斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(55)【墜落と不時着水】

2023年12月06日 | 言葉
 米軍輸送機「CV22オスプレイ」が11月29日、鹿児島県の久島沖に墜落した。木原防衛相は翌30日、在日米軍のリッキー・ラップ司令官に直接「安全が確認されるまでオスプレイの運航を停止してほしい」と申し入れたが、その後も米海兵隊所属の「MV22オスプレイ」や米海軍所属の「CMV22オスプレイ」が沖縄県普天間飛行場で離着陸を繰り返した(12月2日付け読売新聞朝刊13S版)。オスプレイ事故にナーバスな日本側と、アメリカ本土からは遠い日本での事故のせいもあり無頓着な(?)米側。両国の対応が興味深かった。

 不時着水?
 目を引いたコトバの一つに「不時着水」があった。
「墜落したのではなく不時着だった。機体を立て直そうとパイロットたちは最後まで操作に懸命だったのだから、墜落ではない」
 コトバの元々の出所は知らないが、事故直後のメディアの中には、こう説明するテレビニュースもあった。無茶苦茶な説明である。たとえオスプレイでなくとも、墜落直前のパイロットなら例外なく「最後まで操作に懸命」になるはずだ。「不時着水」は、乗務員の無事生還が分かった時のみ使われるべきコトバだろう。

 ソンタクは姑息
 このような”コトバ遊び”の背景に、根強いオスプレイ飛行反対運動への牽制(けんせい)がある。墜落事故が飛行反対運動に火をつける結果にならないようにという、保守派メディアの配慮(忖度)である。肝心の在日米軍側は、テレビニュースに「不時着水」のコトバが出るとすぐ「オスプレイ事故は墜落である」と声明を出した。米軍側の方がよほど正々堂々としている