ふと本屋さんに行ったところ、ぱっと目に入ったこの本。
R.P.G./宮部 みゆき | 集英社 ― SHUEISHA ―
住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…文庫書下ろしミステリー...
集英社 ― SHUEISHA ―
私が好きな作者、宮部みゆきさんの著書となります。
この本は、初版が2001年とありました。
すでに20年以上前の小説なんですね。
とはいえ、全く古いところも無く、ミステリーやサスペンスと言う分類で超一流の話の流れです。
本当にすべてが、細かいところまで、全て面白い小説でした。
私が、なぜ宮部さんの作品が好きなのか?
それば「人」の描き方。
特に「女性」の描き方です。
ある著名な作家さんの著書について話した無いですが
「21世紀は女性活躍の時代ですから、強い女性、明晰な女性、活躍する女性を描きたかった。
とのことです。
私としては「?」な所です。
昨今の小説に始まり、テレビドラマ、アニメの全てのメディアで、強い女性、正しい女性が描かれています。
テレビドラマやアニメでは受けがいいという部分もあるのでしょうが、確かに現代では理想とする形なのだと思います。
でも、実際はどうなのでしょう?
20世紀から21世紀になったからと言って、そんなに人間は急変するのでしょうか?
まだまだ、昭和・・・いやいや、石器時代からの本能は捨てきることなどできないです。
本当に強い意志が無いと難しい。
宮部みゆきさんの作品は、私が読んだ限り、この「本能」がむき出しになっている女性が出てきます。
そう、宮部さんの作品は、男だとか女だとか関係なく「人」の業と言うべき「本能」がむき出しのキャラクターが問題原因を作ります。
女流作家であるにも関わず、女性を美化しないという部分。
そういう部分に強く引き込まれるわけです。
本著書「R.P.G」という作品は、2つの事件が発生します。
宮部作品の例にもれず、これらがいとも簡単に1つの作品につながります。
そして、ほとんどが「取調室」で展開されるという、この「密室の中の会話劇」というワクワクする内容になっています。
ネットで調べると、本作品の舞台もあったそうです。
これは、舞台向きだなと思っていましたが、実際に演じられたとは・・・私も見たかったですね。
この会話劇と言うのが、本当にたまらない。
そして、話の中心に存在する「女性」。
この「女性」の描き方が絶妙だと感じました。
ネタばれになりますが、この「女性」が真犯人となります。
小説の中盤で、うっすら匂わすところも心憎い話の展開でした。
ただし、この女性は、前半では「被害者」、中盤で「ちくっと悩み」、後半では「完全は真犯人」となります。
このキャラクターの心理の映り変わりが、ゆっくり・・・かつ・・・確実な変貌を見せます。
この表現が、本当にリアルな見せ方をする「宮部みゆき」という作家の奥深さを感じさせます。
なぜ、このキャラクターの前半と後半で、ここまで違うのか?
本当に面白い。
前半では、完全に「自分がしでかしたこと」を記憶の中で現実を書き換えていた。
それが、中盤では「主人公の赤子をひねる作戦」で思い出され、後半では確定させられる。
そして、火曜サスペンス同様に「人が変わったような図々しさ」を見せる。
結果、人の命をなんとも思わない女性が完成する。
こういう流れを作るというのは、この作家の奥深さだと思います。
合わせて、男の「弱さ」や「危うさ」も、合わせて描き出すという、男としては「心にチクチク」する部分も描かれます。
確かに、これが本当の「人」のリアルではないでしょうか。
この絶妙な流れは、是非一読してみてもらいたいところです。