独特な怪異・妖怪が登場する江戸の妖怪絵巻「稲生物怪録」
稲生物怪録(いのうもののけろく)は、備後国三次(びんごのくにみよし:現在の広島県三次市)を舞台として、武家の息子であった広島藩士の稲生武太夫(ぶだゆう)が16歳幼名・平太郎であった頃に起こった、自分の屋敷での怪異を書き綴った物語や絵巻などの類本である。
江戸時代に実話として広まり、現代に至るまでの怪談を題材とする創作物などに多大な影響を与えた。
物語の始まりは1749(寛延2)年の5月、平太郎が肝試しのために比熊(ひぐま)山へ登り、そこで触れると祟られると言われていた「天狗杉」にたどり着き、未知を三回まわり古塚前の草を印として結び下山した。その後7月に入ってから、およそひと月に渡って様々な怪異が彼のまわりで起こり始めたというのだ…(続く)