一人きり、自室でくつろぐ一番無防備な時間を見計らって、ときどき訪れるものがいました。
大概は夜更けの暗闇から現れて、いつのまにか頭の奥に居座っている、影も形もない透明なもの。
あとから思いを巡らすと、多分幸せのエッセンスらしいものを置き土産にいつの間にか姿を消してしまいます。
初めのころは、気配を感じるたび全神経を集めて彼(彼女?)のコアの部分を何とか確かめてみたいと焦ったのですが
かなわぬまま、そのこと自体これも形容しようのない不思議な喜びとなっていました。
が、近頃さっぱり音沙汰がありません。
幸せ、などと口にするのも何か気恥かしいオとしごろです。
それでも、あのほんのりとあたたまってきて、胸にふっくらしたマシュマロでも抱くようなあの感じ
音もなくやってきて、それと気づいたころにはもう夢だったように消えている…
昨夜です
見るともなくテレビの画面を眺めて、その美しい色合いを作品の中に思い浮かべているとき
不意にふわっと胸が暖かくなりました。
首から上が雲に乗ってずんずん天に近づく感覚
あ、久しぶり!
四六時中絶えたことのない耳鳴りや雑音はどこへいったのか
透き通った世界に自分も浮遊しているみたいでした。
“ぼくを わすれていた?”
幽かに声だけ、聞こえたような気がします。
・・・・・・
突然揺さぶられるような思いで、彼を脳裏に見たいと念じました。
一定の環境が整ったとき、自然に表れるように自分で育てた偶像、とでも考えたらいいか
新生児みたいに無心で、ピュアで。
自分を鏡のように映し出すもの… きっとそうです。
私はその日朝からいろんなことで凄く満ち足りた思いの中にいたのです。
夢とも現実とも思えなかった不思議な感覚を、或いはコントロールできるかも!
この夜の訪問者の姿かたちを詮索するのは無意味なこと
そしてまたひとつ日々の暮らしに楽しさが加わったのに気付きました。