懐かしい音が聞こえた。カラコロ、カラコロ。ちよっと古い人間なら、ピンとくるでしょうね。そうです、下駄の音です。自分の頭の中には、「下駄」の 字は消えて久しい。それこそ、小説の中の一コマにしか出てこない。それが、この音に振り返ると、男性で50代半ばと思われる人が歩いていた。やは り珍しいですよね。人は振り返ります。 何年振りでしょうか。 自分のことを思い出します。もう、50年ほど昔のことです。新婚時代のお正月に、嫁さんと一緒に着物姿で神社に下駄を履 いてお参りした記憶がある。それも5年くらいだったでしょうか。 当然ながら今は残っているはずはありません。古き良き時代のことです。 靴が当たり前になってしまって、どこの家庭にも今は男性用の下駄は無いのではないのでしようか。 お店屋さんも、スーパでももう売っていません。 若いアベックでもいい、また、年老いた、老夫婦でもいい、そろいの浴衣姿で、下駄を履いてお祭りの中に見たいものである。