ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

内緒だよ

2019-11-15 07:00:00 | 大人の童話
「おあっ!?」 
おとうさんの 大ごえで ぼくは 目が さめた。
ゲームを しながら ねむっちゃった みたいだ。
「おーい!虫かごだ 虫かご!」
大いそぎで おし入れを あけて 虫かごを つかんで リビングに はしる。
ドアを あけると おとうさんは ソファーの 上に ひざで 立っていた。
目を まんまるく して りょう手を まえに つき出して いる。
手には 金色の 毛が にぎられて いて その あいだで はだいろを した なにかが びちびちと うごいて いた。
「はやく!虫かごを くれ!」
ぼくが 虫かごを さし出すと お父さんは それを おしこんで 口を パチンと しめた。
「どうしたの?ながい ひるね だと おもったら」
おかあさんが カレーの においを させながら へやに 入って きた。
「あ おかあさん」
おとうさんは くびを ねじって おかあさんを 見た。
「よ ようかいを つかまえたんだ」


ぼくたちは 虫かごを かこんで 中を のぞいた。
耳が ながくて 金いろの たてがみと ふさふさの しっぽが 生えている。
大きさは ぼくの 人さしゆび くらい。
ほかは つるんと ふとった 赤ちゃん みたいだ。
大きな 青い 目で きょときょとと
ぼくたちを 見ている。
「ゆめの 中に こいつが 出て きたんだ。おれの しんだ おじいちゃんに きいた はなしを おもい出して つかまえた」
「どんな はなし?」
まだ すこし こうふん している おとうさんに おかあさんが きいた。
「こいつは ゆめで つかんだ まま 目を さますと げんじつに なる。そして こいつの なみだは ほう石に かわって しあわせに なれるんだ」
「なみだって どうするの?」
「わからない。でも おれは いなかに いえが ほしいんだ」
「こまったわね」
ばくは 口を はさんだ。
「おじさんと おばさんに きいて みたら?」
おとうさんが こわい かおをした。
「子どもは だまって いなさい!」
ぼくが なにか いうと いつも こうだ。
「あら それが いいわよ。おとうさん でんわよ でんわ」
おかあさんに せかされて おとうさんは でんわを かけに いった。


でんわで わかったのは パルミンって 名まえの ようかいだって ことと つかまえても だんだん 小さく なって にげられるって こと だけ だった。
「うーん」
おとうさんは しばらく うでぐみを した あと きゅうきゅうばこから ピンセットを とり出した。
さくの あいだから さきを 入れて パルミンの うでを つんつん つつく。
うでは くにょんと へこんで すぐに もとどおり。
こんどは 足を つまんで ひっぱって みる。
パルミンは すこし かおを しかめたけど ピンセットを はなすと やっぱり ぷるんと もとどおり。
「やめてよ おとうさん かわいそうだよ」
おとうさんの 目が つり上がった。
「うるさい!じゃあ どうするんだ!」
おかあさんが のんびりと いった。
「とりあえず なにか たべさせましょうよ」
おとうさんの 目じりが もとに もどった。
「ぼく ハチミツが いいと おもう」
「そうね」
おかあさんが にっこりと わらった。

ぼくは ペットボトルの ふたに ハチミツを 入れて パルミンの まえに さしだした。
「ハチミツだよ のむ?」
パルミンは りょううでを いっぱいに ひろげて ハチミツを うけとると 口を ちかづけた。
ほおを ぎゅっと すぼめて すいこむと まるい おなかが どんどん ふくれて いく。
パルミンは ハチミツから 口を はなすと ぼくを 見て にっこりと わらった。
ぼくは ドキッと して とても こまって しまった。
「かわいいわねぇ」
おかあさんは にこにこ した あと まじめな かおを して おとうさんを ふりむいた。
「なかせる なんて とんでも ないわ」
「じゃあ ほう石は どう するんだ」
「あきらめたら?いじめたら ゆるさない わよ」
二人は にらみあった まま だまって しまった。
おそるおそる ぼくは いった。
「はなして あげても いいんじゃない?」
おとうさんは かおを 赤く して 虫かごを じぶんの へやに もって いって しまった。


そのよる ぼくは ゆめを 見た。
ぼくは パルミンと おなじ 大きさに なって ならんで もりの 中を あるいて いた。
ころばない ように 下ばっかり 見ていると きゅうに あかるい ひろばに でた。
パルミンは うれしそうに たいようを 見上げると 大きく 口を あけた。
かおの はんぶん くらい ありそうな 口に 日ざしが どんどん すいこまれて パルミンの からだを かがやかせては きえて いく。
パルミンが ふりむいて 目が あうと あたまの 中で こえが ひびいた。
ーまねして みてー
ぼくも 大きく そりかえって たいように むかって 口を あけると お日さまの パワーが ぐわっと とびこんで きた。
どんどん からだが あつく なる。
からだじゅう エネルギーで パンパンに なると ぼくは ふわっと うき上がった。
よく見ると 森に 見えたのは 草やぶで ほそながい はっぱが たくさん 生えて いた。
パルミンが とびつくと はっぱは 大きく しなって 手を はなした パルミンを 大きく 上に とばす。
ぶら下がったり 上に のったり パルミンは たのしそうに とびうつって いく。
ぼくも まねをして とびのると はっぱは トランポリンみたいに ぼくを はね上げる。
少しずつ たかい はっぱに とびうつって いくと 5かい目で つるっと 足が すべった。
ーおちるっ!!ー
そのとき しゅるっと たてがみと しっぽが 生えて 右と 左に ぶんぶん まわりだした。
こんどは ぐんぐん 上がって いく。
パルミンが よこに とんで きて ぼくの 手を にぎった。
目が あって パルミンが にっこり わらうと ぼくも しぜんに えがおに なる。
きゅうに びゅうっと つよい かぜが ふいた。
ぼくたちは 上に とばされた けど パルミンと いっしょだから ぜんぜん こわく ない。
まわりを ぐるっと 見て みると ユリの 花びらが たくさん おどって いて いろんな いろを した パルミンの なかまたちが 花びらに だきついて たのしそうに とびまわって いる。
ーせーのっー
ぼくたちも 花びらに とびのると 上に 下に 右に 左に そして くるくると なみに はまった みたいに そらを びゅんびゅんと とんで いく。
「ひゃっほーっ」
かっ手に こえが でた。
ほかの パルミンたちの きもちも つたわって くる。
わくわく どきどき うれしいっ!たのしいっっ!!
ーあー
ぼくは きがついた。
ここは ときどき ともだちと キャッチボールなんかを する かわらの よこだ。
いわが おとうさんの かおに かわった。
「子どもは だまって いなさい!」
ぼくは さかさかまに おちて いった。


「おはよう」
ぼくが かおを あらって リビングに いくと おとうさんと おかあさんは あさごはんを たべて いた。
「あら はやいわね。なつやすみなのに」
おかあさんは 立とうと したけど ぼくの かおを 見て すわりなおした。
ドキドキ しながら ぼくは いった。
「おとうさん パルミンを いじめない なかせかたは 見つかった?」
おとうさんは むっとした。
「あるわけ ないだろ」
ぼくは しんぞうが ぎゅっと なったけど いきを 大きく すって おねがいした。
「じゃあ はなして あげて」
「うるさい!子どもは だまって いなさいって いっただろ!」
こわくて 目のまえが くらく なった けど りょう手を ぎゅっと にぎると パルミンの 手の かんじが もどって きた。
「かわいそうだよ。どうせ にげちゃうなら にがして あげようよ」
「口ごたえ するな!」
ぼくは がんばった。
「おねがいだよ。しぜんの 中で くらしたいんだ よね。だけど ここにも しぜんが あるよ。かわらとか はらっぱとか。ぼくは ちゃんと そとでも あそべるよ!」
「なまいき いうな!」
「パルミンも のびのび くらしたいんだ。なかまと いっしょに いたいんだよ!」
「それも そうね」
おかあさんが たすけて くれた。
「この子も こんなに いってるんだし はなして あげましょう」
おとうさんは だまって おかあさんの かおを 見つめた。それから ぼくの ことも じっと 見て いった。
「わかったよ。しかたないな」


ぼくは パルミンを ポケットに 入れて かわらに いった。
だれも いないのを たしかめて くさむらの 中で そっと 左の 手のひらに だす。
「ごめんね。パルミン」
パルミンは くびを かしげた。
「ここで いい?」
パルミンが うなづく。
「そういえば パルミンって ぼくたちを 『にんげん』って よぶのと おなじ だよね。きみの 名まえは?」
パルミンは くびを ちょっと かしげて から よこに ふった。
「ないの?」
こくっと うなづく。
「じゃあ ぼくが つけていい?きみは ゆめの 中で あそんで くれた。だから ぼくは ゆうきを だして おとうさんに おもった ことを いえたんだ。ぼくには きみは とくべつで 大せつな パルミンだから」
また うなづく。
「きみの 目の いろは きれいで あかるい 青だから『そら』。そらで いい?」
そらは 大きく うなづいた。その目から 青い ひかりの つぶが ながれて おちる。それは ぼくの 手の くぼみに あつまって うずらの たまご みたいに 大きくて すきとおる きれいな 青い 石に かわった。
おどろいて かたまって いると とおくから 人の こえが した。
ぼくは はっとした。
「見つかったら 大へんだね。さびしいけど さよなら」
ぼくは 右手で 石を つまんで そらが かかえやすい ように まえに 立てた。
「これは そらの なみだ だから そらの だよ」
そらは 目を ぱちぱち させて から 口を 大きく よこに あけて にいっと わらった。
そして 石に すいつくと ゼリーの ように のみこんだ。
ーこれで ともだち だねー
あたまの 中で こえが ひびく。
そらは とびたつと 草に まぎれて すぐに みえなく なった。


一しゅうかんご 青い ふうとうが とどいた。
おとうさんが おうぼしていた みなみの しまの とくべつしょくいんに さいよう されたんだ。
かぞく みんなで 二ねん しまの せんでんを すると ふるい いえも もらえる らしい。


ぼくは そらの なみだの ことを おとうさんと おかあさんに はなして みた。
おとうさんは めずらしく おこらないで きいて くれた。
「そういう しくみか.......じゃあ ほかの 人には ないしょ だな」
「うん。そうだね」
ぼくは げんきに へんじを した。


でも ぼくには まだ ひみつが ある。
あのあと ほかに 人が いないとき、パルミンたちは 出てきて くれて いっしょに あそぶように なったんだ。
あたまの 中で はなしも できるし いまでは みんなと なかよしで はなれるのは すごく さびしい。
だけど パルミンの なかまたちは いろんな なまえで よばれながら せかい中に たくさん ちらばって いるんだって。




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『Lの物語』に登場した、公爵夫人のリラが、収集した民話に出てくる妖精も、パルミンの仲間です。
番外編の童話として書きました。
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『ぼく』のお父さんが南国に転居したかった理由は、もう一つありました。
妻がとても、風邪をひきやすかったのです。
彼女は体調を崩した時に、市販のマスクでは、呼吸がしにくくなったことがありました。
以来、その時立体マスクで型を取り、自作したしたものを、愛用しています。


材料
ダブルガーゼ 36cm×17cm 2枚
マスク用ゴム 30cm


道具
ミシン
裁縫セット

1 型紙の上下に1cmの縫い代を付け、ガーゼ2枚を裁断する。
2 中央上下のタックを縫う。
3 ガーゼを中表にし、横に返し口を残して、1cmの縫い代で縫い合わせる。その際、タックは逆方向に倒す。
4 返し口から表に返し、返し口を閉じる。
ミシンでOK。
5 上辺中央部を7cm、縁から2㎜の位置で縫う。同様に下辺は4cm縫う。
5 横のゴム通し部分(平行四辺形部分)を、2つ折りにし、筒状になるように縫う。
6 ゴムを通し、実際に着用して長さを調整し、返し縫いで輪にする。
丸ゴムの方は、結んで輪にする。

このマスクはレギュラーサイズで大き目です。
縮尺してお好みのサイズになさって下さい。