この度、「文化庁海外メディア芸術祭等参加事業 ウィーン企画展」に参加させていただきまして、長年の夢であった海外で日本の文化を伝えるという任務を果たすことが出来、
心から企画キュレーターの岡本美津子さん、NHKインターナショナルの皆様、文化庁の皆様に感謝しております。子どもの頃から海外に興味があり、やっと、私の人生の中でその準備が出来、果たせたのだと思いました。 派遣先のウィーンは、私のバイブルの映画「サウンド オブ ミュージック」 の舞台ですし、私がピアノを習い始めるきっかけになった映画ですし、その幼い頃からの音楽の素養が今は、絵画やアニメーションやパフォーマンスをする導線になっていることは間違いないので、死ぬまでには絶対、訪れたい場所でした。 訪れたウィーンは、想像以上に美しくそして快適で人々は情熱的に生きていました。到着して夜景を初めて見た時、その期待を裏切らない美しさに感動しました。今更ながらですが、こんなに古い建造物と共に現代も生活を共にしている人々ってどんな方々なんだろうと思いました。私が滞在させてもらったホテルからは各映画館や、イベント会場や歴史的重要文化財の主要な場所に行くのにすべて徒歩でも30分以内で行けたし、歩くのも風景が美しくて楽しかったです。展示していたギャラリーからホテルまで旧街道を通って楽しみながら移動しました。ギャラリーで初日に私はライブペインティングのパフォーマンスをしました。インカムのマイクをつけ、スピーカーを腰に巻いて両手がフリーの 状態で、この日のために作った衣装を身につけて(衣装制作:ひさつねあゆみ)、歌いながら挑みました。歌いながら描くというのは、初めての試みで、私は、日本の童謡を歌いました。私は、子どもそのものに戻るパフォーマンスをしました。そしたら、いつも描いている作風とは違ってしまったけど、見て下さってる方々は受け入れて下さいました。これは私にとってとても忘れられない大事件になりました。観客の方々がたくさん写真を撮ってくださり、その写真を見てもそれは、自分とは思えなかったです。初めて見る自分でした。私のアニメ作品「パピヨンよし子」をMETRO KINOで上映した後も観客の方々から質問を受けたのですが、それは「映像を作り続けていてその中での心の変化について」というものでした。その時、私は「今までの10年は自分の憧れの女の子像を描いてそれをアニメの中において生命を吹き込んでいたけど、今は、自分自身がアニメの中に入りたくなっています。」 という受け答えをしたのですが自分で自分に愕然と驚きました。そうか、私は、もう理想の女の子になってしまっていた。だから私は、最近、アニメを作っていなかったのだと・・・。この質問のおかげでこれから私が目指すべきアニメーションの方向性が見えました。ウィーンの芸術の核である「退廃美」。これの影響をすごく受けていたんだなと言うことにも改めて気がつかされました。学生の頃、恋や人生の儚さをテーマにしたクリムトとエゴン・シーレには陶酔していましたし、少年期の短い期間だけに活躍できるウィーン少年合唱団や、政務を顧みず、美を維持する事に執着し、年中、旅をして自分に恋した皇妃エリザベートなど、私の心をときめかしてきた事象が、ウィーンにはたくさんあった事に気がつきました。帰国後、エリザベートの絵を描きました。エリザベート博物館で見た当時まだ珍しかった浴槽を皇室メンバーで唯一初めて室内の置かせたお部屋を見た時の印象が絵に色濃く反映されています。 浴室の隣は脱衣所ですが、そこの壁紙が、ジャングルでした。彼女の心の中の、もっと自由に生きたいという渇望が見えるようでした。現代のウィーンの方々にもこの情熱が受け継がれているのかもしれません。今回参加させていただいたTrikcy Women という企画の組織にもとても驚きました。監督、プロデューサー、スタッフ、本当にみんな女性だらけでした。作品も女性ならではの視点に溢れていました。世界中から集まってきたパワフルな作品群を立て続けに観て改めて、自分を客観視することもできました。この映画館でウィーンの方々に書道も教えましたが、すぐ予約がいっぱいになってしまったようでウィーンにはこんなに書道を、日本を知りたい、体験したい方々がたくさんいるんだなと思ってそれだけでまず嬉しかったです。筆も触ったことがない方々14名に教えました。基本的な筆の持ち方や、紙の裏表を教えることはもちろん、墨を硯で擦る時の心構え、この行為や香りによる精神的にリラックスの話もしました。「どうして日本人はそんなに高い精神を保てるのか?」と質問されましたが、これが日本人の普通なのでまたこれをちゃんと解析出来るようになっておきたいです。ウィーンの方々の遊び心ある線が印象的でした。今、私の作品を見て下さった観客の方々何人かとメールでやりとりしています。異文化の方々にどんな風に受けいられたのかを知りたいです。これからも親睦を深めていきたいです。またウィーンに絶対行きたいです。最後に、作品提供してくださったり応援して下さったり、企画に関わって下さったすべての皆様に感謝いたしましてこの体験記を終わらせていただきます。
心より、ありがとうございました。 2017年3月30日 東京にて 真珠子