自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

車中でお勉強

2009年01月31日 | 絵と文
 
 所用で久しぶりバスに乗った。
 一人掛けの席の最後部に腰をおろして、30分間車中から流れてゆく外界を見物する気でいると、路線バスも結構楽しい。

 次のバス停で女性が一人あたふたと乗り込んできた。
 車中を一瞥、最後部がふさがっていたせいか、いくつもの空席を飛び越えて私の一つ前の座席を選び、やおら革のジャケットを脱ぎすててバックをごそごそやりだした。
 黒い半袖Tシャツ姿はこの時期いささか季節外れではあるけれど、羽毛のコートやファーの襟巻で膨らんだ他の乗客の中で妙に生き生きして見える。
 
 一見キャリアウーマン。
 寝床から飛び起きそのまま顔も洗わず飛び出して、来かかったバスに乗りこんだという風情。
 ボーイフレンドと夜更かしでもしたの?
 大事な会議を遅刻しそう?
 時々顔に降りかかる髪をゆすりあげながら、揺れるバスの中でマスカラとか、紅筆とか、それがさして難事業でもないらしい感じを受けるのは、案外常習犯なのかも。 
    。。。。。。。。

 あとから乗った彼女は、ひと仕事済ますと休む間もなく小道具をバックに押し込んで、ジャケットに袖を通し風のようにバスを降りて行った。
 ほとんどの乗客が気づくことなく、当のご本人も後部座席から興味深く一部始終観察されていたなどとは思っていないだろうし、或いは歯牙にもかけていない。
 最後まで顔は見なかったのがよかったのか、あるいは羨ましさも加味したのかは分からないけど、この際お行儀の良し悪しは別にしよう。
 後ろ姿に、一生懸命生きている爽やかさが残った。

 ときたま俎上に挙げられて批判の対象となる現代風俗のひとつだけど、これほど間近にはばかりなく拝見したら、何より先ず感心してしまう。
 若い、といっても四十代?

 これを (あら、フォー)って言うのでしょ。