本件は,派遣社員が派遣先の会社で恒常的に長時間の深夜労働を余儀なくされ,うつ病に罹患したために,自殺するに至ったとして,上記派遣社員の母(原告)が派遣先の会社及び派遣元の会社に対し,安全配慮義務違反による債務不履行又は不法行為に基づき上記派遣社員及び母の被った損害の賠償を求めた事案です。
本判決は,原告の主張する諸事情は,うつ病発症の契機となる具体的なエピソードとしては十分な内容ということはできず,これらのエピソードのみをもって,ICD-10に記載されている典型的症状の「抑うつ気分」や「活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少」,一般的症状の「自己評価と自信の低下」,「罪責感と無価値感」等があったとはたやすく認めがたいなどとして,原告の請求を棄却しました。
原告は,長時間労働,深夜労働などによりうつ病に罹患したと主張していますが,本件程度の時間外労働により直ちにうつ病を発症させるものとまでは断定しがたく,恒常的な深夜労働によっても慢性疲労が生じていたとは認められないとしています。
本件結論としてはこれで妥当なのかもしれませんが,個人的には,時間外労働時間が長すぎるという印象はあります。
年明けから自殺した3月27日まではそれほどでもありませんが,
前年10月 91時間15分
前年11月 81時間02分
前年12月 103時間09分
の時間外労働時間が認定されています。
仮に,年末年始に自殺していたら,どういう結論になっていたのでしょう?
うつ病に業務起因性がないとしても,若くて体力のある人でないと,なかなか続けることはできない仕事かもしれませんね。