浅野ゆうじの独り言

社会・政治に関連する本の感想や日々の出来事についての私なりの考え方を書いています。

「思想史講義~明治編」(ちくま新書)を読んで①

2022-11-14 08:44:49 | 国際・政治
 「メディア環境の変化」という章で、江戸の幕末期において、天保13年1842年に、「新版書物之儀ニ付御触書」によって、禁止されてきた学術書が解禁になった。この変更を受けて、当時の学者は大いに歓迎し、政治論や歴史書が広く公然と出版・売買がなされるようになった、とされる。 それが大きく、言論の活発化と国際的な状況が大勢の人に伝わることによって、明治維新につながったのではないかと思われる。
 まさに、メディア環境の変化は大きく世の中を変える可能性を秘めているということです。昨今のネットによる情報の質量変化は、社会環境を徐々に変え、今と違う制度やシステムを変えていくと思われます。



ダグラス・マレー「狂気の大衆」から

2022-10-10 08:55:48 | 国際・政治
最近の風潮を思うとき、まさに含蓄のある文章だと思い、紹介します。
この本の副題は、ジェンダー、人種、アイデンティティとあるように、差別に関す本です。
その中の「間奏 マルクス主義的な基盤」で述べています。少し長いのですが、内容を理解するためにはと思いました。
 「自分ではそのような傾向があるとは認めていないとしても、政治的左派の学者にマルクス的あるいはポストマルクス主義的傾向があるかどうかは、その学者がどのような思想家を崇拝・参照しているか、どのような思想家の理論をあらゆる分野や階層に当てはめようとしているかで判別できる。例えば、これらの学者は、社会に対する考え方を、ミシェル・フーコーから学んでいる。つまり社会を見る際に、時代とともに進化してきた信頼と伝統からなる極めて複雑なシステムと考えるのではなく、「権力」というプリズムを通してすべてを見るような、不寛容な視点でとらえようとする。そんな視点からあらゆる人的交流を見れば、その姿が明確になるどころか歪んでしまい、真実味のない社会解釈になる。もちろん、権力はこの世界の一勢力として存在するが、同じように慈悲や寛容、愛も存在する。社会において何が重要かと尋ねられて、「権力」と答える人はほとんどいないだろう。その人たちがフーコーを学んでいないからではなく、そのような変質的なレンズを通じて社会全体を見るのは、ひねくれた見方だからだ。
 それでも、この世界から寛容よりも非難を見出すことに熱心な人たちから見れば、フーコーの思想はあらゆるものを説明するヒントになる。だから、フーコーやその支持者が個人的な関係において説明していることを、壮大な政治的レベルにまで敷衍しようとする。そういう人たちにとっては、社会のすべてが政治的選択であり、政治的行為なのだ。」


「鏡の中のアメリカ」先崎彰容をよんで

2022-09-21 19:27:12 | 国際・政治
憲法改正について、アメリカのジョージタウン大学のドーク教授の考え方を述べているところを引用します。
「左派系の新聞の憲法擁護論は、極東の現状を考慮することなく、単に国内の情緒的な平和主義に基づく主張であり、全く理論性を欠いていて「民族主義的感情の発露」に過ぎないというのである。むしろ国民が理性と法を重んじ、国際情勢を冷徹に分析することを行うならば、憲法の改正は当然の権利であって、理性の行使だと強調した。従って、それは最良の民主主義の貫徹になるはずで、だからこそ憲法改正は行われねばならないというのが教授の主張であった。」
感情的な世論調査を切り取って、あたかも多数世論が民主主義であり国民の総意であるかのように誘導するメディアになっていないか心配するところです。内向きな感情論になることなく、冷徹な理性をもって議論されることを望むばかりです。




「石橋湛山の65日」保阪正康を読んで

2022-09-20 09:57:33 | 国際・政治
「反骨のリベラリスト」とある石橋湛山の「政治家」らしくない政治家を改めて感じる。
ここでのリベラリストは、オールド・リベラリストといわれる自由主義者としての政治家であって、戦後の保守にあっての改革者であるといえます。
もし、首相を長く続けていたならば、日本の戦後は大きく変わっていたかと思わないでもないが、なぜか政治の世界がちっとも変っていないと感じるのは私だけだろうか。

「内閣法制局の近現代史」倉山満をよんで

2022-08-22 15:22:56 | 国際・政治
「内閣法制局も含めて政治がそのつどの環境によって解釈を変えるということは、立憲政治では、やはり憲法を改正しなければならないということであろう。
しかし、一方で、改憲が、現在の状況のみで改正することのリスクも、流動化する世界の中で、解釈の硬直化がおこるという負の側面もあるに違いない。」
と思いながら読んでいた。