ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

Rの物語ー屋敷の人々ー

2019-12-27 07:00:00 | 大人の童話
「そりゃまあ見事な食べっぷりでしたよ。あれは、皮袋まで食べてしまわれる前に、船を下ろされたに、違いありませんね」
メイド頭のマルは、威勢良くしゃべりながら、下げた食器を料理人に渡した。
「そんなにガツガツなさっていたんですか?」
眉をひそめたヤンに、マルが得意気に二重顎を上げた。
「いえいえ美味しそうに召し上がってましたよ。動きに淀みがないから、小さなお口でもご主人様と一緒に食べ終わるのです。優雅なものでした」
「量は足りてらっしゃいましたか?」
「ご満足なさったようですけどね。私がうっかり、鳥の煮込みをこぼしてしまった時にも、ご自分より私の心配をなさるんです。あんなだから、私の倍も召し上がるのに、やせっぽっちなんですよ。美味しいものをたぁんとお出して、少しはふっくらとさせて下さいな」
ーマルは随分と気に入ったらしいー
ヤンは笑いを噛み殺しながら聞いた。
「不得意な物、特にお気に召されたものはありませんでしたか?」
「ああ、飴細工の作り方をお聞きになって…あら」
ルージュサンがタカタカと、こちらに歩いて来るのが目に入り、マルは言葉を止めた。
「あ、マルさん、指は大丈夫ですか?」
マルは満面の笑みで右手をひらひらと振った。
「もうなんともないですよ。ほら、この通り」
ルージュサンも笑みを返す。
「ああ、良かった。ところでヤンさん」
そちらにも笑顔向ける。
「全部、とても美味しかったです。ご馳走さまでした」
「それは良かった。光栄です」
「ところで、あの飴細工はどうやって作るのですか?。とても綺麗だったので、今度見せて頂きたいのです」
くるくると表情が変わる、
ヤンは自分の娘を思い起こした。
自然と優しい笑顔になる。
ーまずはここの暮らしに慣れることー
ルージュサンは自分に言い聞かせた。
水の扱いも、生活のリズムも全く違う。
面白いことは山ほどあった。
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ルージュサンは翌日、飴細工の作り方を見せて貰い、大喜び。
そして簡単な飴も、作らせてもらいました。

飴を使った簡単デザート
家にあるものを使いました。





材料
きび砂糖 30g
水 小さじ1
バターオイル 少量
簡単カスタードクリーム (Aの物語ー転換ーを参照)
果物
ワッフル

道具
アルミホイル オープントースターに入る大きさで、縁部分を持ち上げたもの。


作り方
1ー砂糖と水を混ぜ、バターオイルを塗ったアルミホイルに伸ばす。
2ー500ワットで4分加熱する。
3ーぶくぶく泡立たなければ少しずつ追加で加熱し、冷ます。
4ーワッフルと果物を切り、カスタードクリームと混ぜる。
5ー3を砕いて乗せる。









Rの物語ー順応ー

2019-12-20 07:00:00 | 大人の童話
メインディッシュの子牛を嬉し気に頬ばるルージュサンに、公爵は目を細めた。
妻を亡くし、息子に先立たれて、一人での食卓が続いていたが、食事を共にする者として、ルージュサンは申し分なかった。
大食漢の自分と同じ量を、同じペースで食べ進める。
細い体のどこに入るのか、大いに謎ではあったが、その様子は頼もしく、小気味良かった。
ルージュサンが、デザートに乗っている飴細工に目を見張る。
「チチウエ、これはどう作るのですか?」
切り替えもなかなか早かった。
『チチウエ』こそ、ぎこちないが、伸び伸びと快活にしていると、子供らしくて微笑ましい。
船でもきっと、こんな調子で愛されていたのだろう、とも思う。
「では今度、作るところを見せてもらおう」
「はい」
ルージュサンは、少しだけ躊躇ってから、飴細工を砕いた。

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子爵は実は便秘症。
料理人のヤンは、試行錯誤の末、オクラにたどり着きました。
色々な冷製スープで作って、毎日食事に出しています。






オクラ水我が家バージョン
ねばねばつるつる、ご飯にも納豆にもよく合います。
お通じに、効果抜群です。

材料
オクラ 1袋
水 300cc
削り節 9g
味噌 大さじ 1

1ーオクラを輪切りにし、全ての材料を混ぜる。
2ー時々かき混ぜながら、1日まつ。

材料の分量はお好みで。






Rの物語ー心構えー

2019-12-13 07:00:00 | 大人の童話
ガッタン、ゴトトンと、時折大きく弾みながら走っていた馬車から、舗装された道を軽快に飛ばす音が聞こえて来るようになった。
元船乗りを養女として連れ帰ることは、先に手紙で知らせてあったし、『変わり種が多い船員達にこぞって教え込まれた』豊かな教養も申し分ない。後は。
「そろそろ屋敷に着く」
向かいに座るルージュサンに、子爵は声を掛けた。
「今日から、屋敷と店がお前の船だ。陸の暮らしは船の暮らしと全く違う。馴染めぬことも多いだろう。けれども私はお前の父だ。大いに甘え、頼って欲しい」
ルージュサンは、僅かに目を見開き、微笑んだ。
「よろしくお願い致します」
子爵は苦笑した。
「少しずつでいい。他人行儀は止めていくように。まずは『はい。父上』位でどうだ?」
ルージュサンは戸惑いながら声にした。
「はい。ちチウエ」
ぎこちなかった。そのまま耳まで赤くして固まる。
子爵は大声で笑った。
そして膝立ちでルージュサンに近づき、抱きしめた。
「取り繕ってないお前を初めて見た。仕事以外はそれでいい。そのままでいいんだ。お前はお前のまま、のびのび過ごせ」
子爵にバンバンと背中を叩かれ、ルージュサンがむせた。
慌てて腕を外した子爵に、今度はルージュサンが声をたてて笑い、つられて子爵も又、笑った。

馬車が玄関前に着き、子爵に続いてルージュサンは降りた。
扉の前ずらりと並んだ、使用人達が壮観だ。
好奇、疑念、拒絶、値踏み。
礼儀正しい微笑みの隙間から、様々な気配が漂って来る。
ー今までとは全てが違う。それでも今日からここが私の船。私が選んだ私の居場所。だから私は私のままでいい。私のやり方で進んでいくー
ルージュサンは鼻から背中に、大きく息を吸い込んだ。
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手袋は、見習い当時の馭者の憧れでした。
一人前になってからも、手袋は彼にとって馭者のシンボル。
馬番から馭者に意識を切り替える、アイテムでもあります。
ベテランになった今でも、手袋だけは自分で縫っています。

自作の手袋







ジャストサイズに作れます。
既製品では合いにくい方に、おすすめです。
私は手が大きいし、ニット地の端切れを有効活用出来たので、ラッキーでした。

材料
ニット地 約60cm×60cm (基本部分)
ニット地 約60cm×20cm (指の間部分)
糸 基本部分と同色

道具
裁縫道具一式
ミシン一式
型をとる紙
鉛筆


1ー4本指を揃え、親指を手のひらの方に畳んで、型をとる。
2ー親指に紙を当て、付け根の膨らみに沿って、上下山型のように、親指の型をとる。
3ー1を人差し指側のラインが中心の線対称にし、2との縫い合わせ部分をくりぬく。
4ー3の中指の太さの8割の太さで、人差し指+中指、中指+薬指、薬指+小指、の長さ+2cmの長さで、夫々の指の間の布を裁つ。
5ー2の周囲に5㎜の縫い代を付ける。
6ー3の手首部分に3cm、他の周囲に1cmの縫い代、親指部分に5㎜の縫い代を付ける。
7ー4、5、6、の型紙を表と裏で使い、左右対称で布を切る。
8ー親指部分の上半分を縫い合わせ、指の形にし、付け根部分を本体に縫い合わせる。
9ー人差し指と中指の間を4の布で、なるべく少ない縫い代で縫い合わせる。中指と薬指の間、薬指と小指の間も同様に縫い合わせる。その際指先は丸く縫う。
10ー指先に余った縫い代の、角の部分を切り落とす。
10ー手首部分の縫い代を多目に取り、小指の付け根に向かって自然なラインになるよう、縦のラインを縫い合わせ、余った縫い代を切り落とす。
11ー手袋を裏返し、手首部分を1cm折り返し、更に2cm折り返して縫い、端処理とする。

途中で試着をし、必要があれば微調整すると良いと思います。




Rの物語ー生い立ちー

2019-12-06 07:00:00 | 大人の童話
本文その夜、船長と子爵は居酒屋にいた。
テーブルに並んだ、野菜の甘酢漬けと、羊肉の煮込みが放っている、癖のある匂いが、居酒屋特有の空気に溶け込んでいく。
「まずはあの娘、ルージュサンのことですが」
船長が微発泡する酒を置いて、本題に入った。
「赤ん坊の時、積み荷に紛れ込まされていたのです。血の付いた麻袋に入れられていたので、知人に調べてくれるよう頼み、そのまま出港したのですが……カナル事件をご存知ですか?」
「え?おおよそは」
「その身代わりにと、追われていたようです。連れていた母親は、行方知れずです」
「それはまた…」
子爵は嘆息した。
「ですがそれであれば、4、5年で解決したのでは?」
船長が苦笑した。
「その時にはもう、私達が手放せなくなっていました」
「皆さんに、可愛がられていた」
「はい。こぞって目に入れたがる程に。ですが、女は船乗りになれない。それが私達の祖国の掟です。あの娘もあと2年で船からおりなければなりません」
「有能な補佐を失って、不自由はないのですか?」
「幸い、服船長の息子達が、順調に育っております。今暫くの辛抱です」
「全て分かった上での即断だったのですね。大人びてます」
「あの娘が貴方に見せているのは、表向きの顔なのです。まだまだ子供で、普段は無邪気に跳ね回っています。あの娘にとって、船員全てが父であり、兄なのです。普通の家庭も職場も知りません。それだけが心配なのです」
真っ直ぐな船長の視線に、子爵は目を伏せた。
「私は跡取りが欲しかった。そしてあの娘か気に入った。ただそれだけでした。申し訳ありません」
子爵は両手で船長の右手を包んだ。
「私はあの娘の父として、しっかりと守り、育てます。ですから改めてお願い致します。ルージュサンを私の娘に、養女に下さい」
船長が左手を添えた。
「よろしくお願い致します。子爵」
居酒屋の女将が、油で煮た魚の皿を持って来た。

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居酒屋の女将は異国の出身で、船乗りだった恋人の無事を祈って腕輪を編んで、かけていました。
恋人が夫となり、船を降りてからは、単なる趣味で作っています。
客達に、その都度答える願掛けの内容も、お互い承知の楽しい嘘になりました。

女将がかけていた腕輪




ミサンガ(1本分)
材料
刺繍糸 80cm 6本

『ハンドメイドのお守り!改定版*今すぐ作りたい大人ミサンガ』
の52番を参考にさせて頂きました。
結び紐を変えながら右輪結びを繰り返し、始めと終わりを三つ編みにするだけなので、初心者の私も、気軽に取り組めました。
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