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「一見すると、よさそうな施設でしたよね」しかし…評判がよくない老人ホームに潜入取材、同行したケアマネだけが“気がついたこと”とは

2024年05月18日 21時07分32秒 | 医療のこと

「一見すると、よさそうな施設でしたよね」しかし…評判がよくない老人ホームに潜入取材、同行したケアマネだけが“気がついたこと”とは (msn.com) 




「まるで養鶏場のニワトリ」
 施設を後にして車内に戻ると、山田さんは開口一番こう言った。
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「一見すると、よさそうな施設でしたよね」

「正面玄関ではなく、私たちを裏口から入れたのは、ホールでの様子を見せないためですよ。施錠されたホールにお年寄りを閉じ込めて、一日中何もせずただボーッと過ごさせているんです」
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「利用者さんたちは、リハビリやレクをするわけでもありません。毎日、朝8時から夕方6時まで一人残らずホールに集められます。職員が話しかける様子もほぼ無かったですよね。それでもデイサービスを利用したことになっているんです」(山田さん)


〈 「認知症だから大丈夫」と骨折を放置…ベテラン介護士が目撃した、老人ホームで行われる“衝撃的な虐待行為” 〉から続く


「将来は施設に入ってゆっくり暮らしたい」自身の老後について、漠然とそう考えている人は少なくないだろう。しかし、少ない年金受給額による費用の問題もさることながら、老人ホーム職員による利用者への虐待という問題も顕在化してきている。


 ノンフィクションライターの甚野博則さんは自身の母親の介護をきっかけに、制度について一から調べ、全国の現場を訪ね歩いた。ここでは「介護業界のリアル」をまとめた『 実録ルポ 介護の裏 』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。


 甚野さんが“潜入取材”により目の当たりにした「評判がよくない老人ホーム」の実態とは――。(全4回の3回目

実際に老人ホームに“潜入取材”
 取材を続けていくなかで、実際にある「住宅型有料老人ホーム」に“潜入取材”を行う機会を得ることになる。そこからは消極的介護の実態が見えてきたのだった――。


〈ここに入居している高齢者の生活を見ていると、人間扱いされていない感じがする〉


 2022年の夏、一通のメールが週刊文春編集部に届いた。送り主は関西でケアマネとして働く山田敏子さん(仮名)だ。山田さんが仕事で月に一度訪問している有料老人ホームに関する情報提供だった。その施設が、利用者を〈人間扱い〉していないように感じているというのだ。一体どういうことなのか。


 彼女とは何度かメールや電話でやり取りをすることになった。安い入居費用で365日、デイサービスを行っていると謳う老人ホームが、実際にはまともな介護をしていないといい、これが介護施設といえるのかと疑問に思っているとのことだった。



 そんな彼女が疑問視する施設は、地元の株式会社が運営しており、利益優先主義の経営者のもと、人手不足の状態が続いているという。現役のケアマネが問題視する施設とは、一体どんなところなのか。そんな疑問を抱きながら、京都駅から30分ほど在来線に揺られて小さな駅に着いたのが同年9月のこと。駅前で山田さんと待ち合わせをし、詳しく話を聞くことになった。


 山田さんの年齢は40代前半。もともと大学で福祉を学んでおり、そのまま介護業界に入ったという。結婚後、一時期は介護の仕事を離れて海外で暮らしたこともあったが、帰国後は再び介護の職に就いた。現在はケアマネジャーとして働いている。


 話をするなかで、山田さんからこんな提案があった。


「うまく言葉で説明できないので、今から施設の様子を一緒に見学しませんか?」


 彼女の話によれば、同じ会社が経営する介護施設が近隣の市に10か所以上あるという。地元では知らない人がいないほど手広く介護事業を展開しているが、どの老人ホームも介護関係者には“評判がよくない施設”として知られているそうだ。10か所以上ある施設のうち、彼女の顔が知られていない施設があるというので、そこに2人で“潜入取材”を試みることになったのだった。


「施設を見てみたいと電話すれば、たいていは中を見学させてくれるはずです」


 午後1時過ぎ、私は山田さんが運転する車の中から「15分後に少し中を見学させてもらえませんか」と施設に直接電話を入れてみた。すると電話口の女性は、「今からですか」と少々驚いた様子だったが、「大丈夫です。お待ちしています」と明るく答えてくれた。


異様に静かなホール
 目的の介護施設は、大きな畑の真横にあった。田園地帯にポツンと建つ殺風景な施設だった。建物の壁には大きく「住宅型有料老人ホーム」と書かれているが、いかにも安普請の2階建てアパートといった印象だ。広々とした駐車場に車を停めて、早速、入り口にいた女性職員に声をかけた。すると、電話での説明とは違い、対応した職員は「今、コロナの関係で、中まではお見せできないんですよ」と話すのだ。


「そうですか。でも先ほど電話で見学の約束をしたうえで、ここへ来たのですが……。この辺りの老人ホームを、いろいろと見学しようと思っていまして」


 そう返すと、女性職員は「ちょっと待ってくださいね」と建物の奥へと消えた。暫くすると女性の責任者が現れて、「今日は特別に、中も見学していいですよ」と言った。一体、何が特別なのか。その説明はなかったが、私たち2人は案内役の別の女性職員に連れられて、いよいよ施設の中に入れてもらえることになったのだ。



 ちなみに、この施設の職員には名字を聞かれた以外、見学の目的などは一切聞かれることはなかった。


「まずは、2階のお部屋からご案内します」


 そう女性職員に促され、なぜか正面玄関ではなく、建物の裏手に回るよう言われた。人とすれ違えないほどの細道を歩かされると、案内されたのは職員用の小さな通用口だ。入り口でスリッパに履き替え、すぐ横にあるエレベーターに乗り2階へ上がった。


 エレベーターを降りると、中央に幅2メートル程の直線廊下があった。その両脇には利用者が暮らす約30の居室が並ぶ。居室のドアは引き戸だが、全ての戸が全開になったままで部屋の中が丸見えだ。室内に人は誰もいなかった。


「部屋の中、ちょっと見てもいいですか?」


 そう職員に聞いてみると、「どうぞ」と答えた。目の前の居室の中を覗いてみると、8畳ほどの部屋にシングルサイズの介護用ベッドと、小さなタンスが一つ。床に直置きされた大きな遺影がタンスに立てかけられていた。この部屋に住む女性の夫なのだろう。遺影の老紳士が微笑んでいたのが印象的だった。


 他の居室も順番に覗いて歩くと、小さな仏壇がある部屋や、衣類が散らかっている部屋など、生活感が漂っている。


 見学中、山田さんは女性職員にこうたずねた。


「お昼ご飯はもう終わったんですか?」


 女性職員が「そうですね」と頷くと、山田さんは続けた。


「誰も居室にいらっしゃらないですけど、お昼ご飯が終わって、入居者のみなさんは今、何をされているのですか?」


 一瞬、間があいて、女性職員はこう説明した。


「今日はみなさん1階で寛いでいらっしゃると思いますよ。全員、2階にいないっていう日は珍しいんですけどね……」


 今日は特別な日であるかのような口ぶりだ。なぜ今日に限って入居者が誰一人部屋にいないのかの説明はなかった。


 続いて私たちはエレベーターで1階へと移動した。


「あそこで、みなさん食事なども召し上がっています」


 職員が廊下の先を指さすと、奥に食堂兼ホールが見えた。正面玄関を入ってすぐの場所に位置する。最初に私たちが職員に話しかけた場所だ。ホールにはたくさんのお年寄りが座っているが、みんな異様に静かで無表情だった。昼食を終えて、うつむいている人、遠くをじっと見ている人ばかり。身体や手足を動かしている人が誰一人いないことに違和感を覚えた。すると職員が、「コロナの関係もありますし、今日の見学はここまでに」と言い、山田さんと私がホールに近づく間もなく、再び裏口へと誘導された。


 最後に女性職員は、こう言いながら施設のパンフレットと名刺を差し出した。


「今は満室ですので、もし入居をご希望される場合は、早めにご検討いただいた方がよいと思います」


「まるで養鶏場のニワトリ」
 施設を後にして車内に戻ると、山田さんは開口一番こう言った。


「一見すると、よさそうな施設でしたよね」


 確かに、女性職員の愛想もよく、悪い印象は持たなかった。ところがこの後、山田さんはこう続けたのだ。


「正面玄関ではなく、私たちを裏口から入れたのは、ホールでの様子を見せないためですよ。施錠されたホールにお年寄りを閉じ込めて、一日中何もせずただボーッと過ごさせているんです」


 言われてみれば、そう見える。身体や手足が動いていないのは、寛いでいるからではなかったのだ。通常、デイサービスでは、体操やクイズ、手芸や工作など、さまざまなレクリエーションを行うはずだ。


「利用者さんたちは、リハビリやレクをするわけでもありません。毎日、朝8時から夕方6時まで一人残らずホールに集められます。職員が話しかける様子もほぼ無かったですよね。それでもデイサービスを利用したことになっているんです」(山田さん)


 こうした対応は、この会社だけのことなのだろうか。別の介護施設管理者が、次のように説明する。


「介護の効率化を重視するあまり、利用者を一か所で集中管理する施設があるとの話はよく聞きます。人手不足なのでしょう。見守りはしているわけですし、交代で入浴介助も行う。最低限のことをしていれば、デイサービスを利用したことになり、介護保険を請求できますからね」


 山田さんが話を続ける。


「2階の居室のドアが全部開いていましたよね。勝手に部屋の中に私たち見学者を入れてくれましたけど、普通はありえません。居室は入居者個人のプライベートな空間です。この施設では、入居者の方たちのプライバシーも守られていないのでしょう。また、この会社の系列は、壁に何も貼られていない殺風景な施設が多いんです。職員さんが積極的に催しを提案していれば、廊下の壁にイベントごとの記念写真や壁新聞、制作物などが、賑やかに貼り出されているものです」



 ケアマネとして気づいた点を次々と挙げながら、彼女は一言、こう呟いた。


「まるで養鶏場のニワトリの様です」


 もらったばかりのパンフレットを開くと、月額基本料が11万円だと書かれている。室料、食事、おやつ、服薬管理などが含まれた価格だという。身元引受人や保証人もいらず、入居前の健康診断も不要だと書かれていた。


「この辺りの住宅型の老人ホームの相場が20万円前後ですから、それに比べたら確かに安いです。安普請の建物を次々に建て、利用者を集める。しかし介護スタッフが足りないため、どの系列施設も利用者を一括で管理するような介護を行っているのです」


 パンフレットを改めて眺めると、こう書かれている。


〈独りになっても一人じゃない〉


〈長生きを心から喜べる社会を創造する〉


 人手不足という施設の都合で、利用者をほとんど飼い殺しにしている「消極的介護」。これが虐待にあたるかは意見が分かれるかもしれない。ただ一つ言えるのは、利用者一人ひとりの人生や個性を無視した、“介護”とは名ばかりの介護施設が存在しているということだ。


 山田さんが続ける。


「私の担当する女性の利用者さんは、前任のケアマネからこの会社の施設を勧められました。若いケアマネで経験も少なく、想像力が働かなかったのでしょう。その利用者さんには軽い認知症がありますが、月に一度施設に伺ってお話をし、私が帰る頃になると毎回、『私も一緒に帰れる?』と聞いてくるんです。ある時は、荷物を鞄に詰めて職員にバスの時間を尋ねたこともあったそうです。きっと、この施設での暮らしが嫌なんです。でも部屋には鍵がかかり、外には出られません。彼女から『今日は帰れる?』と聞かれる度、胸が締め付けられる思いがします」


 山田さんは、この利用者の経済状況が許せば今後、別の会社の施設に入ることを勧めようと思うと語った。


 経営の効率化や介護スタッフの人手不足は、この施設のように、利用者の生きがいを蔑ろにすることにも繋がる。だが、残念なことに、介護職の人手不足が解消される見込みはない。厚労省は、2025年度に全国の介護職が約32万人も不足すると推計している。2040年度には、約69万人の介護職が不足するといい、この数字だけを見れば介護現場は既に崩壊しているといえるだろう。





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日本は高血圧の基準値が「厳しすぎる」と医師が指摘 「75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎ。160程度が必要な人も多い」

2024年05月18日 11時05分50秒 | 医療のこと

日本は高血圧の基準値が「厳しすぎる」と医師が指摘 「75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎ。160程度が必要な人も多い」 (msn.com) 

5/15/2024

日本における「高血圧」の基準が厳しいとの指摘も(イメージ)

 服用する人が日本国民の2割に上る「降圧剤」は、日本人に多い「高血圧」の治療のために処方されている。


 一方で、そもそも薬による治療を始めるかどうかの「基準値」に目を向けると、日本高血圧学会の治療ガイドラインでは成人で診察室血圧の上(収縮期)が140以上だと高血圧と診断される。130~139は「高値血圧」で“高血圧予備群”とされ、生活指導や降圧剤治療が視野に入る。一般的には治療による降圧目標は75歳未満が130/80未満、75歳以上は140/90未満となる。
 こうした基準値については「厳しすぎる」という指摘が出ている。日本高血圧学会認定専門医で高血圧治療ガイドライン作成委員会のメンバーだった上原誉志夫医師(循環器内科)が語る。


「若いうちは130未満を目指すことが健康寿命を延ばすために有効ですが、75歳以上なら140以上はないとかえって健康によくない。加齢により血管や臓器の働きが衰えてきている人が血圧を下げすぎると、ふらつきやめまい、腎機能障害や脳血流の低下による認知症のような症状が出ると懸念されます。反対に140以上あるとそういった症状が治まる人も多い。75歳で140未満という降圧目標値では下げすぎで、160程度が必要な人も多いのです」


 医学データ解析に詳しい東海大学名誉教授の大櫛陽一氏も語る。


「降圧剤で血圧を下げすぎて脳梗塞や転倒、入浴中の溺死、交通事故が多く起きています。にもかかわらず、日本では血圧の基準値を厳しくし続けてきました。たとえば英国に目を転じると、医療機関の受診が勧められるのは上が160、下が100以上。英国は医療費が無料で財政が逼迫しているため、少しでも薬の処方を減らそうとする世界でも特殊な事情を抱えている国ですが、降圧剤のリスクを考えれば、むしろ世界で最も妥当な水準の基準値が設定されていると思います」


 日本の基準値の変遷を振り返ると、1987年の厚生省基準では180以上で「要治療」。その後、「2000年頃から日本高血圧学会が基準値を大きく下げてきた」と大櫛氏が言う。


「日本高血圧学会が米国やWHO(世界保健機関)の基準に倣い、徐々に厳格化しました。2017年に米国心臓病学会と米国心臓協会が高血圧の基準値を140/90から130/80に引き下げると、日本もそれに追随して2019年に高値血圧の基準を設定しています」


 その経緯を前出の上原医師が語る。


「日本は高血圧治療の臨床試験データが少なく、海外のデータに流されがちです。食生活や体格、遺伝子などが異なるにもかかわらず、海外の臨床試験データをもとに“血圧はとにかく下げろ”という考えに学会もとらわれすぎているのです」


一律の基準はおかしい
 米国心臓病学会などが示した厳しい基準値については、「医師と製薬会社の経済的癒着が原因と批判された」(大櫛氏)という指摘もあるし、そもそも日本と米国では医療をめぐる事情が大きく異なる点も見逃せない。


 日本と違って民間医療保険制度が主となる米国では、治療費の負担が大きくなるため、薬を服用するかは患者自身と保険会社もシビアに検討していく。


「そうしたなか、米国政府の合同委員会が2014年に改定した公式の高血圧基準値(JNC8)は『65歳以上で150以上』に緩められました」(大櫛氏)


 基準値が複数存在する米国では患者自身が基準値の背景まで調べたうえで、数値がどこまで上がったら薬による治療を開始するか、選択できる素地があるとも言える。


 一方、皆保険で自己負担が抑えられる日本では、患者が医師に言われるままに漫然と処方を受け、服用を続ける事態に陥りがちだ。前出の上原医師も言う。


「本来は、『140以上は高血圧』といった一律の基準ですぐに投薬とはせず、個人の年齢や病歴などを鑑みて降圧目標値などを設けるべきだと考えます」


 日本人にも服薬をめぐる“世界基準”の考え方が必要だろう。


※週刊ポスト2024年5月17・24日号

https://www.msn.com/ja-jp/health/other/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%BA%96%E5%80%A4%E3%81%8C-%E5%8E%B3%E3%81%97%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8B-%E3%81%A8%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%8C%E6%8C%87%E6%91%98-75%E6%AD%B3%E3%81%A7140%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E9%99%8D%E5%9C%A7%E7%9B%AE%E6%A8%99%E5%80%A4%E3%81%A7%E3%81%AF%E4%B8%8B%E3%81%92%E3%81%99%E3%81%8E-160%E7%A8%8B%E5%BA%A6%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E4%BA%BA%E3%82%82%E5%A4%9A%E3%81%84/ar-BB1mlAM8?ocid=msedgdhp&pc=NMTS&cvid=d2e2315e91fa4caaa2948bb48ae9bf3c&ei=11

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免許を返納したら「要介護」まっしぐら?老け込むか若々しくいられるか「70歳」の行動が“運命の分かれ道”である理由

2024年05月17日 22時05分18秒 | 医療のこと

免許を返納したら「要介護」まっしぐら?老け込むか若々しくいられるか「70歳」の行動が“運命の分かれ道”である理由【有名精神科医が解説】
 (msn.com) 




5/15/2024
(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の医療をずっとやってきた私の経験から言わせてもらうと、血圧や血糖値がやや高めのほうが元気だし、コレステロールは高めの人のほうがむしろ長生きしている。そのほうが癌にもなりにくいというのが、ある種の疫学調査みたいなことでもうわかっているわけですね



高齢になってすっかり老け込んでしまう人、いつまでも若々しい人、同じ年齢でも大きな差が出てくるものです。70歳ともなれば意欲や好奇心に衰えがみえることも少なくありませんが、どうすれば体も心も若くいることができるのでしょうか。今回は和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋して、「若さ」と「自動車の運転」の関係性も交えながら解説します。


老け込む人、若い人、「70歳」が運命の分かれ道
いまのご時世、60代ではまだまだ現役で働いている方は多いし、ルックスも頭も若々しい方がたくさんいらっしゃいます。ところが、元気に60代を過ごしてきたとしても、70代になると、さすがに体のあちこちに異常を感じるようになる。
そこで検査を受けてみると、血圧が高い、血糖値が高い、コレステロール値が高いなどと医者に言われ、あれやこれやの薬が出されて、それらの高い数値を「正常値」まで下げる、いわば〝引き算〞の治療をされることになります。


私は、それにはいささか異論があって、以前出した『70歳から一気に老化する人しない人』(プレジデント社)という本の中で、「年をとったら引き算医療をやめて、足し算医療にしよう」という提案をしました。



どういうことかというと、塩分の取りすぎはだめだとか、糖質のとり過ぎはよくないとか、血糖値が高ければ下げましょう、血圧が高ければ下げましょう、コレステロールが高ければ下げましょうと言われます。私はこれを「引き算の治療」と呼んでいるわけです。


高齢者の医療をずっとやってきた私の経験から言わせてもらうと、血圧や血糖値がやや高めのほうが元気だし、コレステロールは高めの人のほうがむしろ長生きしている。そのほうが癌にもなりにくいというのが、ある種の疫学調査みたいなことでもうわかっているわけですね


それはなぜかといえば、年をとればとるほど、「あり余っている」害より「足りない」害のほうが大きくなるからです。


つまり、血圧を下げすぎると(足りなくすると)頭がふらふらする。そうすると転んで骨折して、そのまま寝たきりになる恐れもある。血糖値とか、ナトリウム(塩分)を下げすぎて(足りなくして)しまうと、意識障害を起こして頭が朦朧(もうろう)としてくる。つまり「足りなくなった」ための害が高齢者の交通事故の大きな原因になっていると思うのです。


高齢者の交通事故の場合、動体視力が落ちているから、飛び出してくる子供が避けられなかったとかいう話だったらわかるけれど、報じられている事故のほとんどはいわゆる暴走とか逆走です。ということは、意識が朦朧としていたのが事故の原因ではないかと考えられる。


たとえば低血糖の状態を起こすと、ボケたようになって失禁したりすることがわかっています。そのように、意識障害を引き起こすのは、何かを下げたり、何かが足りなくなった場合であることが多い。年をとるといろいろなものが足りなくなってくるんです。


ずっと頭痛がするという患者さんがいたので血液を調べてみたら、思ったとおり亜鉛が足りなかった。それで亜鉛を摂取するようにしたら、頭痛はすっかり治ったこともありました。


男性の場合、年をとればとるほど足りなくなってくる最たるものが男性ホルモンです。男性ホルモンが足りないと、まず性欲だけでなく意欲そのものが落ちる。それから人付き合いがおっくうになる。同じだけ肉を食べて同じだけ運動していても、筋肉が落ちてくるので足腰が弱る。だから男性ホルモンを足してやると頭も冴えてくるし、意欲も出てきて筋肉もついてくるから、要介護になるリスクが減るわけです。



年をとったら、検査データが異常に高くて「余っている」からって無理に薬で下げるなんてバカなことはしないで、たとえば食べ物の品数を増やすとかして、逆に足りないものを足していくほうが老化は防げるということです。そういう足し算医療をするかしないかで、70歳から一気に老化するか、はつらつとしたままでいるかが決まる。


同じ70代でも、すっかり老け込んだおじいちゃんおばあちゃんにしか見えない人と、若々しさを感じさせる人に分かれてしまうんです。たとえば女優の吉永小百合さんは、もう70代後半のはずですが、とても若く見えますよね。


だから70代という年代はとても大事で、この時にもっともっと体や頭を使い続けると若々しくいられるし、そうでないとどんどん老け込んでしまう。


そういう意味で、70歳になったからといって、たとえばずっと続けてきた体を動かす趣味とかをやめたりせずに、ずっとやり続けていくことが、足し算医療とともに、重要になってくる。というのは、体も頭も若くとも、やはり70代になると意欲や好奇心が衰える人が多いからです。


免許を返納した高齢者は「要介護」まっしぐら
だから、50代、60代の時に、趣味でも何でもいいんですが、70歳以降はこういうことをしようって決めておくといいんです。その意味で言うと、先ほど自動車事故について触れましたが、実は自動車の運転というのが意外に重要な鍵になります。


東京のような大都会では公共交通が発達しているから、クルマは別になければないですむし、もともと運転していない人も多いけれど、地方では、いったん免許を返納してしまうと外に出る回数が激減する人や、めったに外出しなくなる人がすごく増えてしまいます。


それに、東京の人はあまりイメージが湧かないかもしれませんが、地方に行くと、高齢者も含めて地元の人が運転していく場所というのは、だいたいイオンモールのような大きなショッピングセンターなんですね。



大きいショッピングセンターに着くと、広い駐車場から入り口まで歩かなければならないし、店の中を歩き回るので、けっこう運動
になるんですよ。


そういう意味で実はクルマを運転するということは高齢者にとって非常に大切で、筑波大学の調査だと、免許を返納すると5年後に要介護になる確率が2.2倍ぐらいになってしまう。もっと過激なものでは8倍になるというデータさえあるんですね。だから免許を返納したら最後、要介護にまっしぐらというわけです。


マスコミは長きにわたってコロナ自粛を叫び続けていましたが、それも多くの高齢者を家に閉じ込める結果になりました。にもかかわらず、そのせいで要介護高齢者がものすごく増えてしまったことに対する責任なんて、新聞もテレビもいっさいとろうとしない。


私がいちばん気になったのは飯塚幸三さんという元通産省技官の偉い研究者が、2019年4月に池袋で起こした衝突事故です。母子2人が亡くなったのに逮捕されなかったのは「上級国民」だからだとか、ずいぶん非難されました。だけど飯塚さんは当時88歳で、本人もケガをしている。


そんな高齢者は普通、逮捕しないのが日本の司法ですから、それほど特別扱いされたとは思えませんが、仮にひいきされていたとしても、彼は別にふだんから暴走族みたいな危険運転をしていたわけではありません。本人も奥さんも怪我をしているわけですから、まあ、不注意というか、ブレーキとアクセルを踏み間違えたのでしょう。


だけど、彼が事故を起こしたことについて多くの人が「年寄りのくせに運転したからだ」みたいな言い方をするのはちょっと違うと思う。実は年寄りの暴走事故というのはそんなに多くないんです。


なぜ年寄りが運転すると危ないかといえば、動体視力が落ちてきて、子供が飛び出してきても気づくのが遅れるとか、いわゆる運転技術が衰えてくると考えられるからです。にもかかわらず、マスコミが盛んに取り上げるのは、年寄りが暴走したり逆走したりする事故ばかり。なぜならそれはめったにない珍しい例だからです。


しかも死亡事故となるとさらに少ない。「上級国民」である飯塚氏の事故がことさら大きく取り上げられたから、高齢者の自動車事故の代表みたいな話になったというだけのことです。ニュースを見たり聞いたりするときに必ず考えなくちゃいけないのは、それが珍しいからニュースになるということです。


犬が人間を嚙んでもニュースにならないが、人間が犬を嚙むとニュースになるというのがニュースリテラシーなんです。高齢者の暴走事故そのものもめったにないし、それによって人が死ぬ事故なんてもっと珍しいわけですね。


ふだん普通に運転している人が突然、暴走するというのは、我々老年精神医学に携わっている人間から言わせると、実は意識障害を起こしていた可能性が高い。つまり意識が朦朧としているのに体は起きている状態だから、わけのわからない運転をしてしまうということです。


その時たまたまアクセルを踏んでしまうと暴走になるし、方向感覚がわからなくなると逆走になる。それだけのことです。昔のマニュアル車と違って、いまはほとんどのクルマがオートマチックだから、そういう状態でも運転できちゃうんですよ。


その意識障害の原因なんですが、年をとってくると、たとえば血糖値のコントロールがうまくいかなくなって、ちょっと強めの糖尿病の薬を飲んでいると、血糖値が下がりすぎて意識障害を起こす。あるいは昨日眠れなかったので睡眠薬を飲んだために頭がボンヤリする。それから、塩分を控えすぎて低ナトリウム血症を起こし、意識が朦朧とするケースもあります。


やはりお年寄りにあまり薬を飲ませすぎるのは危険だというような話にならないと、事故の再発は防げないでしょう。若者の暴走族のような意図的な暴走による事故なら、厳罰化すれば防げるかもしれませんが、意識が朦朧として事故を起こすのであれば、まずそういう状態にさせないことです。


高齢者に薬を飲ませすぎないということも含め、根本的な対応が必要になります。ところがテレビ局はスポンサーである製薬会社に忖度して、そんなことは言ってくれません。


いずれにしても、高齢者が事故を起こすとすぐにほかの高齢者まで免許返納という話になりますが、免許を返してしまったら、あとは要介護にまっしぐらです。運転はできる限り現役で続けてください。少なくとも地方に住んでいる方は絶対に早まって免許を返してはいけません。


和田 秀樹


精神科医








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二女タイプ(エニアグラムでいうところのタイプ6)は、男性も女性も、男好きです。えっ、そうなの?

2024年05月12日 23時07分02秒 | 医療のこと



二女タイプ(エニアグラムでいうところのタイプ6)は、男性も女性も、男好きです。えっ、そうなの?



竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)
5/1(水) 20:26
こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


今日は、「二女タイプは、男性も女性も、男好きです」というテーマでお話ししたいと思います。


私は、生まれつき性格をずっと研究している心理カウンセラーです。


性格は、ひとつの防衛機制だという言葉がありますが、言い得て妙だと思います。威張っている人は、威張っていることによって、自分の身を守っているのですし、腰が低い人は、腰を低くさせていることで、自分の身を守っているのです。


私(竹内成彦)は、末っ子タイプ(エニアグラムでいうところのタイプ4)です。私は、「優しい人と居れば自分の身を守れる」と、深層心理で考えているタイプです。


そんな中、「力強い人と居れば自分の身を守れる」と考えているタイプがいます。それは、ズバリ、二女タイプ(エニアグラムでいうところのタイプ6にあたります)です。


二女タイプは、「力強い人と一緒にいれば安全だ」と深層心理で考えているのです。だから、二女タイプは、必然的に女性より男性が好きになります。


これは、男性も女性もそうです。
男でも、二女タイプは、男友達を大切にするし、
女でも、二女タイプは、男前の女子や男らしい男子を好みます。


宜しいでしょうか?


二女タイプは、男性も女性も「男好き」ということをどうぞ覚えておいてください。これは、ゲイとか、男にだらしがない…という意味では決してないので、そこのところは、どうぞ勘違いなさらないようにして下さい。


ちなみに、有名人で言えば、タモリさんや関根勤さんや出川哲郎や笑福亭鶴瓶さんが二女タイプにあたります。彼らは、たとえエロ話をしても、全然いやらしさを感じないでしょ? そうそれは、彼らが男好きだからです。


二女タイプの子が、不登校になったとき、
両親が心配のあまりオロオロすると、二女タイプの子の精神状態は一気に悪化します。自分自身も、不安の大きな渦に巻き込まれるからです。よって、二女タイプの親、特に父親は、嘘でもいいので、子どもの前では、力強い男を演じていかねばなりません。


二女タイプは、精神状態が悪くなるとパニックになり、ときに家庭内暴力を起こします。親に向かって、「俺がこうなったのは、お前ら親のせいだ。土下座して謝れ!」と言うことがあります。


こんな時、親は土下座して詫びてはいけません。
よけいに子どもの精神状態が悪くなり、家庭内暴力が激化するからです。


私は、二女タイプの子を持つご両親は、子どもの精神状態が悪くなったら、性格心理学に詳しいカウンセラーの許を訪ね、自分自身の心を、精神的に、しっかりと、カウンセラーに支えてもらったほうがいいと思います。そのほうが、親自身の心が安定し、結果、子どもの心も安定するからです。


ちなみに私は、二女タイプのクライアントがご来室されたときは、優しいカウンセラーではなく、頼もしいカウンセラーをやっているのですよ。そう、半ば、演技です。そのほうがクライアントが安心するので、そう振る舞っている…というわけです。


あと、二女タイプは、力関係に敏感です。
「誰がこの場で力を持っているか?」気にする傾向が強いです。


よって、二女タイプは、人見知りではなく、グループ見知りをします。


1対1だったら平気だけれど、新しくグループの中に入る時に、非常に緊張を覚える…という意味です。このあたりも、キャラ(生まれつき性格)を学んでいくと、よくわかる面白い事象です。


さてここで、ご質問にお答えしたいと思います。
私の記事を熱心に読んでくださっている読者様から頂きました。
「カウンセラーなら、誰でも生まれつき性格に詳しいのですか?」という質問ですが、答えは「いいえ、そんなことはありません」というものになります。


ハッキリ申し上げて、生まれつき性格の知識が、ほとんどないカウンセラーのほうが多いです。このあたりは、「何とかしなくてはいけないな」と、私も強く思っているのですが、なかなか難しいです。正直私は、生まれつき性格の知識は、カウンセラーにはなくてはならないものだと思っています。


というわけで、今日は以上です。
ご自分の、そして他人の、生まれつき性格を知りたい方は、どうぞお近くの、キャラ診断アドバイザーをお訪ねください。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。


      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。



竹内成彦


心理カウンセラー(公認心理師)
1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。


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2050年医療の未来予測「病気で簡単に死ぬことはなくなる」と専門家が語る驚きの理由

2024年05月12日 22時05分09秒 | 医療のこと





2050年医療の未来予測「病気で簡単に死ぬことはなくなる」と専門家が語る驚きの理由
5/11(土) 7:10配信


介護ポストセブン
2050年、医療の世界も大きく変わると予測されている


「安楽死」が世界中で話題になったのが2002年、それからおよそ四半世紀。私たちが生きる社会は大きく変化し、女性をとりまく環境にもうねりがあった。では、次の節目である2050年の頃、次世代を生きる子供や孫たちは何を考え、どんなふうに生きているのか。医療や寿命はどんな変化遂げているのだろうか――専門家に意見を聞いた。


【画像】2050年の未来予想図「予防医療が進み、寿命が見える化」未来の医療の進化のイメージ写真


教えてくれた人
奥真也さん/医師。『未来の医療年表』の著者、早野元詞さん/慶応義塾大学医学部特任講師であり、老化研究の第一人者


2050年、医療の世界は大きく変わる
「2050年には、医療は“完成期”に入ります。人間が病気で簡単に死ぬことはなくなるでしょう」


 驚くべき未来を語るのは、『未来の医療年表』の著者で、医師の奥真也さん。日進月歩の医療の力によって近い将来、現在の日本において2人に1人が罹患し、死因のトップであるがんの撲滅が期待できると話す。


「この四半世紀で遺伝子の解析技術が飛躍的に進化し、がんを引き起こす特定の遺伝子を攻撃する画期的な薬である『分子標的薬』が登場しました。


 さらにがん細胞による免疫機能の弱体化を防ぐ『免疫チェックポイント阻害剤』も発展を続けています。これら2つの薬によって2035年にはほとんどのがんが治癒可能になり、がんは“死なない病気”になると考えられます」(奥さん)


 四半世紀後を待たずして克服が可能になる病気はがんだけに留まらない。2018年時点の国民健康・栄養調査で、予備群を含めると約2000万人の患者がいた糖尿病も解決が可能になると奥さんは続ける。


「現在の医療では糖尿病の治療は対症療法に留まり、一度罹患すると一生つきあう必要がある。しかし糖尿病もがんと同じく、特定の遺伝子が発病に関与することが解明されつつあり、遺伝子解析の進行とともに特効薬の開発が進んでいます。2040年頃には糖尿病を根本的に解決できる可能性があります」


予防医療が普及していく
 あらゆる病気の治療法が確立され診療現場へのAI導入も予測されているが、そののちに到来する2050年には、病気そのものをブロックする「予防医療」が普及していくことが予測される。


「治療法の開発と同時に、『どんな条件下で病気を発症するか』を明確に見通すための研究も急ピッチで進んでいます。その結果次第で人々の行動は大きく変わることが予測されます。


 例えばたばこがあらゆる病気のリスクファクターだとわかってから喫煙者があっという間に減少したように、近い将来、アルコールや砂糖などの嗜好品の弊害が明らかになり、消費する人が激減する可能性は大いにあります。


 高級ホテルのバーで提供されるカクテルや、ラウンジでコーヒーと一緒に提供されるクッキーも『一流ホテルが体に毒になるものを出すなんてけしからん』と批判される時代が来るかもしれません」


指輪型端末「スマートリング」の進化
 未来に思いをはせ、熱く語る奥さんの指にきらめく「スマートリング」と呼ばれる指輪型の端末も、大きな進化とともに医療へのコミットが予測される。


「現状では静脈や手の動きなどを計測して心身の疲労度や睡眠、運動量と休息のバランスなど自分の健康状態を知るために使用されていますが、予防医学が発展し、特定の病気に罹患しやすい人の傾向などビッグデータが集まれば、スマートリングで得られる個人の生体データとビッグデータを組み合わせ、オーダーメード式の予防医療が可能になります。


 例えば“20代で体重がこれだけ増えたら40代で高血圧になる”などと具体的にわかるようになるのです。現状はビッグデータの収集段階ですが、あと10年もすれば個別化された予防医療が浸透し、ますます人間は病気から遠ざかっていくでしょう」(奥さん)


「寿命」の見える化が進む
 スマートリングのような端末やセンサーが普及すると、寿命の“見える化”が進み、健康長寿のために今日やるべきことをAIが教えてくれる──。


 そんな未来予想図を語るのは、慶応義塾大学医学部特任講師であり、老化研究の第一人者である早野元詞さん。


「将来的には家の中のあらゆる場所にセンサーが設置され、起床時の動作や眼球の動き、唾液の量などから日常的にさまざまなデータが収集できるようになるはずです。集まったデータにスマートリングで得た生体データやビッグデータなどを加えると、老化の進行状態が可視化される。


 その結果、AIが『あなたの寿命はあと20年4か月です。今日10km走ると寿命が20年6か月まで延びます』などと教えてくれるようになるでしょう」


 テクノロジーの恩恵を受けながら、老化予防や治療に力を注ぐことが予見され、健康寿命や最大寿命の「延び」は維持されるだろうと早野さんは続ける。


「明治期に40代だった日本人の平均寿命は120年後の現在、ほぼ2倍である80代に達しています。残念ながら2050年の段階ではまだ人口全体での平均寿命はいまとほとんど変わらないと思います。


 しかし、若い世代を含め最先端技術と組み合わせて老化を予防、治療していく一定の層から健康寿命が延びていくことは推測できます。最先端の医療や技術にアンテナを張って正しく使用していくことで、元気な100才は珍しくなくなり、現状における史上最高齢である122才を突破する人が出てくるかもしれません」


文/池田道大 取材/小山内麗香、戸田梨恵、平田淳、伏見友里、三好洋輝


※女性セブン2024年5月9・16日号



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