二つ紹介したい。『環球時報』ネット版に掲載されたウクライナの混乱を中国がどう考えているかが窺える「ウクライナの政変は中国の軍需産業に脅威となるか」という記事。そしてもう一つは中国とウクライナの軍需産業における協力関係の変遷を解説する「ウクライナがなければ現在の中国国防の成果はなかったと論評」という記事である。
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記事(1)【2014年2月24 日 環球網(抄訳)】
ウクライナの情勢は2日の間に大きな転換が起きた。ヤヌコビッチ大統領が解任され、反対派は勝利に歓喜し、政権掌握に動いている。
政局の混乱は、この国の最も重要な産業の一つ、軍産複合体に大きな衝撃をもたらし、中国やロシア、インド、パキスタン等の国との兵器取引に影響を与えるだろうか。中国の専門家は、中国とウクライナの間には長期的な戦略上の利益衝突がないため、ウクライナでどの政党が政権を握っても両国の協力関係には大して影響がないだろうとしている。
中国とウクライナの軍需産業協力は「ワリヤーグ」(空母)が象徴する大型プロジェクトのほか、艦船、戦車、航空機エンジンなどの分野で非常に密接である。ウクライナが中国に輸出する軍事技術は約30種類あり、それは航空母艦、大型艦船等の動力系統、大型輸送機の設計から超音速高級訓練機、戦車エンジン、対空ミサイルや高山山地の活動に適したヘリコプターのエンジンにも及ぶ。
「ウクライナ特殊技術輸出会社」は北京やイスタンブール、バンコクに代表事務所を置いて武器の輸出入貿易を請け負っている。2012年の珠海での航空機ショーでは同社のブースは人気を博した。同社は中国側と4隻の大型ホバークラフトの契約を結び、1隻目は既に中国側に引き渡された。(残りを中国側に引き渡すべく港で準備が進められているという報道が3月に入ってからあったばかり:筆者)
「ミニロシア」と呼ばれるウクライナの軍需産業
ウクライナの軍需産業がこれほど発展している理由は、同国がソ連時代の約35%もの軍需産業能力を引き継いだことが大きい。大型の高速戦闘機を除けば、大陸間弾道ミサイルさえも含むあらゆる兵器が注文リストに見られ、軍需産業分野での「ミニロシア」と呼ばれるほどだ。
1991年に独立してから、ウクライナは世界第6位の武器輸出国となり、50あまりの国と取引関係を持っている。ウクライナは2013年にはもともと米国から輸入した武器が主であったタイに121輌の装甲車と50輌の戦車を売りつけた。1992年から2013年にはウクライナの軍需輸出額は70億ドルを超えたが、パキスタンや中国がその対象国だった。
ウクライナの政変がもたらす影響について中国社会科学院の姜毅研究員は、『環球時報』紙のインタビューに答え、ウクライナと中国の間には現実的な利益の衝突はなく、長期的利益や戦略的利益面でも衝突はないと述べている。いかなる党派が政権を掌握しても経済発展が必要であり、軍需産業はウクライナが国際競争力を持つ分野なので、ウクライナと中国が提携するプロジェクトに大きな影響はないだろうと予想している。
記事(2)【2014年1月15日 環球網(抄訳)】
2012年は中国とウクライナの国交樹立20周年の年だった。両国間は既に戦略的パートナーシップを結んでいるが、記念活動は全く盛り上がっていない。4月にウクライナの農業大手ULFと中工国際が40億ドル分の協力契約に調印したことと5月に民間航空機用のエンジンについての全面的協力で契約が結ばれたぐらいだ。
双方はあたかも軍需産業分野の協力を避けているかのようであり、兵器取引には言及されていない。実際には中国はウクライナにとって軍事工業での一番の消費国だが、ウクライナ側といえば、中国が同国にとって一番の軍事技術パートナーとなることを期待していたのだ。
中国はウクライナから欲しい技術は既にほぼ全て手に入れることができた。ただウクライナの軍需産業を知り尽くしたとはいえ、個々の技術分野で両国は依然として協力を続けている。
ソ連時代の友好関係が役立った
中国とウクライナの軍需産業分野での協力はソ連の解体という特殊な時期に始まった。当時、独立国家共同体(CIS)のメンバー各国は政情不安で多くの工場が閉鎖され、多くの専門家は失業し、収入が激減した。米国、ドイツ、イスラエル、韓国、シンガポールなどの研究機構は専門家をロシアやウクライナに派遣して好条件で人材リクルートを図った。
中国にとっては(ソ連が崩壊してからも:筆者)ソ連時代の友好関係が役立っており、ソ連に留学経験のある学者が友人に連絡を取ることでトップクラスの専門家たちが中国にやって来るようになった。彼らの多くは中ソ友好を重視し、高い経済的要求もせず、技術や材料を惜しげもなく提供した。
中国政府はソ連の軍需産業に従事した人材をリクルートすべく「二つを受け入れるプロジェクト(双引工程)」を起動させて独立国家共同体の人材と技術の導入に着手した。当時の李鵬総理は、わが国にとって(崩壊したソ連からの人材獲得は:筆者)千載一遇のチャンスであり、これを見逃す手はないと指摘している。中国は2002年までの10年間にロシアや独立国家共同体から専門家1万人と2000件超の技術を獲得した。
2008年に北京オリンピックを開催することが決まると契約数も増えた。欧米の安全保障専門家の分析によると、このころ「中華イージス」艦の設計に着手した。
中国のミサイルが赤外線誘導からレーダー誘導まで飛躍したのはウクライナによる支援が欠かせなかった。中国はウクライナのレーダーミサイルを改良し、多目標攻撃能力と全天候作成能力を備えた中距離ミサイルを開発した。
航空業界では2008年に中国航空工業第二集団とアントノフ社が北京に研究開発センターを設立して輸送機の研究開発に着手した。2011年に陳炳徳総参謀長がウクライナを訪問し、軍事技術協力のメモランダムに調印した。
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【解説】
ウクライナの騒乱に中国が高みの見物を決めこんでいる原因の一つには誰が政権を取っても欧州とロシアの狭間で微妙な舵取りを求められるウクライナにとって中国が大切であることはどの政権でも変わらないという自信があるようだ。そしてもう一つは本記事で紹介したようにウクライナからはある程度の技術はほとんど吸収したので今後の兵器開発には大きな影響がないという安堵ともいえるような感覚があるのかもしれない。
現状は「様子見」が現実的か
もちろん中国にとってウクライナとの関係が軍需産業ばかりの側面で語られていいのか、という疑問はあろう。「高みの見物」を決め込んでいるのは、ロシアやEU、米国との関係を壊したくないという配慮もあるだろうし、現状では様子見するしかないという現実的考えがあるかもしれない。他国への「内政不干渉」原則を掲げている道義的側面もある。
また中国にとって体制維持が重要であるから、北アフリカ・中東の政変がジャスミン革命と称されて中国への波及の有無が注目された時のようなことは回避して中国に政変が波及することは何としてでも避けるためにロシアと米国、EUがせめぎあうような地域紛争には触れないのが無難だという考えがあるかもしれない。
天然ガスや小麦やトウモロコシといった穀物取引も現実的問題として存在するが、穀物取引についてはここ数年本格化し始めたばかりで中国の食糧やエネルギー安全保障を揺るがすほどではない。
ウクライナとの協力関係がどのように推移するか今後、引き続き注目する必要があるが、今月末に予定されている習近平主席による欧州(オランダ、ドイツ、フランス)訪問でも直々に何らかの態度表明がされるかもしれない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3667
◆「露への制裁反対」英内部文書、カメラマン撮影
2014年3月5日 読売新聞
【ロンドン=林路郎】英政府高官が持ち歩いていた対ロシア制裁案関係の内部文書をフリーカメラマンがカメラで撮影したところ、「ロンドンの金融街をロシア人に対して閉鎖すべきでない」などと、対ロシア通商・金融制裁に反対する交渉方針が記されていることがわかり、英政府が釈明に追われている。
写真は、官僚が持ち運ぶ文書を素早く撮影し、暴露する腕で知られるスティーブ・バック氏が首相府敷地内で押さえた。英メディアが一斉に転載し、報じた。それによると、国家安全保障会議が開かれる首相官邸へ向かう外務省高官とみられる人物が手にした文書には「当面は貿易制限も支持すべきでない」「(NATOでは)軍事行動に関する議論は妨害すべきだ」とも書かれていた。
これが英政府の最終的な立場かどうかは不明だが、報道について対露議員連盟に属するジョン・ホイティングデイル下院議員は「さらに1~2日状況悪化が続くなら金融業界の利益に影響があっても、あらゆる選択肢を検討すべきだ」と批判した。
http://topics.jp.msn.com/world/general/article.aspx?articleid=3550702#scpshrjwfbs
◆「ブーメランのように返る」 ロシア、制裁に報復示唆
2014/3/8 日本経済新聞
【ワシントン=川合智之、モスクワ=田中孝幸】ロシアのラブロフ外相は7日、米国のケリー国務長官との電話協議で「制裁はブーメランのように米国に返ってくる」と警告した。ウクライナ情勢を巡り米国と欧州連合(EU)が相次ぎロシアへの制裁を打ち出したことに反発し、報復を示唆した。
モスクワの赤の広場で国旗を振り、ロシア政府のウクライナ政策への支持を訴えるデモ参加者ら(7日)=AP
一方、オバマ米大統領は同日、ドイツのメルケル首相と電話協議した。両者は制裁での欧米の連携を確認。ウクライナからロシア軍の撤退を求めることでも一致した。
冬季パラリンピックが同日、開幕したソチを訪れたロシアのプーチン大統領は「パラリンピックでウクライナを巡る(各国の)感情の高まりを沈静化できたらいい」と語り、米国などをけん制した。米国、英国などはロシアへの抗議として政府関係者の大会への派遣を見送った。対ロ関係を重視する日本からは桜田義孝文科副大臣が開会式に出席した。
ロイター通信によるとロシア国営天然ガス企業ガスプロムのミレル最高経営責任者(CEO)は7日、代金の支払いの遅れを理由にウクライナへのガス供給を中断する可能性があると警告した。米国やEUによる制裁への報復としてウクライナへの圧力を強めることを示唆したとみられる。
ロシアのペスコフ大統領報道官は同日、国営テレビに出演し、米国が求めるウクライナ新政権との直接対話を拒否する考えを改めて表明。他方、欧米との新たな冷戦状態に陥る可能性については「非常に望ましくないし、そうはならない」と語った。
一方、自治共和国議会がロシアへの編入を決議したクリミア半島周辺では緊張が高まっている。欧州安保協力機構(OSCE)が半島視察のために派遣した調査団は同日も地元の「自警団」によって現地入りを阻止された。妨害活動には調査団派遣を問題視するロシア側の意向が働いているとみられている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNNSE2INK01_Y4A300C1000000/
◆プーチン大統領がこだわる黒海艦隊の実像は「米国の太平洋艦隊のようなもの」
2014.03.06 zakzak
ロシアが、ウクライナ南部クリミア半島を電撃的に実効支配したことに、欧米諸国は猛反発している。プーチン露大統領が批判覚悟で強行介入したのは、ロシア系住民の保護とともに、クリミア自治共和国セバストポリに拠点を置く黒海艦隊を死守するためだ。黒海艦隊の実像と役割とは。
「ロシアにとって黒海艦隊は、米国にとっての太平洋艦隊のようなもの。司令部のあるハワイが独立して他国の影響下に入れば、米軍は太平洋で活動できなくなる」
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は、こう解説した。
ウクライナ情勢をめぐり、ケリー米国務長官は5日、パリでロシアのラブロフ外相と会談した。会談には欧州各国の外相も参加し、今後数日間、ローマなどで「集中的な協議」を続けるという。
それにしても、プーチン氏率いるロシアの黒海艦隊へのこだわりはすさまじい。ロシア5大艦隊の1つで、『ミリタリーバランス』によると、黒海艦隊には、攻撃用潜水艦1隻、主力洋上戦闘艦5隻などを擁する。
東西冷戦時代、地中海に展開した黒海艦隊が米英両海軍とにらみ合い、接触事故も頻繁に発生した。2008年のグルジアとの戦争では、海上封鎖に向けた行動を取ったほか、今年8月にもシリア情勢緊迫化を受け、主力ミサイル艦が地中海に展開した。
そんな「戦略上の要」の存続を脅かしたのが、ソ連崩壊だった。
ウクライナとの政府間協定で駐留は認められているが、行動の自由は確保しきれていない。04年の「オレンジ革命」で誕生した親EUのユシチェンコ大統領は17年で打ち切る方針を表明した。
その後、親ロシア政権が誕生して租借権を42年まで延長したが、今回の政変後に釈放され、5月の大統領選に出馬する意向を示しているティモシェンコ元首相は、英BBC放送のインタビューで「(黒海艦隊は)戦争の根源だ」といい、艦隊撤退を求めている。
「偉大なロシアの再興」を使命と考えるプーチン氏はどうするのか。
前出の世良氏は「国際世論が反対するからといって、プーチン氏は簡単に(黒海艦隊の基地)セバストポリを明け渡すことはない」と断じている。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140306/frn1403061532003-n1.htm
2014-03-04 三橋貴明
『露軍侵攻は「戦争の一歩手前」 ウクライナ暫定首相が警告 米は「露がクリミア半島完全掌握」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140303/amr14030312160002-n1.htm
ウクライナ暫定政権のヤツェニュク首相は2日、首都キエフで記者会見し、「ロシア軍の侵攻は私たちの国に対する宣戦布告と同じだ」と述べ、「惨事(戦争)の一歩手前にある」と警告した。米メディアによると、米政府高官は記者団に対し、ロシア軍部隊がウクライナ南部クリミア半島を「完全に掌握した」との認識を明らかにした。
ヤツェニュク首相は「もし、プーチン(ロシア大統領)が隣接する友好国ウクライナとの戦争を始める大統領になりたいのなら、もう数インチのところまできた」と語った。「ロシアは今すぐに軍を撤退させなければならない。国際社会はウクライナの領土保全と国家統一を支持していると信じる」と強調した。
暫定政権は2日、ウクライナ海軍のベレゾフスキー総司令官が、親ロシア派のクリミア自治共和国に忠誠を誓ったことから解任した。同総司令官は、ヤヌコビッチ政権に解任されたイリン総司令官に替わって1日に任命されたばかり。
ロシアのメディアによると、クリミア半島南部セバストポリの海軍参謀本部はロシアの特殊部隊がすでに掌握。特殊部隊は同半島にある複数のウクライナ軍駐屯地を包囲し、「投降」を呼びかけているという。米政府高官は、半島に展開する露軍部隊の規模は「6千人以上」としている。
一方、米国務省は2日、ケリー国務長官が4日にキエフを訪問し、暫定政権の代表らと会談すると発表した。ケリー氏は米国がウクライナの主権や領土的統一を強く支持し、ウクライナの未来はウクライナ国民自身で決められるべきだとの意向を改めて伝える。
米メディアによると、米政府高官は2日、事態の外交的解決を目指す立場を強調し、軍事的な対抗措置は検討していないと述べた。』
昨日も書いた通り、現在のウクライナ暫定政権はクーデターで政権を握ったわけであり、政権としての正当性はありません。むしろ、ロシアに亡命したヤヌコビッチ大統領こそが、今でもウクライナの主権を代表する立場と言えるわけです。
とはいえ、現実には暫定政権の後ろに欧米が付き、クリミア半島や東部に侵攻してきたロシア軍を何とか抑制しようとしています。記事にありますが、本日、アメリカのケリー国務長官がキエフに入り、暫定政権と協議する予定になっています。
それにしても、
「事態の外交的解決を目指す立場を強調し、軍事的な対抗措置は検討していないと述べた」
これが真実の情報だとしたら、まさにパクスアメリカーナの「終わりの始まり」としか表現のしようがありません。いや、別に「軍事的対抗措置を検討している」という必要があるという話ではなく、わざわざアメリカ側が自らカードを一枚手放してしまっているのが問題という話です。
もっとも、ロシア側が有利かといえば、必ずしもそうではなく、現在、ルーブルが暴落中で、対ドルで過去最低値を更新しました。また、ロシアの株式指数であるMICEX指数は、何と一気に11%も下落しています。
【過去十年間のロシア・ルーブルの対ドル推移】
さらに、EUの外相はブリュッセルにで緊急会合を開き、ロシアとの間のビザ(査証)発給手続き簡素化や貿易協議停止を検討していると表明しました。とはいえ、ロシアの天然ガスにエネルギー供給を依存しているEU諸国が、どこまで反ロシアに突っ走れるでしょうか。
現在、EUはガス輸入量の三割をロシアに依存しています。ガスのロシア依存はもちろんEUで問題になっており、アゼルバイジャンからロシアを経由せずに欧州に向かうガスパイプラインが計画されていましたが、完成は2019年で、間に合いませんでした。
いずれにせよ、安全保障は経済より優先することを理解しているプーチン大統領は、クリミア半島が親EUの暫定政権の支配下に置かれることを決して認めないでしょう。エネルギー供給という「武器」を持ち、安全保障確立を経済に優先させる指導者がいる国が「断固たる行動」に出たとき、果たして国際協調主義やグローバリズムは立ち向かいようがあるのでしょうか。
結局のところ、国際協調主義やらグローバリズムやらは、確固たる覇権国(アメリカ)が存在したからこそ、成り立ったという話なのだと思うのです。パクスアメリカーナの終わりは、すなわち現在のグローバリゼーションの終幕であると確信しています。
ところで、パクスアメリカーナの終わりといえば、こちらの話。
『米紙またまた安倍首相批判 「日米関係に深刻な脅威」 NYタイムズ
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140303/amr14030314590003-n1.htm
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は2日、安倍晋三首相の姿勢を「ナショナリズム(国家主義)」と指摘し、日米関係の「ますます深刻な脅威になっている」と批判する社説を掲載した。同紙の社説は、これまで数回にわたり、安倍氏の「国家主義」が危険だと訴えている。
2日の社説は歴史問題に対する安倍首相の姿勢が日本周辺の「地域に対する危険な挑発」になっているとした。米国は日米安保条約に基づき日本を守ろうとしている一方、日中の紛争に引き込まれることは望んでおらず、安倍氏が米国の利益を忘れているとした。
安倍首相が第2次大戦の「歴史をごまかそうとしている」と批判。さらに「彼(安倍首相)と他の国家主義者たちは、いまだに南京大虐殺は全く起きなかったと主張している」との見解を示した。
従軍慰安婦問題をめぐる河野洋平官房長官談話の検証問題にも触れ、慰安婦への「謝罪を撤回する可能性」を指摘した。』
もちろん、上記はアメリカ「政府」の意見でもなんでもありませんが、安倍総理の姿勢を「ますます深刻な脅威になっている」とNYTが断言するわけですから、尋常ではありません。そもそも、安倍総理は別に「国家主義者」でも何でもないでしょう。むしろ、滅茶苦茶「国際協調主義」(今のところ)だと思います。
総理は単に、日本の歴史認識を「事実」に沿ったものに戻そうとしているに過ぎないと思います。
日本の歴史認識について、自国で議論するのは日本の勝手ですし、慰安婦やら南京やら「虚偽の情報」があるわけですから、これを正すのは当然です。それをヒステリックに「歴史修正主義だ!」「国家主義者だ!」と「アメリカ」のメディアが批判する。
ここからは推測ですが、ロシアの他に平気でアメリカの「覇権」を無視しかねない国が、一つあります。もちろん、中国です。
そして、我が国は中国との間に様々な問題を抱えており、これは決して解決しないでしょう。すなわち、日本が軍事力を拡大し、中国との軍事バランスを整え、尖閣諸島に公務員を常駐させるなど断固とした措置を取らない限り、何らかの紛争が発生する可能性が高いわけです。
日中間で紛争が発生したとき、アメリカは日米安全保障条約の有効性を試されることになります。そのとき、万が一にでも大統領が、
「事態の外交的解決を目指す立場を強調し、軍事的な対抗措置は検討していない」
と述べた場合、パクスアメリカーナは完全に終わります。
アメリカには「日本の立場」を回復しようとする安倍政権を嫌悪する勢力が存在するわけです。「中国ロビー」とかそういう話ではなく(そういう話もあるのでしょうが)、日本を封じ込めることで利を得ていたアメリカの「戦後レジーム」というわけです。そもそも、大東亜戦争で日本の「民間人」を大量に殺戮したアメリカは、日本に「正しい歴史認識」をもってもらいたくないという点で、中国や韓国と利益を同一にしているわけです。
いずれにせよ、各国の政治家やメディアの思惑と無関係に、パクスアメリカーナが終わりに向けて動き出したように思えます。今後は、これまでのように、
「安全保障はアメリカに守ってもらえばいいさ」
などと、舐めたことを言っていると、国家存亡の危機を迎えかねない、厳しい時代になるという話です。