健康長寿の窓口 (タロー8の脳腫瘍闘病記改め)

2009年に乏突起神経膠腫の手術を受け15年が経過したことを機にブログをリニューアル、健康長寿の情報を発信していきます。

健康食品の情報を読み取る方法

2024-06-12 17:00:03 | 日記

 昨日の投稿で、健康食品の購入前に情報を確認することをお伝えしましたが、今朝の新聞広告で情報を読み取る勉強にピッタリの事例がありましたので紹介します。

 大正製薬さんの機能性表示食品です。消費者庁のデータベースで届出者名「大正」、商品名「おなかの脂肪が」で検索すると「おなかの脂肪が気になる方のタブレット(粒タイプ)」と「おなかの脂肪が気になる方のタブレット(粒タイプ)a」の2商品がヒットし、前者は2024年3月4日に撤回されていることが分かります。撤回の理由は「販売中止のため」と記載されていますが、中止の明確な理由は分かりません。ここでは中止理由は、製品購入前の確認事項として重要ではないと思いますので、後回しにします。

 広告でまず目に飛び込んでくるのは①キャッチコピーではないでしょうか。「体重が気になるなぁ、健康に気を付けたいから運動するんだけど続かないんだよなぁ」と思っている人を引き留めるものです。引き留められた人は「どんな製品?」とパッケージに目が向き、まず②製品名を確認するでしょう。この製品は製品名を見ただけで自分が求めているものだと気づくでしょう。そして成分は何?と思った方は、③「葛の花イソフラボン」ということを確認します。ここで、「テクトリゲニン類として」まで確認した人はどれくらいいるでしょうか。そんな難しいカタカナ書かれても分からん!・・・でも、科学的に正しいことを表示しなければならないので、ご勘弁を。

 ふむふむ、実際、どんな効果なの?って思われた方は④で「エネルギー消費を高める、体重・おなかの脂肪・ウエストサイズを減らす」ものだと認識します。この製品は、科学的に根拠があればその機能を表示しても良い、という⑤機能性表示食品なので、④のような機能が表示できるのです。そこが、一般のいわゆる健康食品とは違うところなのです。

 ちょっと待って!「・・・のを助けます」まで読んでますか?

 高める、減らすと言えば治療効果を謳っていると誤解しかねません。治療(病気を治す)効果を謳えるのは医薬品だけに認められているものです。この製品は医薬品ではなく食品です。健康な人が健康を維持・増進することを目的として摂取するものなので、「助ける」と書けば誤解を招かない、ということなのです。

 サプリメント形状(容器包装に入れられた加工食品)でありながら食品であるので、⑥「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」とパッケージに表示しています。とても小さな字ですが。。。機能性表示食品では必須の定型文言ですが、一般のいわゆる健康食品でも記載されています。なお、食事のバランスには栄養成分を確認する必要があります。この新聞広告では確認できませんが、パッケージ裏面に表示されています。また、広告では、パッケージ以外に「適度な運動、バランスのいい食事とともに対策しましょう」と記載しています。この理由は、憶測ですが、機能性の科学的根拠に関係していると思います。それは、後程。

 ご丁寧に⑧で紅麹サプリではないことを強調していますね。「脂肪」というだけで紅麹を思い浮かぶ人がいることを想定しているのだと思いますが、いつまで続くのでしょうね。笑っては不謹慎ですが、ある意味悲しくもあります。

 

 この広告ではパッケージは表面のみが使われていますが、機能性表示食品の詳細は裏面に表示されています。新聞広告であっても、裏面に表示している項目のうち記載する必要のものがこれです。届出された商品名「おなかの脂肪が気になる方のタブレットa(粒タイプ)」、届出番号「G344」、届出表示「本品には、葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)が含まれます。葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)には、肥満気味な方の、体重やおなかの脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径(ウエストサイズ)を減らすのを助ける機能があることが報告されています。」、トクホや医薬品ではないことを明確にするための「○本品は国の許可をうけたものではありません。○本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。」、念押しで「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」です。

 健康食品のラジオCMなどでよく耳にするのが「本製品はトクホのような国の許可を受けたものではなく、科学的根拠に基づいた機能性表示食品です。→うわ~、科学的根拠の裏付けがあるなんて凄いですね」ですが、間違いではないですが、まるでトクホよりも科学的根拠があるみたいに聞こえませんか?機能性表示食品でも製品を使った臨床試験の結果を科学的根拠とするものもありますが、ほとんどが機能性関与成分の機能を裏付ける論文を引用したもの(システマティックレビューと言います)です。このようなレベルの低いCMを聴くたびに笑っちゃいます。

 

 そして気になるのはお値段ですよね(健康食品のラジオCMの常套句)と言わんばかりの価格設定。85%OFFってどんな商売しとるんかい、赤字やないかい!と突っ込みたくなります。気をつけなければならないのが、定期購入に限っての価格なのか、ということ。新聞紙面ではよくわからなかったので、ネットで確認したところ、「安心らくとく定期コース」とされていました。

 

 さて、重要な確認事項です。どんな臨床試験でどんな効果が出たのか、を説明したグラフです。届出には5つの論文を採用して評価したと記載されていて、このグラフはその内の一つ「神谷ら、機能性食品と薬理栄養, 7(3), 233-249, 2012」から引用しています。8週間後から脂肪減少し始め、12週間後にプラセボ(成分の入ってない、味も色も類似したもの)と比べて差がついた、ということを示しています。グラフに「※※P<0.01」と「※※※P<0.001(対象食品との比較)」が書かれています。前者は、「成分入りのものを飲み始め(0週間)と比較して8週間後に”有意差をもって”脂肪が減少した」ことを示し、後者は、「成分入りとプラセボ(対象食品)の12週間後を比較して”有意差をもって”脂肪が減少した」ことを示しています。グラフではそれぞれの値がで示されていますが、本当は、一点ではなく幅がある、つまり減少が大きかった人、少なかった人がいるはずです。該当論文は無料では閲覧できないので、詳細は分かりませんが、幅があっても、比較した差は統計的に偶然(まぐれ)ではなく、確かだろう(有意差がある)ということです。Pの値は「偶然に起こる確率」です。P値が小さいほど、確からしいということで、一般的に0.05未満であれば有意差ありと評価されます。このグラフでは、プラセボとの比較に意味があるといえます。

 このグラフに効果(機能性)を実感するためのポイントが隠されていることにお気づきでしょうか?

【方法】として「1日の平均摂取エネルギーを1,900kcal程度、平均歩数9,000歩程度に条件を合わせて」と書かれています。つまり、脂肪が減少したのは“1日9,000歩るいた場合”なのです。プラセボでも12週間後に減少しています。ただ葛の花イソフラボンを摂取していれば脂肪が減少するというのではなく、歩くことが条件なのです。キャッチコピーの「運動が続かない」というのは、「運動しなくても、楽に痩せられる」と思ってしまう方がいるかも知れません。広告のパッケージ以外に「適度な運動、バランスのいい食事とともに対策しましょう」と記載したのは、運動が必要ですよ、論文の結果を見てね、と言いたいのだと思います。

 

 以上のようにして、製品内容を確認していくのですが、分かりにくいですよね。まして、消費者庁のデータベースを見ても、一般の消費者はよく理解できないと察します。本投稿で一つの製品をまとめるだけでほぼ1日を費やしました。

 もちろん、医薬品のように動物実験から臨床試験まで何年もかけて安全性、有効性を確認するような手順をふんでないし、トクホのようにしっかりと臨床試験を確認している訳でもなく(機能性表示食品でも製品で臨床試験をしているものはあります)、効果(機能性)は弱く(食品なのですから)、マスメディアでコメントする一部の医師が機能性表示食品の存在自体を問題視するのも理解できます。

 ただ一つ言えるのは、機能性表示食品制度で届出されているものは、科学的根拠があり、その根拠に基づいて表示しているということは間違いありません。行政は制度を分かりやすくきちんと説明すること、消費者は理解しようと努力すること、本投稿が少しでも役立てば幸いです。

 

【撤回の理由】

 さて、撤回の理由を推察してみました。両者とも2024年2月2日に変更されていて、パッケージ見本の裏面右下を見ると、前者には記載のない「製造所固有記号」が後者には記載されていることの違いがありますが、届出資料を見ると、東洋新薬さんの鳥栖工場とインテリジェンスパークの2箇所で製造されていることが分かります(google mapを見ると500m程度の距離です)。単なるパッケージ変更ではなく(ほんの少しの変更でも変更届が必要になります)、別の場所でも製造されたとなれば、厳密には商品自体も変更されたと考えられることから新しい商品として、商品名に「a」を付けて届出したのかと推察します。あくまでも推察です。ここでいう商品名は消費者庁に届出したものであり、パッケージ表面の製品名は両者とも同じです。

 このパッケージ見本では固有記号は記載されていませんが、実際の販売品には記載されているはずです(手元に販売品を持っておりません)。

おなかの脂肪が気になる方のタブレット(粒タイプ)a

おなかの脂肪が気になる方のタブレット(粒タイプ)

【参考】

製造所固有記号は、2016年4月1日に施行された固有記号の表示制度に基づいて、製造工場を記号で表したもので賞味期限の近くに「+○○」という文字列をつけて印字している記号です。事故発生時の責任追及や製品回収などの行政処置をスムーズに行うためにも重要です。食品表示法で「製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称」の表示が義務付けられていますが、同一製品を2か所以上の工場で製造する場合、表示スペースが限られることもあり、事前に消費者庁に届け出ていれば「製造所の所在地や製造者の名称」を簡略化した記号の製造所固有記号が使用できます。パッケージの裏面、賞味期限の近くに記載されています。消費者著の製造所固有記号データベースで、記号から住所を検索できます。

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