河野防衛相の苦言
「もう少し分かりやすく日本語で言えばいいと思う。年配の方をはじめ、よく分からないという声は聞く」
河野太郎防衛大臣が自身のツイッターや記者会見で、こう苦言を呈したという(24日TBSNEWSデジタル版)。「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」「パンデミック」--。政府の専門家会議や厚労省あたりが”流出源”のようだが、新聞やテレビなどの各メディアは言い換えることなく、これらのカタカナ言葉をそのまま垂れ流している。筆者も以前から気になっていた。
日頃のタカ派的な言動、というか直言はともかくとして、今回はよくぞ言ってくれたと思う。むしろメディアの側から、このような指摘があって然るべきだった。媒体には、こうした言葉の1つ1つを検証したうえで適切な言い換え語を選び、使う義務がある。防衛相という畑違いの政治家に先を越された形で、こんなふうに指摘されているようでは、行政や政治家、メディア側の無自覚と怠慢を云々されても仕方がない。
断っておくが、問題にしているカタカナ言葉とは、今回のコロナ禍のように行政が発するお堅い内容に伴う言葉、難解な外来語という意味である。拙文に出て来る「コトバ」のように、軽い文章でリラックス効果を狙った、分かりやすい(自分で言ってはミもフタもないが)言葉を指すものではない。
年配の方にこそ知ってほしいニュース
クラスター(cluster)は「ブドウやサクランボなどの房」「木々・星・人などの群れ」(名詞)のこと。動詞には「群れる」「群がる」の意味がある。つまり「クラスター感染」と言えば「集団感染」のこと。最初から「集団感染」言い換えていても問題があったとは思えない。オーバーシュート(over shoot)は「的を射越す、通り越す」の意の動詞で、ここでは「感染爆発」を意味する。株や外貨売買で目標値を超えて急騰するような場合、相場用語として使われることが多いようだ。ロックダウン(lock down)は「堰(せき)を下ろす、堰を設ける」の動詞で、今回は「都市封鎖」を意味する。反対語がロックアップ。似た言葉に労働争議用語のロックアウトがある。パンデミック(pandemic)は「病気や感染症の世界的流行」を指す名詞(以上すべて三省堂『最新コンサイス英和辞典』から)。すでにお気づきかと思うが、どれも新語というわけではなく、昔から使われてきた言葉である。
言われているように、今回の新型コロナウィルス禍では高齢者への影響が憂慮されている。ならば国や自治体が発する情報は、まずもって高齢者へ届かなければ意味がない。この点、河野防衛相が指摘したように「年配の方がよく分からない」言葉が乱発されるようでは、行政やメディアはノーテンキというか、配慮が足りないと言われても仕方がない。
その後も鈍い安倍首相の対応
28日の国会では相変わらず安倍首相が「ロックダウン」の語を注釈無しで使っていた。せっかく自分の内閣の一員が良い提案をしているというのに残念なことだ。以前からカタカナ言葉を乱発する癖(?)のある小池・東京都知事も、最近は「オーバーシュート、すなわち感染爆発」のように注釈併記的に使うようになった。一方、メディアもNHKや読売新聞などの大所が、併記的な使い方を採用している。少しでもお年寄りたちの耳に情報が届きやすくなったのだとすれば、結構なことだ。
「もう少し分かりやすく日本語で言えばいいと思う。年配の方をはじめ、よく分からないという声は聞く」
河野太郎防衛大臣が自身のツイッターや記者会見で、こう苦言を呈したという(24日TBSNEWSデジタル版)。「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」「パンデミック」--。政府の専門家会議や厚労省あたりが”流出源”のようだが、新聞やテレビなどの各メディアは言い換えることなく、これらのカタカナ言葉をそのまま垂れ流している。筆者も以前から気になっていた。
日頃のタカ派的な言動、というか直言はともかくとして、今回はよくぞ言ってくれたと思う。むしろメディアの側から、このような指摘があって然るべきだった。媒体には、こうした言葉の1つ1つを検証したうえで適切な言い換え語を選び、使う義務がある。防衛相という畑違いの政治家に先を越された形で、こんなふうに指摘されているようでは、行政や政治家、メディア側の無自覚と怠慢を云々されても仕方がない。
断っておくが、問題にしているカタカナ言葉とは、今回のコロナ禍のように行政が発するお堅い内容に伴う言葉、難解な外来語という意味である。拙文に出て来る「コトバ」のように、軽い文章でリラックス効果を狙った、分かりやすい(自分で言ってはミもフタもないが)言葉を指すものではない。
年配の方にこそ知ってほしいニュース
クラスター(cluster)は「ブドウやサクランボなどの房」「木々・星・人などの群れ」(名詞)のこと。動詞には「群れる」「群がる」の意味がある。つまり「クラスター感染」と言えば「集団感染」のこと。最初から「集団感染」言い換えていても問題があったとは思えない。オーバーシュート(over shoot)は「的を射越す、通り越す」の意の動詞で、ここでは「感染爆発」を意味する。株や外貨売買で目標値を超えて急騰するような場合、相場用語として使われることが多いようだ。ロックダウン(lock down)は「堰(せき)を下ろす、堰を設ける」の動詞で、今回は「都市封鎖」を意味する。反対語がロックアップ。似た言葉に労働争議用語のロックアウトがある。パンデミック(pandemic)は「病気や感染症の世界的流行」を指す名詞(以上すべて三省堂『最新コンサイス英和辞典』から)。すでにお気づきかと思うが、どれも新語というわけではなく、昔から使われてきた言葉である。
言われているように、今回の新型コロナウィルス禍では高齢者への影響が憂慮されている。ならば国や自治体が発する情報は、まずもって高齢者へ届かなければ意味がない。この点、河野防衛相が指摘したように「年配の方がよく分からない」言葉が乱発されるようでは、行政やメディアはノーテンキというか、配慮が足りないと言われても仕方がない。
その後も鈍い安倍首相の対応
28日の国会では相変わらず安倍首相が「ロックダウン」の語を注釈無しで使っていた。せっかく自分の内閣の一員が良い提案をしているというのに残念なことだ。以前からカタカナ言葉を乱発する癖(?)のある小池・東京都知事も、最近は「オーバーシュート、すなわち感染爆発」のように注釈併記的に使うようになった。一方、メディアもNHKや読売新聞などの大所が、併記的な使い方を採用している。少しでもお年寄りたちの耳に情報が届きやすくなったのだとすれば、結構なことだ。