ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ルルドの泉で

2011-12-22 22:18:32 | ら行

きっと期待してるものと違うと思うんです。

それが、いい。

「ルルドの泉で」74点★★★★


フランスとスペインの国境にある
小さな村ルルド。

聖母マリアの「奇跡を起こす泉」があることで知られ、
難病の人や、救いを求める人々が
世界中からやってくる場所だ。

車椅子のクリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)もその一人。

全身麻痺で体を動かすことのできない彼女は
ボランティアに助けられ、街を見学し、泉の水に体を浸す。

そしてあるとき
彼女についに奇跡が起こるのだが――?!


容易に判断しにくい、
だからこそ余韻残りまくりな作品でした。


日本人でもおそらくほとんどの人が
名前は聞いたことがあると思うルルドの泉。

難病の人が歩けるようになったり、
不治の病の人が回復したりする実例があり、
そんな奇跡を求めて、
世界中から巡礼ツアーの人々がやってくる場所なんですが、

そんな街を題材にした着眼がまずおもしろい。

主人公が
「車椅子の人が参加できるツアーは少ないのよ」と言うとおり、

ルルドという場所は
ボランティアも行き届き、街全体が受け入れ万全な
困難な人々にとってのパラダイスでもあるわけです。

その様子を客観的に見ると、
やっぱりかなり異様なんですよ。

ルルドにカメラが入ることはほとんどないそうで、
観客はそんな街を主人公のツアーに混じって
じっくり見学してる気分になる。

泉の内部なんて、けっこう興味津々でした。


で、ついにそこで主人公に奇跡が起こるんですが
これが
「奇跡よ!」とかとシラケる演出じゃないんで
いいんだけど、
我々も戸惑ってしまうんです。

「え?喜んでいいのコレ?」と。

そう思う感覚が、
また不思議というかおもしろいんですよねえ。

監督のジェシカ・ハウスナー(39)は
「白いリボン」のミヒャエル・ハネケに師事した人で
うん、確かにこのクールさ、似てる気がします。


で、結局この映画は
「奇跡がどうの」という安っぽいドラマではなく

障害のある人も、普通の若者もみな突き当たる
「生きる意味ってなんだろう?」
「信じるってなんだろう?」といった
根源的な問題を映し出している、という。


だから、誰の物語でもあり
考えさせ、余韻を残すのだと思います。

ラストもかなり好きでした。

★12/23(金)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「ルルドの泉で」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする