弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合

2013-08-14 | 日記
懲戒解雇したい事案において,普通解雇すれば有効となりそうなのですが,懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合,どのように解雇すればいいでしょうか?

 普通解雇すれば有効となりそうなものの,懲戒解雇した場合は無効となるリスクがそれなりに高い場合は,使用者としては,懲戒解雇と合わせて普通解雇の意思表示も明示的にしておくべきでしょう。
 当初,懲戒解雇のみを行ってしまったが,訴訟の審理が進むにつれ,懲戒解雇としては無効となる可能性が高いことが判明したような場合も,事後的に普通解雇の意思表示をしておくべきです。
 懲戒解雇としては無効となる可能性が高い事案であれば,本当にそこまで懲戒解雇にこだわるべきなのかどうかという話自体,再検討が必要となるかもしれません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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懲戒解雇通知と普通解雇の意思表示

2013-08-14 | 日記
懲戒解雇を通知した場合に,懲戒解雇の意思表示は,同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。

 この問題は,結局のところ,当該解雇の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり,事案ごとに検討するほかありません。
 懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は,普通解雇であれば有効な事案であっても,懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
 裁判例の中には「使用者が,懲戒解雇の要件は満たさないとしても,当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており,懲戒解雇に至る経過に照らして,使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には,懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる」とするもの(岡田運送事件東京地裁平成14年4月24日判決)もありますが,「使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合」を広く考えることはできません。
 解雇する時点で,普通解雇にするのか,懲戒解雇にするのか,その理由はどのようなものなのかを明確にしておくべきであり,懲戒解雇とともに普通解雇も合わせて行うのであれば,解雇通知書にその旨明記しておくべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為

2013-08-14 | 日記
懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできますか?

 懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることができるかどうかに関し,山口観光事件最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決(労判708号31頁)が以下のように判示してますので,懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為は,「特段の事情のない限り,」懲戒解雇の有効性を根拠付けることはできません。
 「使用者が労働者に対して行う懲戒は,労働者の企業秩序違反行為を理由として,一種の秩序罰を課するものであるから,具体的な懲戒の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって,懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。」
 「これを本件についてみるに,原審の適法に確定したところによれば,本件懲戒解雇は,被上告人が休暇を請求したことやその際の応接態度等を理由としてされたものであって,本件懲戒解雇当時,上告人において,被上告人の年齢詐称の事実を認識していなかったというのであるから,右年齢詐称をもって本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることはできない。」

 懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合は,
① 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決のいう特段の事情があるかどうか
② 過去に行った普通解雇の理由に追加するかどうか
③ 当初の懲戒解雇とは別途,予備的解雇をする場合の懲戒解雇又は普通解雇の理由とするか
等について検討していくことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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懲戒解雇した時点では把握できていなかった懲戒解雇事由に該当する事実

2013-08-14 | 日記
懲戒解雇した時点では把握できていなかった懲戒解雇事由に該当する事実が新たに判明した場合,懲戒解雇の理由に追加することはできますか?

 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決が,具体的な懲戒の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものであり,懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情ない限り,当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないと判示していますので,懲戒事由は,特段の事情がない限り追加することはできません。
 懲戒解雇事由に該当する事実が新たに判明した場合は,
① 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決のいう特段の事情があるかどうか
② 過去に行った普通解雇の理由に追加するかどうか
③ 当初の懲戒解雇とは別途,予備的解雇をする場合の懲戒解雇又は普通解雇の理由とするか
等について検討していくことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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就業規則に懲戒解雇事由が定められていない場合の懲戒解雇

2013-08-14 | 日記
労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,就業規則に懲戒解雇事由が定められていなければ,懲戒解雇することはできないのですか?

 フジ興産事件最高裁平成15年10月10日判決が「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する」と判示していることからすれば,就業規則に懲戒解雇事由を定め,就業規則を周知(従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思えばいつでも知ることができるようにしておくこと。)させておかなければ,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,通常は懲戒解雇することはできないと考えられます。
 もっとも,フジ興産事件最高裁平成15年10月10日判決は,過半数労働組合との労働協約で懲戒解雇事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合や,個別労働契約において懲戒解雇事由が定められているような場合であっても懲戒解雇することができないとまでは言っておらず,これらの場合に懲戒解雇することができないと考えるべき理由もありませんので,私見ではこれらの場合にも懲戒解雇することができるものと考えています。
 私見によっても,就業規則に懲戒解雇事由が定められて周知されておらず,過半数労働組合との労働協約で懲戒解雇事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合でもなく,個別労働契約において懲戒解雇事由が定められてもいない場合には,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,懲戒解雇することはできないことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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