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勤務態度が悪い。

2013-09-11 | 日記
勤務態度が悪い。

(1) 注意指導
 勤務態度が悪い社員は,注意指導してそのような勤務態度は許されないのだということを理解させることが重要です。
 当たり前の話のように聞こえるかもしれませんが,訴訟や労働審判になって弁護士に相談するような事例では,当然行うべき注意指導がなされていないことが多い印象があります。
 勤務態度が悪い社員を放置することにより,他の社員のやる気がそがれたり,新入社員がいじめられたり,仕事を十分に教えてもらえなかったりして,退職してしまったりすることがありますし,金品の横領,手当等の不正受給の温床にもなります。
 長年にわたって勤務態度の悪い社員を放置してきた職場において,新任の上司があるべき勤務態度に是正しようとして反発を買い,トラブルになることが多いところです。
 勤務態度が悪くても長年放置され,態度の悪さが年々悪化してきた社員の態度を改めさせるのは難易度が高く,解雇・退職の問題に発展することも多いですので,勤務態度の悪さが悪化する前に,対処する必要があります。
 こういった社員は,時間をかけて根気強く注意指導していく必要があり,注意指導しても従おうとしないからといって,放置してはいけません。
 上司が注意指導しても成果が上がりにくく,嫌な思いをすることが多いこともあり,勤務態度が悪い社員を放置したままにする上司が多いことも多いことを念頭に置いて,管理職の教育,評価を行っていく必要があります。
 勤務態度の悪さの程度が甚だしい社員については,直属の上司1人に任せきりにせず,組織として対応する必要があります。
 口頭で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,将来の懲戒処分,退職勧奨,解雇,訴訟活動を見据えて,書面で注意指導する必要があります。
 書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟や労働審判になった場合,勤務態度の悪さを改めるよう注意指導した証拠を確保することもできます。
 訴訟や労働審判では,労働者側から,自分の勤務態度は悪くないし,十分な注意指導を受けていないから解雇は無効であるといった主張がなされることが多いところです。
 口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,当該社員の勤務態度の悪さが甚だしいことや十分な注意指導をしたことを立証するのが困難となってしまいます。
 上司・同僚・部下の陳述書や証言だけでは,証拠として不十分です。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。
 面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。

(2) 懲戒処分
 書面で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていきます。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者や上司もいますが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのでは社員にとって不意打ちになりトラブルになりやすいですし,よほど悪質な事情がある場合でない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高いところです。
 そもそも,勤務態度が悪い社員に対して注意指導や懲戒処分ができないようでは,組織として十分に機能しているとはいえません。
 必要な注意指導や懲戒処分を行い,職場の秩序を維持するのは,会社経営者や上司の責任です。

(3) 退職勧奨
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが低い場合には,会社を辞めてもらうほかありませんので,退職勧奨解雇を検討することになります。
 十分に注意指導し,繰り返し懲戒処分を行っており,解雇が有効となりそうな事案では,解雇するまでもなく,合意退職が成立することが多いところです。
 他方,勤務態度の悪さの程度がそれほどでもなく,十分な注意指導や懲戒処分がなされていない等の理由から解雇が有効とはなりそうもない事案,誠実に勤務する意欲が低かったり能力が低い等の理由から転職が容易ではない社員の事案,本人の実力に見合わない適正水準を超えた金額の賃金が支給されていて転職すればほぼ間違いなく当該社員の収入が減ることが予想される事案等では,当該社員に退職届を提出させる難易度が高くなります。

(4) 解雇
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが低い場合には,退職勧奨と平行して解雇を検討することになります。
 普通解雇・懲戒解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
 ① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
 ② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
 ③ 解雇予告制度(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇が禁止されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
 解雇が有効となるためには,単に就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要であり,社会通念上相当なものである必要もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,②解雇権又は懲戒権を濫用したものとして無効となってしまいますし,そもそも①解雇事由に該当しない可能性もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど勤務態度の悪さの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。
 解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 勤務態度が悪い社員の解雇の有効性を判断するにあたっては,勤務態度の悪さが業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,勤務態度が悪い理由,謝罪・反省の有無,勤務態度の悪さを是正するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されます。
 注意指導,懲戒処分等で勤務態度が改まるのであれば,注意指導等により是正すれば足りるのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導,懲戒処分等では勤務態度の悪さが改善されないかどうかが問題となります。
 客観的な証拠がないのに,注意指導や懲戒処分をしても勤務態度の悪さは改まらないと思い込んで解雇するケースが散見されますが,客観的証拠から改善の見込みがないことを立証できる場合でない限り,実際に注意指導や懲戒処分を行って改善の機会を与えた上で,職場から排除しなければならないほど勤務態度の悪さの程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みがないことを確かめてから,解雇に踏み切るべきです。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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遅刻や無断欠勤が多い。

2013-09-11 | 日記
遅刻や無断欠勤が多い。

(1) 注意指導
 遅刻や無断欠勤が多い社員は,注意指導して遅刻や無断欠勤をしてはいけないのだということを理解させることが重要です。
 当たり前の話のように聞こえるかもしれませんが,訴訟や労働審判になって弁護士に相談するような事例では,当然行うべき注意指導がなされていないことが多いというのが実情です。
 従来,ルーズな勤怠管理をしていた職場の場合,従来であれば容認されていた程度の遅刻や無断欠勤をしたからといって,直ちに処分することは困難ですので,今後は遅刻や無断欠勤には厳しく対処する旨伝え,それでも改善しない場合に懲戒処分等を検討していくことになります。
 口頭で注意指導しても遅刻や無断欠勤を続ける場合は,書面で注意指導することになります。
 書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟になった場合,遅刻や無断欠勤を注意指導した証拠を確保することもできます。
 訴訟では,労働者側から,十分な注意指導を受けていないから解雇は無効であるといった主張がなされることが多いです。
 口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,十分な注意指導をしたことを立証するのが困難となってしまいます。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。
 面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。

(2) 懲戒処分
 書面で注意指導しても遅刻や無断欠勤を続ける場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。
 まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていくことになります。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者もいますが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのでは社員にとって不意打ちになりトラブルになりやすいですし,よほど悪質な事情がある場合でない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高いところです。
 そもそも,遅刻や無断欠勤の多い問題社員に対して注意指導や懲戒処分等ができないようでは,会社経営者や上司として当然行うべき仕事ができていないと言わざるを得ません。
 必要な注意指導や懲戒処分を行い,職場の秩序を維持するのは,会社経営者や上司の責任です。

(3) 解雇の検討項目
 注意指導し,懲戒処分等に処しても遅刻や無断欠勤が改善せず,改善の見込みが極めて低い場合には,解雇や退職勧奨を検討することになります。
 解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告制度(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が禁止されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。

(4) 解雇権濫用・懲戒権濫用
 解雇が有効となるためには,単に就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要であり,社会通念上相当なものである必要もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,②解雇権又は懲戒権を濫用したものとして無効となってしまいますし,そもそも①解雇事由に該当しない可能性もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。
 解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 遅刻や無断欠勤が多い社員の解雇の有効性を判断するにあたっては,遅刻や欠勤が業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,遅刻や欠勤の理由,謝罪・反省の有無,遅刻欠勤を防止するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されることになります。
 注意指導,懲戒処分等で遅刻や無断欠勤をしなくなるのであれば,注意指導等により是正すれば足りるのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導,懲戒処分等では遅刻や無断欠勤の頻度が改善されないかどうかが問題となります。
 客観的な証拠がないのに,注意指導や懲戒処分をしても遅刻や無断欠勤は改善されないと思い込んで解雇するケースが散見されますが,客観的証拠から改善の見込みがないことを立証できる場合でない限り,実際に注意指導や懲戒処分を行って改善の機会を与えた上で,職場から排除しなければならないほど遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みがないことを確かめてから,解雇に踏み切るべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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強制執行と源泉徴収義務

2013-09-11 | 日記
解雇が無効と判断され,解雇期間中の賃金の支払を命じる判決を放置していたところ,強制執行されてしまいました。強制執行のため,源泉所得税を源泉徴収できなかったのですから,源泉所得税を納付しなくても構いませんすよね?

  所得税法28条1項に規定する給与等の支払をする者が,その支払を命ずる判決に基づく強制執行により賃金の回収を受ける場合であっても,源泉所得税の源泉徴収義務を負うとするのが最高裁判所第三小法廷平成23年3月22日判決ですので,源泉所得税を納付しなければなりません。
 源泉徴収できないのに源泉所得税を納付しなければならないのは不当だと言いたくなるかもしれませんが,上記最高裁判決が「上記の場合に,給与等の支払をする者がこれを支払う際に源泉所得税を徴収することができないことは,所論の指摘するとおりであるが,上記の者は,源泉所得税を納付したときには,法222条に基づき,徴収をしていなかった源泉所得税に相当する金額を,その徴収をされるべき者に対して請求等することができるのであるから,所論の指摘するところは,上記解釈を左右するものではない。」と判示している以上,やむを得ません。
 使用者としては,源泉所得税納付後,徴収をしていなかった源泉所得税に相当する金額を当該労働者に請求するほかないことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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