道は意外と平坦だった。
壁面の内側は、光る苔が覆っている。
セランは手燭であちらこちらを照らしながら歩いた。
蝋燭の火は、息が出来る目安にもなる。
こんな道が続くのであれば、子供でも通れるだろう。
なくもないだろう。
セランは好奇心と共に、先に進んだ。
暫くすると、体が暖まってきた。
歩いた為かと思ったが、やはり空気が暖かい。
どの位歩いただろうか。
二人で拉致された時、ルージュサンが脈で時間を計っていたのを思い出した。
引き返そうとした時に、ぼんやりと光が見えた。
足元を見るのも忘れ、先を急ぐ。
光は次第に大きくなって、不思議な光景に変わった。
馬場より広い空間が、淡く光っている。
一面に生える苔と羊歯が、光を放っているのだ。
天井の切れ目からは三ヶ所、光が差し込んでいる。
中に入ると、服も要らない暖かさだ。
草の色はとりどりで、木の背は低く実を付けているものも多い。
地面の一角から水が涌き出ていて、いくつかの窪みを満たしてから消えている。
木も草も苔も、見たこともない植物ばかりだ。
独自の生態系が出来上がっているのだ。
草の間を覗き込み、木の実を齧る。
全てが珍しく、セランは夢中になった。
泉の水に触れてみて、水面に映る自分の顔に、セランはに帰った。
踵を返して、広場を後にする。
ここに、ルージュサンはいないのだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます