(1) 問題社員であることが容易に予想できたにもかかわらず採用してしまう
会社経営者が,問題社員 であることが容易に予想できる応募者を採用してしまうことは珍しくありません。
人手が足りないため誰かを採用しなければならないことはあるでしょう。
しかし,問題のある応募者かもしれないと思ったら,一度立ち止まって採用するかどうかをよく考えていただきたいのです。
「実際に使ってみなければ分からない。」「どの会社も雇ってくれないような応募者を雇用することは日本社会に貢献することになる。」などと自分に言い聞かせて,応募者に対するありのままの評価を打ち消さないで欲しいのです。
もう一度,冒頭でご紹介した新入社員に仕事を教えないまま次から次へと虐めて何人もの新入社員を辞めさせる問題社員のエピソードを思い出して下さい。
会社経営者が守ってあげなければならない「社員」は,その問題社員だけではありません。
会社経営者は,問題社員の同僚,部下,上司など,社員全員を守る義務があることを忘れるわけにはいきません。
本当に,その応募者を採用しても,あなたが責任を持って,他の社員を守ることができますか?
答えが「YES」であれば採用候補となり得るかもしれません。
しかし,「NO」であれば,あなたの会社の大事な社員のため,やせ我慢してでも,採用を思いとどまっていただきたいのです。
(2) 問題社員に注意指導も懲戒処分もせずに放置していた結果,退職者が相次ぐなど事態がどんどん悪化していき,問題社員を辞めさせざるを得なくなる
会社経営者が,「いちいち部下を管理せずに本人の自主性に任せた方がうまく行く。」「うちのような小さな会社で懲戒処分なんてしたら職場の雰囲気が悪くなってしまう。」などと言って,問題社員に十分な注意指導も懲戒処分もせずに放置していたところ,問題が改善されないまま退職者が相次ぐなど事態はどんどん悪化していき,問題社員を辞めさせざるを得なくなることは珍しくありません。
会社経営者としては,「信用していたのに裏切られた。」「我慢に我慢を重ねてきたが,ちょうど水が注がれ続けたコップの水が溢れるように,堪忍袋の緒が切れた。」などと言いたいところかもしれません。
しかし,そのような事案は,初期の段階で会社経営者が問題社員によって他の社員が被る迷惑について十分に配慮していないことが少なくないのです。
問題が大きくなる前に,意識的に問題社員と向き合い,あなたの会社の大事な社員を守ってあげてください。
――――――――――――
弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための労働問題相談サイト