フィオーレが突然立ち上がった。
フィオーレの長い毛の間に、花を挿して遊んでいたトパーズとオパールがのけぞる。
フィオーレはかまわずドアまで走り、振り向いて吠えた。
「どうしたの?」
いぶかりながら、ドラがドアを開ける。
フィオーレは門に向かって駆け出した。
そして、人の背丈よりずっと高い門を、軽々と飛び越える。
「フィオーレ!?」
庭にいたナザルとユリアが後を追う。
「「きっとそうよ」」
トパーズとオパールも、同時に叫んで飛び出した。
「うわっ!」
「なんだっ?」
通りを歩く人々が驚いて、走る金の波を見る。
少し遅れて偉丈夫な男、大分遅れてうら若き女、そのずっと後に、初老の女と幼い双子だ。
「えっ?フィオーレ!?一体なんだ!?」
店の前でロイが叫ぶ。
「もしかしてっ?」
ロイとロッドも走り出した。
「えっ!なんなの?!」
「多分、そうだっ!」
人が次々と加わって、大通りに犬が先頭の走る行列が出来る。
やがて向かって来た一台の馬車が止まって、走り出た女に金の塊が飛び付いた。
女が犬の受け止めながら、後ろに倒れる。
「フィオーレ!心配させましたね」
そう言ってわさわさとフィオーレを撫でる。
ルージュサンの顔はフィオーレの涎でべとべとだ。
フィオーレは次に、馬車から下りてきた男に飛び付いた。
ふさふさの尻尾は、千切れんばかりに振られている。
そこにやっと、人間達が追い付いた。
「ルージュサン!セラン!」
「お帰りっ!」
「生きてたのねっ!!」
「なんだその頭は?」
行列が賑やかな輪に変わる。
キャロはこっそりフィオーレに飛び移り、首毛の隙間から、その様子を面白そうに見物していた。
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