
「製本は芸術である」 とある業者が言った。 なるほど。
知らなかった。もう少し早くに聞いていれば。
でもこれは仕様がないか。ふつう日常にはあまり関係ない言葉だもの。
画集など作ってみようかと、ふと思い立ったのが1年前。
だんだんと現実味を帯びてきて、実行に取り掛かったのが3か月前。
それからデータ作りの1ヶ月間は楽しかった。
朝も昼も誰からも文句の出ないマニアックな暮らし。やや色あせてるけど夢も見たし。
印刷に多少の文句も付けてさて製本に回し
出来上がる予定の吉日のあたりからきれいな虹が薄れてきた。
一定の時間が過ぎれば目の前に予想通りのものが現れる…はず。
…なんて今まで無関心でいたのだろう! 製本という技術。
四隅をそろえて。
カバーはぶかぶかさせないで。 などは序の口。
表紙が反り返り閉じてピタっと収まらず。
折り返しが滑って手に持てば中身がずり落ち。
天と地の開きが狂って矢の字型になり。
やがてパクッと糊が剥がれる。
これで上製本?
出来上がった本の山を横目に見ながら何もできないうつろな2週間。
湿気のある寒い部屋で重しを乗せて1週間。
或る日急に猛然と闘志が湧いて起き上がり、いくつもの業者に当たりを付けた。
もう、満足できれば費用が増えようと(?)なんだろうと構わない!
......
もうそろそろ1カ月。
今更ながら動画を見ながらの勉強なども連日してみたけれど。
出来る範囲の努力はしたつもりだけれど、いずれも帯に短したすきに長し。
何度目かのやり取りで、遂にここらで妥協したらと最後通告。
本当に芸術って気難しい。
(本を作るときがあればいらっしゃい)
