「シン・ゴジラ」 2016年 日本
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監督 庵野秀明 / 樋口真嗣
出演 長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ
高良健吾 松尾諭 市川実日子
余貴美子 國村隼 平泉成
柄本明 大杉漣 野村萬斎
ストーリー
東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する。
すぐさま総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が議論される中、内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘したが、上官にたしなめられてしまう。
しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然とさせる。
のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は陸に上がると、逃げまどう人々などお構いなしに街を蹂躙していき、政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に。
巨大生物の再度襲来に備え、矢口を事務局長とした「巨大不明生物特設災害対策本部」が設置される。
被害地域で微量の放射線量の増加が確認され、巨大生物の行動経路と一致したことから、巨大生物が放射線源だと判明する。
一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、世界各国も事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく。
倍近い大きさとなったゴジラが鎌倉市に再上陸し、横浜市・川崎市を縦断して武蔵小杉に至る。
自衛隊は武蔵小杉から多摩川河川敷を防衛線としたが、傷一つ付けることができず、突破されてしまう。
総理大臣官邸から立川広域防災基地へ避難するところであった総理大臣らが乗ったヘリコプターも光線によって撃墜され、総理を含め官房長官など閣僚11名が死亡してしまい、政府機能は立川に移転、農林水産大臣を総理大臣臨時代理とし、矢口はゴジラ対策の特命担当大臣に任命される。
寸評
ブラック・ユーモアに満ち溢れた大人のための怪獣映画だ。
延々と描かれるのは政府の会議シーンで、会議を重ねて現状把握や出現したゴジラへの対処法を考えるものの、指揮命令系統が不明確だったり、責任をなすり合ったりして何も決められない。
会議は誰が誰だか分からなくなるほど多くの登場人物があれやこれやとセリフをしゃべりまくるだけのものだ。
おまけに御用学者は通り一辺倒のことを言うだけで、総理にも愛想をつかされる始末だ。
おびただしいテロップが表示されるが、その表示時間があまりにも短いために判読できない時もあるし、第一その内容を覚えておく暇などはない。
これだけ徹底されると、これは意図されたものだと思わざるを得ない。
重要人物と思われる人が示され、その所属部署も示されたはずだが、多分そんなことはどうでもいいと言いたいのかもしれない。
アメーバ―の様な組織の集まりをエイリアンの様な人物が動かしているこの国の国体を揶揄し、能力が優れた個人の力で率いられた国家ではなく、そんな人がいなくても何となく維持運営されている実情を描いている。
総理及び総理代行者と決められている5人が死亡しても、それなりに組織が作られ運営されている。
無能と思われていた農水大臣が、無能ゆえにプライドを投げ捨てフランス大使に頭を下げることが出来て核攻撃を1日延期することに成功し、日本にこんな外交手腕があったのかと外国に言わしめている。
僕たちは本当に人材に安心していいのか?
東日本大震災と原発事故を意識させる展開で、やたらと想定外と発せられるし、安易に安全宣言が出されたりし、発表した後からすぐに訂正会見が行われたりしている。
日米の安保問題も浮上してきて、結局は自分の国は自分で守るしかないことが匂わされる。
日本単独で対処できない問題を同盟国や多国籍軍との連携でカバーするという集団的自衛権の欺瞞と恐ろしさを表していたと思う。
防衛大臣は現時点で小池百合子、稲田朋美という女性大臣が誕生していることもあって余貴美子が務めているのだが、やることは総理に攻撃許可を求めるだけである。
頼りない大臣たちに比べて、落ちこぼれと言われて役所から浮いていた人たちが集まり活躍する。
なかでも厚生労働省医政局研究開発振興課長(医系技官)という市川実日子が際立ったキャラで本作の主人公と言ってもいいくらいの存在感を見せている。
政府は有害鳥獣駆除ということで自衛隊を議論を経ることなく防衛出動させる。
結局やろうと思えば理由をつけて何でもやれてしまうのである。
最初に登場したゴジラは陳腐な縫いぐるみのようで、なんだこれは子供だましだったころのゴジラ映画じゃないかと思わせたが、それが形態を変えて徐々に進化していく発想は面白い。
一人の人間を助けるために総理は攻撃中止命令を出すが、その結果ゴジラはさらに進化を果たしてしまう。
総理は100人の命を救うために、1人の命を犠牲にする決断を求められるのだ(その一人になるのは嫌だけど)。
活動を停止したゴジラは東京に立ち続けているが、その体は核によって死んだ人々の亡骸でできていた。
初代ゴジラは水爆の化身だったし、本作でのゴジラは核廃棄物によって生み出された怪獣だった。
「シン・ゴジラ」のシンとは、新だったのか真だったのか、それとも神だったのか?
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監督 庵野秀明 / 樋口真嗣
出演 長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ
高良健吾 松尾諭 市川実日子
余貴美子 國村隼 平泉成
柄本明 大杉漣 野村萬斎
ストーリー
東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する。
すぐさま総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が議論される中、内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘したが、上官にたしなめられてしまう。
しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然とさせる。
のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は陸に上がると、逃げまどう人々などお構いなしに街を蹂躙していき、政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に。
巨大生物の再度襲来に備え、矢口を事務局長とした「巨大不明生物特設災害対策本部」が設置される。
被害地域で微量の放射線量の増加が確認され、巨大生物の行動経路と一致したことから、巨大生物が放射線源だと判明する。
一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、世界各国も事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく。
倍近い大きさとなったゴジラが鎌倉市に再上陸し、横浜市・川崎市を縦断して武蔵小杉に至る。
自衛隊は武蔵小杉から多摩川河川敷を防衛線としたが、傷一つ付けることができず、突破されてしまう。
総理大臣官邸から立川広域防災基地へ避難するところであった総理大臣らが乗ったヘリコプターも光線によって撃墜され、総理を含め官房長官など閣僚11名が死亡してしまい、政府機能は立川に移転、農林水産大臣を総理大臣臨時代理とし、矢口はゴジラ対策の特命担当大臣に任命される。
寸評
ブラック・ユーモアに満ち溢れた大人のための怪獣映画だ。
延々と描かれるのは政府の会議シーンで、会議を重ねて現状把握や出現したゴジラへの対処法を考えるものの、指揮命令系統が不明確だったり、責任をなすり合ったりして何も決められない。
会議は誰が誰だか分からなくなるほど多くの登場人物があれやこれやとセリフをしゃべりまくるだけのものだ。
おまけに御用学者は通り一辺倒のことを言うだけで、総理にも愛想をつかされる始末だ。
おびただしいテロップが表示されるが、その表示時間があまりにも短いために判読できない時もあるし、第一その内容を覚えておく暇などはない。
これだけ徹底されると、これは意図されたものだと思わざるを得ない。
重要人物と思われる人が示され、その所属部署も示されたはずだが、多分そんなことはどうでもいいと言いたいのかもしれない。
アメーバ―の様な組織の集まりをエイリアンの様な人物が動かしているこの国の国体を揶揄し、能力が優れた個人の力で率いられた国家ではなく、そんな人がいなくても何となく維持運営されている実情を描いている。
総理及び総理代行者と決められている5人が死亡しても、それなりに組織が作られ運営されている。
無能と思われていた農水大臣が、無能ゆえにプライドを投げ捨てフランス大使に頭を下げることが出来て核攻撃を1日延期することに成功し、日本にこんな外交手腕があったのかと外国に言わしめている。
僕たちは本当に人材に安心していいのか?
東日本大震災と原発事故を意識させる展開で、やたらと想定外と発せられるし、安易に安全宣言が出されたりし、発表した後からすぐに訂正会見が行われたりしている。
日米の安保問題も浮上してきて、結局は自分の国は自分で守るしかないことが匂わされる。
日本単独で対処できない問題を同盟国や多国籍軍との連携でカバーするという集団的自衛権の欺瞞と恐ろしさを表していたと思う。
防衛大臣は現時点で小池百合子、稲田朋美という女性大臣が誕生していることもあって余貴美子が務めているのだが、やることは総理に攻撃許可を求めるだけである。
頼りない大臣たちに比べて、落ちこぼれと言われて役所から浮いていた人たちが集まり活躍する。
なかでも厚生労働省医政局研究開発振興課長(医系技官)という市川実日子が際立ったキャラで本作の主人公と言ってもいいくらいの存在感を見せている。
政府は有害鳥獣駆除ということで自衛隊を議論を経ることなく防衛出動させる。
結局やろうと思えば理由をつけて何でもやれてしまうのである。
最初に登場したゴジラは陳腐な縫いぐるみのようで、なんだこれは子供だましだったころのゴジラ映画じゃないかと思わせたが、それが形態を変えて徐々に進化していく発想は面白い。
一人の人間を助けるために総理は攻撃中止命令を出すが、その結果ゴジラはさらに進化を果たしてしまう。
総理は100人の命を救うために、1人の命を犠牲にする決断を求められるのだ(その一人になるのは嫌だけど)。
活動を停止したゴジラは東京に立ち続けているが、その体は核によって死んだ人々の亡骸でできていた。
初代ゴジラは水爆の化身だったし、本作でのゴジラは核廃棄物によって生み出された怪獣だった。
「シン・ゴジラ」のシンとは、新だったのか真だったのか、それとも神だったのか?