ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

瞳は静かに

2011-12-08 20:44:45 | は行

このポスターからイメージする
印象とちょっと違うかも。

そこがいいんですけどね。

「瞳は静かに」69点★★★☆


1977年、軍事政権下のアルゼンチン。

8歳の少年アンドレスは、
父と別れた母と、兄との3人暮らし。

彼は優しく美しい母が大好きだが、
母の恋人はあまり好きではない。

しかも二人は最近、
こそこそ何かを隠しているようなのだ。

そんなある日、母が事故で死んでしまう。

祖母と父と暮らすことになったアンドレスは
暮らしになじめず
元の家に入り浸りるようになる。

そこで彼は母が隠していたものを見つける。

それは、軍事政権に反対する
反体制組織のビラだった――。


いや~なかなかに仕組まれた映画でした。

いい意味で裏切りが満載というか。


まずポスターを見て
女の子だと思ってた主人公は男の子だったし(笑)

暗くミステリアスな雰囲気と
「恐るべき子ども」という印象があったけど、

たしかに軍事政権が背景にあり、
全体に不穏さを潜めてはいるんですが、
画面は予想に反して光溢れ、明るい。


そんななかで子どもたちは、
生き生きと遊び、走り回っているんです。


でも、実はその平穏さのなかで
大人たちはある「秘密」を抱えている。

常に大人たちの会話を耳にして育つ
“子ども”は

だんだんと違和感を肌で感じとり、
ときに残酷なほど聡く立ち回る
少年へと成長していく……というお話。


ラストまできて、
ああ「恐るべき子ども」の印象は
間違いじゃなかったとわかるんですねえ。


ほかにも
ファーストシーンで銃声かと思えたものの正体が中盤でわかるなど、
けっこうやられた!な映画でした。

原題は
「アンドレスはシエスタ(昼寝)なんかしたくない」。

これも意味深ではありますが、

監督は“瞳”を感じさせる演出を意識しているようで、
目配せやまなざし、視線の先にある空気を
うまく映し出しており、

この邦題は納得でした。


にしても。

2010年の番長ベスト2位「瞳の奥の秘密」といい
アルゼンチン映画には独特の
「仕掛け技」があるんでしょうかね。


★12/10(土)から新宿K's cinema、渋谷アップリンクで公開。ほか全国順次公開。

「瞳は静かに」公式サイト
コメント
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