入口から老婦人を押し返すように、オグは店から出た。
「何しに来たんだ」
圧し殺した声で、痩せた老婦人に詰め寄る。
「あたしは、やっぱり」
「ムンも旦那も止めただろう?談なの目を盗んで来たのか」
「一言、謝りたくて」
「必要ないって言われただろ。あんたは全部知ってたから『神の子』が生まれないように、息子の結婚を遅らせた。それはあんたの勝手だよ。だけど今更謝ってなんになる?赦してもらえばほっとするか?いっそ罵られれば気が楽か?あんたが息子の結婚に口を出さなかったら、行かずに済んだかもしれない。そんな思いであいつらを煩わせるのか。もし罵れば、自責の念まで残るのとになる。あいつらは『神の子』でもないのに、山に行くんだ。四歳の娘を二人残してな。自分の疚しさくらい自分で背負え!」
「そんな・・・・酷い」
老婦人が灰色の瞳から涙が溢れた。
「あたしはただ」
滴が頬の皺を伝っていく。
「泣いても同じだ。ここに来たのを旦那に知られなきゃもっといいって思ってるんだろ。虫のいい」
老婦人の涙が止まった。