鎧武者の亡霊
鎧武者の亡霊
徳島
徳島市内の○小学校には鎧武者の亡霊がよく出たという。
昭和に入ってからも、職員の宿直室に亡霊が出たり、廊下を鎧武者がずしりずしりと練り歩いた事もあった。
そんな事で○小学校の宿直は誰しも怖がったのである。
一説には○小学校が古戦場の跡だと噂された。
ある夜の事、教師の某が泊まっていると老婆が訊ねてきた。
随分と薄汚れた老婆である。
「すいませんが、ここに泊まらせてもらえませんか」
枯れた声で老婆は哀願した。
「ここは関係者以外は泊まれませんよ」
教師は老婆を追い返そうとしたが、老婆の一言で踏みとどまった。
「私の父は○学校の設立者です」
○学校とはこの○小学校の全身であった。
このことから老婆はその夜H小学校に泊まる事になった。
そして、老婆の口から鎧武者に関する意外な話が聞けたのである。
江戸末期 吉野川上流である商人が木を伐採する事になった。
木を伐採されると災害が起こってしまう。
近隣土佐領の5ケ村の名主が集まり、徳島市内のその商人に直談判にやってきた。
しかし、商人は譲らない。
落胆した名主たちは土佐に帰ろうとした。
しかし、ひとりの名主はそのまま引き返し、徳島市内の金比羅様にお参りした。
そして、荷物から鎧を一式取り出すと、それを身につけ身投げ自殺をしたのである。
それ以来、金比羅から商人宅まで鎧武者が徘徊するようになったという。
商人はおそれおののき、僧を3名雇い庵を立てて鎧武者の成仏を願った。
その庵がのちに○学校となり、さらに○小学校となったのである。
鎧武者は武士ではなく、鎧を着た名主の亡霊であったのだ。
霊はみかけによらない。
阿波の伝説 横山春陽 徳島新聞出版
徳島
徳島市内の○小学校には鎧武者の亡霊がよく出たという。
昭和に入ってからも、職員の宿直室に亡霊が出たり、廊下を鎧武者がずしりずしりと練り歩いた事もあった。
そんな事で○小学校の宿直は誰しも怖がったのである。
一説には○小学校が古戦場の跡だと噂された。
ある夜の事、教師の某が泊まっていると老婆が訊ねてきた。
随分と薄汚れた老婆である。
「すいませんが、ここに泊まらせてもらえませんか」
枯れた声で老婆は哀願した。
「ここは関係者以外は泊まれませんよ」
教師は老婆を追い返そうとしたが、老婆の一言で踏みとどまった。
「私の父は○学校の設立者です」
○学校とはこの○小学校の全身であった。
このことから老婆はその夜H小学校に泊まる事になった。
そして、老婆の口から鎧武者に関する意外な話が聞けたのである。
江戸末期 吉野川上流である商人が木を伐採する事になった。
木を伐採されると災害が起こってしまう。
近隣土佐領の5ケ村の名主が集まり、徳島市内のその商人に直談判にやってきた。
しかし、商人は譲らない。
落胆した名主たちは土佐に帰ろうとした。
しかし、ひとりの名主はそのまま引き返し、徳島市内の金比羅様にお参りした。
そして、荷物から鎧を一式取り出すと、それを身につけ身投げ自殺をしたのである。
それ以来、金比羅から商人宅まで鎧武者が徘徊するようになったという。
商人はおそれおののき、僧を3名雇い庵を立てて鎧武者の成仏を願った。
その庵がのちに○学校となり、さらに○小学校となったのである。
鎧武者は武士ではなく、鎧を着た名主の亡霊であったのだ。
霊はみかけによらない。
阿波の伝説 横山春陽 徳島新聞出版