自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆WHO流、中国のへの気遣い

2020年01月31日 | ⇒ニュース走査

  「WHO declares the new coronavirus outbreak a Public Health Emergency of International Concern.」(WHOは新型コロナウイルスの発生を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として宣言する)。けさ(31日)WHOのホームページをチェックすると、トップページ=写真=で掲載されていた。今さら遅い、と思わないでもないが、国際機関が動き出すことで、収束への口火が切られたようにも感じる。

   宣言後の記者会見(日本時間で31日未明)の模様が報じられている。テドロス事務局長はこう述べている。

新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう。中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる」「この理由で緊急事態を宣言する。中国への不信感を示したわけではない」「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(31日付・日経新聞Web版)

   確かに中国では、今月20日に習近平国家主席が情報を直ちに開示するよう関係部門に求め、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と直接指示をした。これが新型ウイルスへの国家的な取り組みの弾みになったと言える。それにしても、「中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」の言葉は、近隣国の感覚と相当ずれている。中国が団体観光の渡航制限(27日以降)をしたことを指すのだろうが、それが「感謝」に値することなのだろうか。

   ただ、「中国に感謝しなければならない」のはWHOであるという意味ならば理解できるが。事務局長の言葉からは、「ほめ殺し」や「忖度」というイメージがわく。

   もっと具体的に語ってほしかった点。「感染症対策の新しい基準をつくった」との意味はどういうことなのだろうか。リーダーシップと海外渡航禁止、麻雀や結婚式などの寄り合いの禁止が新しい基準なのか。よく理解できない。

⇒31日(金)朝・金沢の天気   くもり時々あめ

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★コロナ・ハラスメント

2020年01月30日 | ⇒ニュース走査

   中国・武漢からきのう29日、日本政府が用意したチャーター機で帰国した日本人206人のうち、男女3人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された、とメディアが報じている。40代から50代の男女3人。このうちの2人は発熱などの症状はない、という。この新型ウイルスの怖いところはこの点ではないだろうか。症状はないが、キャリア(保菌者)であることは間違いない。

   気になったのは、帰国した206人のうち、2人はウイルス検査そのものに同意しなかったことだ。憶測だが、まったく症状がなかったので検査を拒否したのだろう。症状がないからと言って検査を拒否するケースが今後も続けば、帰国者全体にあらぬ誤解を生むことになるのではないだろう。

  その理由は帰国者については匿名であることだ。誰が拒否したのか一般には分からない。すると全員を疑わざるを得なくなる。検査を強制する法律がないので、2人は拒否したのだろうが、帰国者全体に迷惑をかけてしまうことになる。ただ、来月7日に新型ウイルスを「指定感染症」や「検疫感染症」とする法律が施行されると、検査に法的拘束力が生まれる。

   新型ウイルスの勢いは止まらない。先ほど中国国家衛生健康委員会が発表した数字は、中国本土で感染者は7700人余り、死亡者は170人になった。チベットでも初めて感染者が出て、中国の31省・自治区・直轄市のすべてで感染者が確認されたことになる。これは把握できた数値であって、感染者と死亡者はもっと多いだろう。

   これだけ感染が広がると、世界の論調は新型ウイルスは「アジアの疾病」だとして、ヨーロッパやアメリカではアジア人に近づくなという雰囲気が蔓延しているのではないか。欧米人にとっては、中国人や韓国人、日本人の顔による区別はつけにくい。そこで、アジア人に近づかないことが最大の予防だ、となる。アジア人に対する、偏見や誤解、そして差別を拡散することに。まさに、コロナ・ハラスメントだ。

   この状況をつくり出しているのは、率直に言って、WHOだと思っている。感染状況が国際的に拡大し、他の国に公衆衛生上の危険をもたらしているにもかかわらず、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を未だに宣言していない。今月23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。この判断が間違っていたことは、現状を見れば誰もが思うだろう。

   今頃になって、WHOが焦り始めている。健康危機管理プログラムのトップの言葉を29日付のBBCが引用している。「Coronavirus: Whole world 'must take action', warns WHO」(コロナウイルス:全世界が警戒しなくてはならない、とWHOが警告)=写真=。記事の中で、テドロス事務局長は新型ウイルスが世界に及ぼす危険性について、報告書で「高い」とせず「中程度」としたことに言及し、「深く後悔している」と述べている。何を今さらと言うべきか。

⇒30日(木)午後・金沢の天気     あめ

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☆コロナウイルス感染、日本への影響

2020年01月27日 | ⇒トピック往来

      中国・武漢のコロナウイルスが、いよいよ世界的に猛威をふるい始めている。日本を含む中国以外の13の国や地域でも感染者が見つかっている。それにしても中国が発表する数字が小出しだ、中国の国内感染者数の実数はどうなのか。検査結果の出ない感染疑いの患者が3人もいるとされ、中国だけで実際は万単位とも言われている。

   信じ難い話も次々と出ている。武漢では医療施設が不足していて現在建設が始まっているが、市長が「10日間で病院を建設するから大丈夫」と語ったそうだ。ベッド数は1000床、建設期間は10日間、来月3日には稼働する見通しという(25日付・毎日新聞Web版)。ただ、敷地面積は2万5000平方㍍あるので、プレハブ小屋を合体させた集合的な入院施設ならば1000床は可能かもしれない。プレハブという技術に中国はどのように対応できるのか理解できないので、あくまでも想像だ。完成予想図が提示されていないので医療施設のイメージがわかない。

   コロナウイルスは日本にとっても他人事ではない。きょう27日の東証は、483円も値下がりし2万3343円。コロナウイルスの感染拡大が世界経済に悪影響を与えるのではないかという懸念が広がってのことだ。もともと、アメリカとイランの緊張の高まりで、ことしの世界経済は下振れの警戒感が出ていて、今回さらに中国経済に打撃が加わったカタチだ。

   日本にとっても影響が大きいのは観光産業だろう。中国人旅行客の3割から4割が団体客だと言われているので、中国の団体での海外旅行禁止令は影響が大きい。インバウンド需要に影響が広がれば、当然日本の国内総生産(GDP)を押し下げることになる。このまま東アジアにコロナウイルスが蔓延することになれば、果たして東京オリンピックは無事開催できるのかなどと、個人的に憶測したりもする。

   不思議なのは、WHOをだんまりを決め込んでいることだ。今は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」ではないのか、WHO事務局長はいつ緊急事態を宣言するのか。

⇒27日(月)夜・金沢の天気     くもり

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★坂網猟師とカモ、共生という関係

2020年01月26日 | ⇒トピック往来

   冬のこの時期、北陸ではズワイガニや寒ブリなど海の幸もあるが、山の幸ではカモに魅かれる。交配種のアイガモではない、正真正銘のマガモだ。鮮やかな赤身の肉で、鳥肉としては高級感が漂う=写真・上=。鴨鍋よし、串焼きよし、おじやよしで満足度が高い。

   このカモの料理を楽しめるのは金沢の南、福井県との県境にある加賀市だ。ラムサール条約湿地の「片野の鴨池」がある。ここで伝統的な坂網猟(さかあみりょう)が受け継がれている。猟師にお願いして、狩猟の現場を見学させてもらったことがある。夕暮れになると、鴨池のカモがエサを求めて群れをなして飛び立つ。周囲の丘を飛び越えるのを狙って、群れをめがけて坂網を空に向かって投げ上げる。

   坂網は長さ3.5㍍、Y字形の網の部分は幅1.3㍍ほど=写真・下=。材質はヒノキと竹、ナイロン網などで、重さは800㌘ほどだろうか。ベテランの猟師は羽音で距離感を測り、カモの群れをめがけて数㍍、あるいは10㍍も投げ上げる。猟期は11月15日から2月15日までと決められている。猟師は19人。かつてカモが大量に飛来したときは、1人で300羽も捕れた時代もあったが、今では全員でも200羽ほどだそうだ。

   ではなぜ坂網猟のカモがおいしいのか。カモは坂網にかかった後、地上に落ちてくるが、ほどんどが無傷で生きたまま捕獲される。肉に血が回らないので、臭みがなく、肉の味を損なうこともない。猟銃で仕留めるカモとの違いだ。

   坂網猟が始まったのは300年ほど前で、大聖寺藩主が武士の鍛錬として坂網猟を奨励したのが始まりだった。この道のベテラン、小坂外喜雄氏からこんな話を聞いたことがある。戦前、金沢に司令部を置く陸軍第九師団が鴨池周辺の砂丘地などで演習を行うことがあり、音に驚いてカモが寄り付かなくなった。そこで、猟師たちは九師団長に嘆願書を提出して演習区域から外してもらったそうだ。

   さらに終戦後、今度はGHQ(連合軍総司令部)のアメリカの中将らが鴨池に何度かやって来て銃でカモなど野鳥を撃ちまくった。当時の組合長は片野鴨池は古来より銃猟が禁止されている旨をGHQに直訴し、銃猟を止めさせたこともある。

   坂網の猟師たちは、一網打尽ではなく、伝統的な猟法を守ることで、カモと共生する関係性を築いてきた。そして、鴨池の野鳥を脅かす外部からのリスクには敢然と立ち向かってきたのだ。そんなストーリーを聞くと、坂網の鴨料理がさらにおいしく感じる。

⇒26日(日)夜・金沢の天気    はれ

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☆問われるWHOのスタンス

2020年01月25日 | ⇒ニュース走査

  WHOは機能不全の状態に陥っているのではないか。おそらく今後、国際世論の批判の目はWHOに向かう。中国政府はきょう25日、コロナウイルスによる国内の肺炎の死者数は41人、患者数は1287人と発表した。春節の大移動でフランスやオーストラリアでも初めての感染者が確認されるなど世界的に拡大している。WHOはいったいどう対処するのか。

      WHOは疾病のコロナウイルスのパンデミックを防ぐため、感染状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断すれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。が、23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。

   では、なぜ時期尚早との判断なのか。中国にとっては非常に不名誉なことになるのと中国指導部は考え、WHOが緊急事態宣言を出さないよう根回しをしたのであろうことは想像に難くない。このWHOの判断については世界のメディアがその決定過程のプロセスについて注目するだろう。

        すでに一部メディアでは以下の論調もある。WHO憲章は人種、宗教、政治信条などの差別なしに「すべての人々が最高水準の健康に恵まれる」権利を定めるが、テドロス事務局長は中国から巨額投資を受けるエチオピアの元保健相なので、政治的理由で中国に配慮している(25日付・産経新聞Web版)、との見方だ。

         時期尚早との判断では、中国以外の国で確認された感染者は12人と比較的少ないというのが、「国際的な非常事態」の宣言を見送った理由の一つだった。WHOのテドロス事務局長は、「これから非常事態になるかもしれない」とも述べていたという(24日付・BBCニュースWeb版日本語)。感染はすでに世界に拡大している。「China coronavirus: Death toll rises as disease spreads」(中国のコロナウイルス:病気が広がれば、死者も拡大する)。きょう25日のBBCニュースWeb版の見出しだ。ならば、WHOは今の事態をどう受けて止めているのか。

⇒25日(土)午後・金沢の天気    くもり

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★「春節のパンデミック」

2020年01月24日 | ⇒メディア時評

         中国の衛生当局はきょう24日、武漢市で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎の患者数が830人、死者は25人に達したと発表した(24日付・日経新聞Web版など)。一方、WHOは23日の緊急会合で、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は時期尚早との判断を下した。前回のこのブログで取り上げたが、中国の発表のタイミングが絶妙で、「WHO対策」は実に巧妙だ。

   WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。これは、中国にとっては非常に不名誉なことになると中国指導部は考え、緊急事態宣言はなんとしても避けたかったのではないか。

   そこで、WHOが22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日(20日)に、習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議で時期尚早との判断が出たのを確認して、今回の新たな数字を公表したのではないか。

            コロナウイルスの問題性は次なるステージに入ってきた。きょうから始まった中国の春節連休の「大移動」で、日本でもニュースが飛び交っている。沖縄・那覇市のドラッグストアでは、PM2.5やウイルスを99%カットするなどの記載がある高機能マスクを200個を入荷したが、中国人観光客の購入でその日で完売した(24日付・沖縄タイムスWeb版)。

    旅行で東京を訪れていた武漢に住む40代の中国人男性が、来日する前の今月14日から発熱があり、22日になって東京都内の医療機関を受診したところ、肺炎の兆候がみられたため入院、24日未明に新型コロナウイルスに感染していることが確認された(24日付・NHKニュースWeb版)。春節のパンデミックが始まったか。(※写真は厚生労働省のホームページより)

⇒24日(金)午後・東京の天気   くもり   

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☆WHOの緊急事態宣言の行方

2020年01月23日 | ⇒ニュース走査

        中国・武漢で新型のコロナウイルスによる肺炎は22日までに感染者540人、死者は17人に上ると今朝のニュースで報じられている。一連の関連ニュースで気になっていたのは、20日に習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出したことだった。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。当時は感染者130人、死者は1人だった。この時点でなぜ国家主席が直接指示を出したのだろうか。

   その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題があるのではないかと察した。当時は徹底的に情報を隠したことで感染を広げ、患者8100人、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、国家主席自ら情報開示を強化する姿勢を強調したのだろうか、と推測していた。

   ふと考えたのは、これは「WHO対策」ではなかったのか、と。WHO(世界保健機関)が22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日が、習主席が指示した日と同じ20日なのだ。

   ここからはあくまでも推測だ。WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。この緊急事態は、WHOが2003年の中国のSARS問題を教訓に2005年に国際保健規則を改正して設けた条項だ。

   直近では、2019年7月にエボラ出血熱がコンゴやウガンダで拡散したときに緊急事態宣言が出されている。では、もしこの宣言が武漢のコロナウイルスについて出されるとどうだろう。中国にとっては非常に不名誉なことになる、と中国指導部は考えるだろう。緊急事態宣言が出されると、WHOの事務局長は加盟国に対し勧告を出すことになる。すると、加盟国は「2003年問題と同じことをやっている。中国のガバナンスはいったいどうなっているのか」とささやき始めるだろう。

          中国とすれば、国家主席の直接指導で、コロナウイルスの感染拡大の阻止に全力を挙げているので、緊急事態宣言は必要ないとWHOにアピールしたかったのではないだろうか。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議となった。中国側もWHOに対し必死の根回しをしているのではないか。緊急事態宣言の行方に注目したい。

⇒23日(木)午前・金沢の天気     あめ

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★コロナウイルス、春節の大移動、パンデミック

2020年01月22日 | ⇒ニュース走査

   けさのCNNニュースを視聴すると、アメリカでも新型コロナウイルスの感染者を確認したと報じている。さっそく、CNNのWebニュース=写真=をチェックすると、「The coronavirus has already sickened hundreds and killed six people in Asia. 」と少々荒っぽい表現で伝えている。

  それによると、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は21日、国内で初めて新型コロナウイルスによる肺炎患者を確認した。患者はワシントン州在住の男性で、中国・武漢市を訪れ、今月15日に帰国していた。男性は先週肺炎と診断され隔離中で、CDCでは国内で男性と接触した人に新型コロナウイルスの感染がないか調査を開始した。

   アメリカで新型コロナウイルスのニュースに敏感に反応したのは株価だ。21日のニューヨークのダウ平均株価の終値は、先週末に比べて152㌦安い、2万9196㌦だった。冒頭に紹介した荒っぽい表現はある意味で、「戦闘態勢」に入ると反応した投資家も多かったはずで、一気に売り注文が広がったのだろう。アメリカだけではない。きのうの日経平均株価も20日より218円下がり、2万3864円だった。新型コロナウイルスが中国で広がっているため、経済への影響が懸念され、すでに上海市場や香港市場でも株価が下落している。この流れで日経平均株価も売りが広がったのだろう。

   今月24日から中国の旧正月、春節の大型連休が始まる。中国人観光客が日本を含め世界中を訪れることになるだろう。アメリカでは今月17日からロサンゼルスなど3つの国際空港でウイルスの検疫検査を実施しているが、今回のアメリカ国内の感染患者の確認を受けて、さらにシカゴとアトランタの2つの空港でも検査を行う。

   日本では異様な光景が広がるかもしれない。例年この春節の時節には70万人を超える中国人観光客が日本を訪れている。おそらく、人気スポットである関西では空港や電車駅、売店などで係員全員がマスク、そしてホテルではエレベーターのボタンや客室のドアノブをゴシゴシとアルコール消毒する光景を想像する。

   きょうWHOはスイスのジュネーブで新型コロナウイルスをテーマに緊急会合を開く。パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりをどう防ぐのか。

⇒22日(水)朝・金沢の天気     はれ

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☆パンデミックを防げ

2020年01月20日 | ⇒メディア時評

      中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、当初は感染が限定的という報道だったが、それが直近の報道だと人から人への感染に広がっているようだ。深刻さを物語るように、中国で肺炎患者が増えていることを受けて、WHOの事務局長が22日にスイスのジュネーブで緊急の会合を開くことになったと報じている。まるで、パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりを示唆する動きではないのか。

   武漢以外に北京、広東省でも患者が確認され、感染者はすでに200人を超えている、という。20日のニュースでさらに深刻になった。イギリスの大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症の専門家チームが、1)武漢とその周辺の人口、2)海外で見つかった患者数、3)武漢の国際空港から海外に旅行する人の数、などから患者の数を推計した。その結果、今月12日の時点で武漢では患者数1700人以上に上る可能性があると発表しているのだ(20日付・NHKニュースWeb版)。

  中国では今月24日から旧正月の春節の大型連休に入ると、日本を含め世界中に中国人観光客が訪れることになる。WHOの事務局長の緊急会合は、このタイミングで世界各国に注意を呼びかける意味合いがあるのではないだろうか。

  今夜遅く、この事態に習近平国家主席は情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した、と報じられている。習主席の指示は、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題がある。徹底的に情報を隠して感染が拡大したのだ。8100人が感染し、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、情報提供を強化する姿勢を強調したのだろう。

  それよりむしろ、春節には海外渡航を全面的に禁止するくらいの強い指導力を発揮してほしい。(※写真は人から人の感染の可能性を伝えるイギリスBBCニュースWeb版=20日付)

⇒20日(月)夜・金沢の天気   くもり

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★震災から25年、風化に挑む

2020年01月17日 | ⇒メディア時評

   阪神・淡路大震災(1995年1月17日)は震度7だった。午前5時46分、金沢の自宅で睡眠中だったが、グラグラと揺れたので飛び起きた。テレビをつけると大変なことになっていた。当時民放テレビ局の報道デスクだったので、そのまま出勤した。テレビ局はテレビ朝日系列で、ABC朝日放送(大阪)に記者とカメラマンを応援に出すことを決め、応援チームはその日のうちに社有車で現地に向かった。見送りながら、取材チームの無事を祈りながらも、日本の安全神話が崩壊したと無念さを感じたものだ。金沢は震度3だった。

   あれから25年、ABCはウェブサイト「阪神淡路大震災25年 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」を今月10日に公開した。この専用サイトでは、震災直後から8月23日までに取材した映像の中から38時間分を公開している。日時やキーワードで検索できるほか、被災地の地図に表示されたアイコンをクリックすると、場所ごとの映像が表示される。映像は当時のニュース映像ではなく、部分的ではあるもののノーカット編集がほとんどだ。その分、災害のリアリティさが伝わってくる。

   このサイトの映像をチェックして見て、ABCは「風化」と闘っている、と推察した。被災地から離れているテレビ視聴者は時間とともに災害の記憶が遠ざかる。何も忘れっぽい日本人だけではない。260年前、アダム・スミスは『道徳感情論』という講義で、災害に対する人々の思いは一時的な道徳的感情であり、人々の心の風化は確実にやってくる、と述べている。風化という視聴者のハードルをどう乗り越えるか。被災地との意識のギャップを埋めるに、ABCは「忘れてほしくない」とメッセージを送ったのだろう。

   もう一つのメッセ-ジを感じた。キー局に対してだ。「既視感」との闘いだ。被災地のローカル局と東京キー局との報道スタンスは異なる。ローカル局は被災者に寄り添う番組づくりを心がけているが、キー局は視聴率を重視している。ローカル局からキー局に全国放送の番組提案があっても、キー局は「どこかで見たことがある」と既視感を理由に提案を却下することがままあるのだ。

   当時カメラ撮影で使ったテープは四半世紀を経てそろそろ処分する時期に来ている。これを機に、ABCは震災の風化を防ぎ、今後の防災・減災に役立てたいと映像公開の膨大な作業にチャレンジしたのだろう。

⇒17日(金)夕・加賀市の天気   はれ

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