ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

黄色い星の子供たち

2011-07-23 21:42:37 | か行

フランスってナチスドイツに
「静かに」抵抗したイメージだったんですが
実際はそうでもなかった、ということを
明らかにする映画です。


「黄色い星の子供たち」73点★★★★


1942年、ナチスドイツ支配下のフランス、パリ。

ユダヤ人は黄色い星のワッペンを
つけることが命じられていた。

少年ジョーも黄色い星をつけて
学校に行く。

学校の先生は
「こんな星で人を差別しちゃいけない」と
生徒たちに教えるが、
町の大人たちのなかには
ジョーを汚いモノのように追い払う人もいる。

だが、ジョーの家族も
誇りを失わず、楽しく暮らしていた。

しかしそのころフランス政府は
パリ地区に住むユダヤ人、
2万4千人を検挙することを決めていた。


そして、7月16日の早朝。

パリの町でユダヤ人一斉検挙が始まった――。


悲惨な歴史ではありますが、
悲壮感ばかりでなく、

市井の人々の体験記として
有益な作品と感じました。


圧巻はやはり
1万3千人のユダヤ人が一時収容された
冬季競輪場のシーン。

スタジアムのなかの
溢れんばかりの人いきれ、

食事も水もなく、
床は汚物にまみれている様子は
見たことのない迫力と衝撃です。


特に我々には
震災直後の被災地での
避難場暮らしの様子がどうしても思い浮かび、
より切実に感じられます。


そんな絶望的な状況で、
正しい行いを選択しようとする人間の
美しさも映っていて、

極限のなかで立ち現れる
“人間の質”を深く考えさせられました。


この一斉検挙の話は
長らくフランスでも明らかにされず
「あれは、ナチスドイツがやったこと」と
されていたんだそう。


1995年にシラク大統領が
正式に「フランス政府がやったこと」と認めるまで
50年もホカされてたんですが、

今回、ジャーナリストである女性監督が
綿密なリサーチを行って映画化。

なによりジョー少年のモデルになった
生存者の証言が大きかったようです。


ラストシーンがすごく好きですわ。


★7/23からTOHOシネマズシャンテ・新宿武蔵野館で公開。ほか全国順次公開。

「黄色い星の子供たち」公式サイト
コメント (2)
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