自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「暑っつい」「ダサい」「いらいら」

2022年07月31日 | ⇒ニュース走査

   きょう31日は午前中にもかかわらず強烈な暑さだ。金沢地方気象台は日中の金沢の最高気温を35度と予想しているが、体感ではもう超えているのではないだろうか。気象庁は石川県内に「熱中症警戒アラート」を出していて熱中症への対応を呼びかけている。29日から3日連続だ。6月29、30日にも発表されていたので通算5日となる。

  テレビ各社の気象予報士が解説している。世界的に異常気象をもたらすとされる「ラニーニャ現象」が去年秋から太平洋で続いていて、日本列島には来月から9月にかけても猛暑がもたらされるとのこと。それにしても「暑っつい」。 

   おそらく多くの人はこのニュースを見て、こう思っている。「ダサい」。東京オリンピック・パラリンピックをめぐって、組織委員会の78歳の元理事(「電通」元専務)が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」側からコンサルタント料として受け取った4500万円が賄賂だった疑いがあるとして、東京地検特捜部が受託収賄などの疑いで捜査を進めていると報道されている。悪い意味でアナログ、昔ながらの汚職のスタイルではないか。電通マンとあろう者が愚かな行為を。

   組織委員会は最初からケチがついていた。去年2月、組織委員会会長の森喜朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任した。組織委員会のメンバーではないが、3月にはオリ・パラの開閉会式の統括責任者を務めるクリエーティブディレクター(「電通」元局長)が、演出チームとのSNS上のやり取りで、出演予定だったタレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた、「いじり」の演出案を提案したことが発覚して辞任に追い込まれている。

   そして、7月には開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人が急きょ辞任するというハプニングもあった。過去に雑誌のインタビューで、高校生のころまでの知的障がい者に対する「いじめ」を自慢するように語っていたことが指摘された。オリンピック・パラリンピックの理念から完全にNGであり、辞任は本人からの申し出だった。差別、いじり、いじめ・・・実にダサい。

   さきほどまで、TBS番組「サンデーモンーニング」を視聴していた。テーマは世界平和統一家族連合(旧「統一教会」)と自民党など政治家との関わりについてだった。コメンテーターの指摘が的確だった。統一教会の創設者の文鮮明は、日本がかつて韓国を植民地支配をしたのは罪であり、日本から金を取るのは当然ということが教義に盛り込まれている、と。

   なるほど、霊感商法や献金強要によって巨額の金を集めているのは日本の統一教会だけと報じられていたが、その理由がこのコメントから理解できた。教祖の理屈により、日本の統一教会にとって霊感商法や献金強要を何十年も続けることは与えられた使命なのだ。真面目な日本人の贖罪意識を実に巧みに利用し、教団そのものを「集金システム」に仕立てている。

   日本人が食い物にされている現実にもかかわらず、自民党など政治家の一部が選挙支援などに恩義を感じて統一教会にシンパシ-を寄せてきた。いま日本に漂っている閉塞感は、まさにこの政治と宗教の矛盾に満ちた関係性だろう。「いらいら」感が募る。この閉塞感をどう打ち破るのか。

⇒31日(日)午前・金沢の天気    はれ

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☆政治は反社宗教団体にどうけじめをつけるのか

2022年07月30日 | ⇒ニュース走査

   政治家が知らないで済む話なのだろうか。メディア各社の報道によると、自民党の福田達夫議員(党総務会長)はきのう29日の記者会見で、世界平和統一家族連合(旧「統一教会」)と自民党の関わりが指摘されていることに関し、「誤解を招くようなこと(報道)はしてほしくない」「僕自身、個人的に全く関係がない」「正直に言います。何が問題か、僕はよく分からない」と述べた。

   福田氏はその後、「被害者を生み出すような、社会的に問題が指摘されている団体との関係が問題であることは言うまでもない」と釈明のコメントを出している。これが、いまの自民党と統一教会の関係性を示すシンボリックな出来事なのだと理解した。霊感商法や献金強要など問題がある反社会的勢力から選挙支援を受け続けるうちに、多数の政治家がマインドコントロールされてしまう。黒を白と言いくるめられる政治家の姿だ。党総務会長のポジションにいる福田氏は統一教会が反社団体と認識していたのなら、自身との関わりがなかったとしても、なぜそれを先に言わなかったのか。

   統一教会についてはテレビ・新聞メディアの報道で実像が少しずつ見えてきた。さらに報道に期待したいことがある。それは、霊感商法や献金強要によって集めた巨額の金は韓国の本部にどのように送金されているのか、だ。全国霊感商法対策弁護士連絡会の記者会見(今月12日)によると、1987年から2021年に連絡会などに寄せられた被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上るという。これはあくまで被害総額であって、実際には数十倍にもなるのではないか。想像がつかいない。

          その金は世界に流れている。ニューヨーク・タイムズ(2021年11月5日付)によれば、1976年から2010年までの間に、献金として日本で集められ、韓国本部を通じてアメリカの統一教会に送金された額は実に36億㌦以上になるという。

   宗教法人は文化庁宗務課に年1回、書類提出(役員名簿、財産目録、収支計算書など)をする決まりがある。この中で、韓国本部への送金はどのように記載されているのか。また、円をウオンやドルへの為替取引業務をどのようなシステムで行っているのか。一連の金の流れの中で不正があれば、国税などに告発すべきだ。

   1996年に宗教法人法が改正され、第81条(解散命令)では「著しく公共の福祉を害する」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などあった場合、その宗教法人に対して、所轄庁などが解散命令を裁判所に請求し、裁判所の決定により解散させることができる。

   安倍元総理の射殺事件をきっかけに、反社行為が野ざらしにされてきた統一教会への批判が高まっている。むしろ自民党が率先して解散へと追い込む動きをしなければ、統一教会と一体とみなされるだろう。自民に限らず、政治にのしかかった課題だ。

⇒30日(土)午後・金沢の天気    はれ

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★オリ・パラの垣根払うパリの「オリンピック革命」

2022年07月29日 | ⇒トレンド探査

   前回ブログの続き。パラリンピックではオリンピックとは別の感動があった。卓球・男子シングルスで、エジプトのイブラヒム・ハマト選手は両腕の肘から先が欠損しているので、口にラケットをくわえ、ボールを打つっていた。サーブ時は足全体を大きく振り上げ、足の指でつかんだ球を上にトスする。首と身体を左右に大きく振りながらラリーを続け、強烈なレシーブを決める。10歳の時に列車事故に遭い障害を負った。「人に不可能はない」。人はここまでできると教えてくれているようで衝撃的だった。

   車いすラグビーも印象的だった。日本対デンマーク戦。ガツン、ガツガツと車いすの衝撃音が響く。ぶつかり転倒する。車いすのタイヤがパンクして取り換え。また、激しい試合が再開される。その繰り返し。車いすラグビーは別名「マーダーボール」、殺人球技といわれるほど激しくぶつかり合う。このマーダーボールでは、選手の障がいの程度に応じて持ち点が割り振られていて、障がいの軽い選手だけでなく、重い選手や女性選手も出場する。パラリンピックの多様性を象徴するような競技だった。

     パラリンピック競技を視聴していて、ふと気にしたことがある。自らの視聴目線は「感動ポルノ(Inspiration porn)」ではないのか、と。意図を持った感動シーンで感情を煽ることを「ポルノ」と表現するが、障がい者のパラ競技を視聴して、「感動をもらった、励まされた」と自らを煽っているのではないかと。そして、自らの目線は障がい者に対する「上から目線」ではないのかと自問自答した。

   パラリンピックに合わせて来日したフランスのソフィー・クリュゼル障がい者担当副大臣の記者会見も印象的だった=写真、在日フランス大使館公式ホームページより=。2024年パリ五輪・パラリンピックについて、「オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払う大会にする」と述べていた。両大会のボランティアの6%を障がい者にする考えを示し、「すでに3000人の障がい者がボランティア参加できるようにトレーニングを始めている」と社会参画の必要性を強調した(2021年8月30日付・日テレニュース)。

   クリュゼル氏は都内のカフェを訪れ、重い障害のあるスタッフがロボットを遠隔操作して接客する様子を視察した。このカフェでは、難病や脊髄の損傷など障害のある60人が、自宅や病院にいながら、ロボットを遠隔操作して接客し、ロボットのカメラとマイクで客とコミュニケーションも取っている。クリュゼル氏は「多くの人が働き続けることを可能にする、すばらしい試み。パリ大会は私たちにとって大きな挑戦になるので、日本のアイデアを役立てたい」と話していた(同8月25日付・NHKニュースWeb版)。

   オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払うという発想が心を打つ。クリュゼル氏の会見や視察の様子を見て、フランス革命のシンボリックな絵画、ウジェーヌ・ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』を思い浮かべた。銃剣を左手に、右手にフランス国旗を掲げ果敢な女性を描いた、あの絵画だ。

   24年パリ五輪の開会式はセーヌ川で、スケートボードはコンコルド広場で、マラソンや自転車のロードレースは競技時間を違えて一般市民も同じ日に同じコースで競う。前例にとらわれない開放感や華やかさ。「オリンピック革命」がパリで起きるのかもしれない。

⇒29日(金)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

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☆感動の東京五輪から1年、ただあえて言うならば

2022年07月28日 | ⇒トレンド探査

   1年前のいまごろ、東京オリンピックで日本勢は金メダルラッシュだった=写真・上=。卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が強豪・中国チームを破って五輪卓球で日本に初の金メダルをもたらした。シニア世代には卓球は中国のお家芸というイメージがあるので、この「チャイナの壁」を突破した快挙だった。

   卓球とは違って、オリンピックの醍醐味を新たな視覚で楽しんだのがスケートボードだった。当時はスケートボードがオリンピック競技になっていることすら知らなかった。女子ストリートで、13歳の西矢椛(もみじ)選手が優勝し、日本史上最年少の五輪メダリストになった。2位のブラジル選手も13歳、3位の中山楓奈選手は16歳、表彰台に10代の選手が並んだ姿は新鮮なイメージだった。

   地元選手の活躍もあっぱれだった。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手がベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダル。さらに、川井選手の妹・友香子選手も62㌔級で金メダルを獲得。姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えられた。

   ここから論調は一変する。いまさら論にもなるが、人口減少が続き、膨れ上がる赤字国債を誰が返済するのかという議論が出ている中で、1兆4530億円もの開催経費をかけてまでオリンピックを開催した意義はどこにあったのか。世界は「オリンピック・ノー」に動き始めている。2024年のパリ開催は決まっているが、立候補を表明していたドイツのハンブルグやローマ、ブタペストでは開催費が財政を圧迫するとの住民の反対が根強く、最終的に撤退している。28年のロス、32年のブリスベンも競争相手の都市がなくすんなりと決まったように思われているが、他の都市は住民の反対で立候補に至らなかったというのが経緯のようだ。

   日本も国民は東京オリンピックを待ち望んでいたのか。開催前のNHK世論調査(2021年2月8日付)で、オリンピックをどのようなカタチで開催すべきかとの問いで、「中止する」が38%で最も多く、「観客の数を制限」29%、「無観客」23%だった。コロナ禍でもあり、中止の声は3分の1を以上を占めた。世論が割れたことで、オリンピックの大口スポンサーだったトヨタは関連のテレビCMを見送らざるを得なかった。

   札幌市が1972年に続き2度目の開催を目指す2030年冬のオリンピック・パラリンピック。同市が作成した「2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会 概要(案)」(2021年11月発行)=写真・下=によると、開催経費は最大で3000億円を見込んでいる。うち、大会運営費が2000億円から2200億円、施設整備費が800億円としている。巨額な経費はかかるにしても、オリンピック開催による経済効果はそれを払拭するというのが市側の建前論だろう。

   オリンピックの開催に反対ではない。ただ、イベントの開催でレガシーや経済効果を期待する時代はもう終わったのではないか。2025年の大阪・関西万博にしてもしかり。インターネットで情報が飛び交う時代に、万博で何か得るものがあるのだろうか。時代に合わなくなった「オワコン」(終わったコンテンツ)にしがみついて、「夢よ再び」の時代ではない。オリンピックや万博はもう他国に任せて、新たなグローバル・コンテンツを創り出すことに価値を見出すべきではないだろうか。

⇒28日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

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★能登半島の尖端、地下深く潜む「流体」のナゾ

2022年07月27日 | ⇒ニュース走査

         能登半島の尖端で続く群発地震。「珠洲市付近の地震活動について」をテーマに金沢大学能登学舎の研究チ-ムが主催する勉強会がきのう26日にあり、オンラインで参加した。話題提供は同市での地震の原因究明に取り組んでいる金沢大学地球社会基盤学系の平松良浩教授。珠洲市周辺では2020年12月ごろから地震が活発となり、去年9月16日にマグニチュード5.1、震度5弱、ことし6月19日にM5.4 、震度6弱、翌20日にM5.0、震度5強と揺れが続いている。地震学者の間ではその原因について、「流体」という言葉がよく使われる。その流体の正体は何か。

   平松氏の説明によると、奥能登ではマグニチュード6から7程度の地震が過去に繰り返し発生している。長さ10㌔から20㌔程度の複数の活断層や活断層帯が存在しており、今後もM6から7程度の地震が起こる可能性はある。こうした活断層や活断層帯のほかに、能登半島の尖端の珠洲市で注目されているのが、「流体」だ。今月11日に開かれた政府の地震調査委員会では、震度6弱と5強の揺れについては、「地震活動域に外部から何らかの力が作用することで地震活動が活発になっている可能性」が考えられ、その外部からの作用とは「能登半島北部での温泉水の分析からは、何らかの流体が関与している可能性がある」としている。

   平松氏の説明によると、その流体が揺れを起こす作用として、「球状圧力源」「開口割れ目」「断層すべり」の3つの原因が上げられる。岩盤が球状に膨らむ、岩盤の亀裂が板状に開く、断層がすべる、など3つの揺れのモデルが考えられるが、特定するのは難しいという。

   そこで、平松氏ら地震の研究グループで始めたのが、温泉水を調査することだ。温泉水に含まれるヘリウムの同位体などを調べることで、地下深くにある流体の起源を突き止められるのではないかと期待している。ヘリウム成分が少なければ地殻で、多ければさらに深いマントルから温泉水が発生していることになる。研究者が手分けして奥能登の8ヵ所の温泉を毎月1回採取する。平松氏はきのう珠洲市内の公衆浴場で湧き出る温泉水を4つの容器でくみ取る作業をした。

   平松氏は「流体が地球のより深いところ、マントルから来ているのか、浅い地殻だけにある水のような流体が原因で地震が起こっているのかを明らかにしたい」と話した。果たしてどのような領域で流体が分布し、地震活動と関わっているのか。リモートで話を聞いていて、地震発生のメカニズムに向かう研究者の執念が伝わって来た。

   「昇龍道(ドラゴンルート)」という言葉がある。中部地方の愛知県・岐阜県・富山県・石川県を南から北へと縦断する観光ルートで、能登半島のカタチが神秘的な昇り龍の頭のように見えることから名付けられている。その龍の頭の能登半島の地下には一体何が起きているのか。

⇒27日(水)夜・金沢の天気   はれ

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☆伊勢神宮で連綿と伝わる朱鷺色の美学

2022年07月26日 | ⇒トピック往来

   東京にある地名の「赤羽」はトキの生息地が由来かもしれない。そんな話を聞いて、なるほどと目からウロコだった。先日(24日)、能登半島の七尾市で「能登地域トキ放鳥推進シンポジウム」があり、参加した。石川県は環境省が進めている国の特別天然記念物のトキの本州などでの放鳥場所について名乗りを上げていて、シンポジウムは能登地域トキ放鳥受入推進協議会(会長・馳浩県知事)が主催した。

      シンポジウムが開催された場所は、七尾市田鶴浜地区コミュニティセンターホール。田鶴浜は地名で、海辺の田んぼにツルが舞い降りるとしてつけられた縁起のよい地名でもある。

         基調講演で上野動物園の元園長、小宮輝之氏がトキの生態や人工飼育の歴史や現状について述べた。翼を広げて飛ぶトキを下から見上げると、朱鷺色と称される赤っぽい色をしている。江戸時代に書かれた文書には「紅鶴 千住」と書かれている。紅鶴は現代ではフラミンゴを意味するが、江戸時代に田んぼが広がっていた千住にトキをいたと考えられる。冒頭の赤羽もトキに由来する地名ではないかとの小宮氏の説だ。 

   そして紹介されたのは、葛飾北斎が描いた『富嶽百景』の中の「写真の不二」。トキのような鳥が柱のてっぺんに止まって、富士山を眺めている様子が描かれている。

   さらに聞き入ったのは、伊勢神宮の神宝とされる「須賀利御太刀(すがりのおんたち)」に、トキの羽根が飾られていることだった。太刀は平安時代の法令「延喜式」で、柄にトキの尾羽をまとまわせるように記されているという。太刀は20年ごとの式年遷宮で調製される御装束神宝の一つで、平成25年(2013)に新調された太刀は、いしかわ動物園で飼育されいるトキの自然に生え換わった尾羽が使用されたとの小宮氏の説明だった。千年以上も前から、トキの羽に美学を感じ尊んできた人々のものづくりの感性には驚くばかりだ。

   写真は、東京国立博物館で開催された第62回式年遷宮記念特別展「伊勢神宮と神々の美術」(2009年7-9月)の図録から。須賀利御太刀の柄の部分には、上下にはトキの尾羽2枚が緋色(ひいろ)の撚糸(よりいと)でまとってある。太刀は昭和4年(1929)のもの。

⇒26日(火)午後・金沢の天気     はれ

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★熱波、洪水、地球規模の異常気象

2022年07月24日 | ⇒ニュース走査

   九州地方に連続して線状降水帯が発生し、災害級の大雨をもたらすなど異常な天候が続いた。海外メディアをチェックするとこれは地球規模のようだ。

   BBCニュースWeb版日本語(今月20日付)によると、ヨーロッパの広い地域で厳しい熱波が続き、普段は気候が穏やかなイギリスでもロンドンのヒースロー空港で40.2度を記録するなど観測史上初めて40度を超えた。 ドイツは今年の最高気温を更新。ポルトガルでは連日の猛暑で死者が増えている。 欧州大陸の各地で山火事が発生し、死者も出ている。

   国連の世界気象機関(WMO)は、事態は深刻さを増すと警告した。 人為的な気候変動の影響で、熱波は以前より頻繁かつ激しくなり、期間も長くなっている。 WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、「ゆくゆくはこのような熱波が常態化し、さらに強烈で極端な事象が発生するだろう」と述べた。(※写真・上はWMO公式サイトより=18日付)

   WHO公式サイト(今月22日付)で欧州地域局長のハンス・アンリ・クルーゲ氏は「Heatwave in Europe: local resilience saves lives – global collaboration will save humanity」と題する異例の声明を出している=写真・下=。長期にわたる熱波によって、スペインとポルトガルだけでもすでに1700人以上が死亡、山火事ははるか北のスカンジナビアでも発生していると述べている。「夜間を含め、できるだけ暑さを避け、激しい身体活動を避け、子供や動物が駐車中の車に残らないようにする」「体を冷たくし、水分補給をする」などと、人々に気候変動と闘う自覚を呼びかけている。

   ヨーロッパだけではない、きょう24日付のBBCニュースWeb版によると、中国の一部では今後10日間で40度超える熱波など厳しい気温を予想されるとして、中央政府は森林火災が発生する可能性があると注意を呼びかけている。浙江省では一部の都市に赤色の発しており、これは最も高い警告マーク。同省は例年7月は20度台前半の気温だが、今年は地元当局が今後24時間で40度になると警告している。また、CNNニュースWeb版日本語(20日付)によると、6月には福建省や広東省、広西チワン族自治区の一部が「歴史的記録」を塗り替えるほどの極端な降雨に見舞われた。また、中国北部はうだるような熱波に覆われ、気温は40度を超えた。

   去年もアメリカのカリフォルニア州デスバレーで54度を記録するなど世界各地が熱波や洪水に見舞われた。今後もこのような熱波が世界中で常態化し、そして洪水や山火事など事象が今後発生するのか。カーボンニュートラルを世界が進めれば、この異常気象は鎮まるのだろうか。

⇒24日(日)午前・金沢の天気    はれ

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☆一度開いた「ワニの口」は塞がらないのか

2022年07月23日 | ⇒ニュース走査

   「ワニの口」という言葉をメディアで目にしたり聞くようになった。よく使われているのが、政府の歳出・歳入の推移を折れ線グラフで示した図だ。歳出は右肩上がりで増え続ける一方、歳入は伸び悩み、まるでワニが大きく口を広げているような図になる。ネットで検索すると、財務省公式サイトのページ「これからの日本のために財政を考える」にワニのイラスト入りで解説が出ている=写真=。

   ワニの口を実感することがある。それは年金と物価上昇だ。消費者物価指数は去年9月から前年同月比で上昇に転じ、きのう22日に総務省が発表した6月の速報値はプラス2.2%だった。近所のガソリンスタンドでは1㍑170円と高止まりしている。クリーニング店では、かつてワイシャツ1枚180円がいまは240円、コットンパンツもかつて420円がいま600円だ。クリーニング店で話を聞くと、クリーニング工場では石油系の溶剤が使われ、アイロンやプレス機で使う蒸気は重油ボイラーとさまざまなものに石油製品が使われていて、原油価格はクリーニング料金に直結している、ということだった。

   ロシアのウクライナ侵攻にともなう原油高、輸入原材料の価格高騰が背景がある。これは日本だけではなく、欧米も物価高だ。ロイター通信Web版日本語(7月19日付)によると、EU統計局が19日発表した6月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比で8.6%の上昇で、過去最高の上昇率となった。日本はEUに比べ上昇が小幅だが、いつ暴騰するか分からない。その不安をかき立てるのか円安だ。

   今月14日の外国為替市場では、1998年9月以来およそ24年ぶりに1㌦=139円台に円が下落する場面となった。1日でおよそ2円も値下がりする急速な円安だった。 その後はやや戻して137円で推移していた。きのう22日の外国為替市場では一時1㌦=135円台に値上がりし、結局136円台で落ち着いた。アメリカの景況指数で円安・円高を繰り返しているが、この安定感のなさこそが不安をかきたてる要因だろう。

   そして、さらに不安を煽っているのが年金の減額だ。今年度の年金額は前年度と比べて0.4%の減額となっている。高齢者のうち3割は年金生活者といわれる。年金生活者にとって、物価上昇と年金カットのダブルパンチだ。一度開いた「ワニの口」は塞がらないのか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

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★安倍元総理国葬にプーチンは顔を出す、出さないの論点

2022年07月22日 | ⇒メディア時評

   前回ブログの続き。安倍元総理の国葬がきょう閣議決定して、9月27日に日本武道館(東京・千代田区)で執り行われることになった。通算8年8ヵ月の総理在任中はとくに外交分野で存在感を示してきた安倍氏だけに、すでに世界各国から弔問希望の問い合わせが外務省に寄せられているのではないだろうか。

   見方を変えれば、岸田総理にとっては外交力を強化するチャンスとも言える。岸田氏はすでに積極的な外交を展開している。先月下旬にドイツで開催されたG7サミットに出席した後、スペインでのNATO首脳会議に日本の総理として初めて出席した。さらに、岸田氏はアメリカのバイデン大統領との共同記者会見で、来年のG7サミットをアメリカの原爆投下地である広島市で開催すると発表した。その「広島G7サミット」は5月19-21日の開催が正式に決まった。

   岸田氏が初めてNATO首脳会議に参加した大義は、自由主義圏という共有概念のもとで、アメリカやヨーロッパ諸国と軍事的にも連携を強めたいということだろう。ロシアによる偽旗を掲げてのウクライナ侵攻、さらに中国による強引な南シナ海の実効支配と尖閣諸島への領海侵犯を重ねて念頭に置いている。岸田氏は、国葬を外交の舞台として繰り広げることで、安倍氏の遺志を引き継ぐことになると「弔問外交」に意義を見出しているに違いない。

   では、このケースはどうかとふと考えてしまうのは、国葬にプーチン大統領が参列したいと申し込んできた場合、政府はどう対応するのだろうか。報道によると、プーチン氏は今月8日、安倍氏の母、洋子さんと妻の昭恵さん宛てに、「息子であり、夫である安倍晋三氏のご逝去にお悔やみを申し上げます」と弔電を送り、「この素晴らしい人物の記憶は、彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と述べた(8日付・朝日新聞Web版)。   

   ロシアのウクライナ侵攻後、日本政府はプーチン氏や親戚、ロシアの富裕層ら507人の資産を凍結。在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外追放した。これに対して、ロシア側も、同国に駐在する日本外交官8人を国外退去させ、日本の国会議員384人に入国禁止措置を取った。まさに、日本とロシアは絶縁状態となっている。

   この状況の中で、プーチン氏が「彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と参列を希望した場合、日本政府は受け入れるのだろうか。もし受ければ、国際世論は相当ぎくしゃくするに違いない。香港問題やウイグル族への強制労働など中国の人権状況に対する批判から北京オリンピックには主要国の政府関係者が出席しない「外交的ボイコット」が繰り広げられたが、国葬にプーチン氏出席となると、それどころではないだろう。

   逆に受け入れて、ウクライナ侵攻の決着を導き出すという「サプライズ外交」を密かに描いているかもしれない。今後、国葬をめぐる論議はこの点にフォーカスしていくだろう。プーチン氏は顔を出すのか、出さないのか。

(※写真は、2016年12月16日、日露首脳会談後に行われた安倍総理とプーチン大統領による共同記者会見。このとき、安倍氏は「95分間、2人だけで会談を行った」と語っていた=総理官邸、テレビ中継画像)

⇒22日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

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☆そもそもなぜ「国葬」、されど「国葬」

2022年07月21日 | ⇒ニュース走査

   銃弾で死去した安倍元総理を国葬とする件は、あす22日に閣議決定するようだ。戦後、総理経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来で戦後2例目となる。同じく国葬となる人物でも、吉田氏と安倍氏のイメージはわれわれシアニ世代では異なる。

   吉田氏は戦後の混乱のただ中で、日本国憲法の公布(1946年)やサンフランシスコ平和条約の締結(1951年)、日米安全保障条約の発効(1952年)にこぎつけた。ひとことで言うならば「戦後日本の礎を築いた政治家」、というイメージが脳裏に刷り込まれている。では、安倍氏のイメージはどうか。「アベノミクス」「憲政史上最長の通算8年8ヵ月」「日米外交の円滑化」だろうか。

   国葬には吉田氏がふさわしく、安倍氏は物足りないと言っているのではない。戦前は「国家に偉功ある者」など対象者を定めた「国葬令」があったものの、戦後は国葬の対象者などを明文化した法令はない。つまり、国葬の是非については国民はイメージで語るしかないのだ。岸田総理は国の儀式を所掌するとした内閣府設置法があり、閣議決定により国葬をすると表明した。国葬の基準もないのに、行政府だけの判断でいいのだろうか。

   NHKの世論調査(今月16-18日)よると、岸田内閣を「支持する」は59%、「支持しない」は21%だった。しかし、岸田内閣が安倍氏の国葬を行うことについては、「評価する」が49%、「評価しない」が38%だった。つまり、安倍元総理の国葬の評価については世論は分かれている。この背景にあるのは、安倍氏への政治的評価ではあることは言うまでもない。「憲政史上最長の8年8ヵ月」の重責を担ったが、一方で、長期政権の歪みも目立った。「忖度」という言葉が盛んに報じられた加計学園問題や森友問題などはその事例だろう。

   あすの閣議決定では国葬は9月27日に執り行うようだ。ただ、ここにきて新型コロナウイルス感染の第7波が襲来している。きょうは全国で18万6246人、これで2日連続で過去最多となった(21日付・NHKニュースWeb版)。地元石川県でも1628人とケタ違いの増え方だ。これに対して、政府は行動制限などを行う必要はないとしている。

   しかし、国葬となれば、弔問外交も活発化するが、コロナ禍の第7波がどのような影響をもたらすのか。かつての盟友だったアメリカのトランプ元大統領は弔問に訪れることができるのだろうか。そもそも「国葬」、されど「国葬」だ。

(※写真は2017年11月、日本を初めて訪れたトランプ大統領と安倍総理が「霞ケ関カンツリー倶楽部」でゴルフを行う様子=総理官邸ホームページ)

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